vs 天使の軍勢
ユキナとミーリは跳ぶ。襲い掛かってくる天使達を打ち倒しながら、上へ上へと駆け上っていく。そうして辿り着いた最上部で、二人は下から来る天使達に一撃を構えた。
「“
紫の閃光が、天使の軍勢を一掃する。ユキナの繰り出した踵落としもまた一体の天使に決まり、それを喰らった天使の巻き添えになって多くの天使達が落ちていった。
闘技場よりずっと離れた場所をスカーレットと
天使の頭を次々に踏みつけ、宙を駆ける。そのうち一体の羽を掴むと、天使達が群がっているところへと投げ飛ばした。小柄ながら、ユキナの腕力は怪力である。
対するミーリは戻ってきた槍を掴み取り、次から次に天使達を串刺しにしていく。大小さまざまな天使がいるが、そこは容赦なく貫いていった。彼らが人間の味を覚えたら、それこそ負の連鎖の始まりである。
目に入った天使から、槍を双剣にしてまで次々に斬り裂き貫いていく。大振りで斬りかかってきた大天使の懐に飛び込むとその剣を折り、その胴体を貫いてフィールドに叩きつけながら着地した。
その白い返り血を、全身に浴びる。ミーリはすぐさま飛び立ち、天使の群れに突っ込んでいった。
地上の闘技場より外では、ラグナロクの生徒達がその様を見て奮闘する。自分達の学園最強、ミーリ・ウートガルドが天使の群れに立ち向かっているぞと、負けてられないと、自身を奮い立たせた。
だがそれは、他の学園の生徒達も同じ。自分達の代表が戦っているのを見て、全員立ち向かっていった。
剣が舞い、槍が躍り、弓矢や銃弾が飛び交う。街全体が、もはや一つの戦場と化す。そんな中で映えるのは、やはり多くの敵を倒す者達だ。
「“
「“
「さすが、エデンのナンバーⅡね! 白夜!」
「凛々……あとで言いたいことがあるんだ」
「へ、それって……」
「き、聞いてくれる、かな……」
あれだろうか、まさかあれだろうか。こみ上げる期待が、凛々の体を熱く火照らせる。その火照りと緊張が、向かってきた天使を蹴り飛ばさせた。
「う、うん……聞いて、あげる……」
白夜は小さく吐息する。そして向かってきた天使を二体まとめて斬り刻むと、よしと自身に勢いをつけて駆けて行った。
闘技場の外壁をよじ登り、その上に立ったヘラクレスは拳一つで天使達を殴り倒していた。白い天使の血を浴びて、全身真っ白に染まる。
だがその背後から猛スピードで迫ってくる天使に、まだ気づいていない。だがそれに気付いた
その直後、ヘラクレスが気付く。
「すまない、子猫」
「いいんですよぉ! 先輩は目の前の敵だけ、ぶっ飛ばしちゃってください! 後ろは、私がやります!」
「任せた」
「はい!」
北の先輩後輩の連携は素晴らしく、目に止めた相手は確実に倒していく。二人の通ったあとは、一瞬であるが道となって、すぐには誰も通らなかった。
イア・キルミは睨み合っていた。相手は、自分よりずっと背の高い大天使。そいつはイアのことを見下ろして、仮面の下で小さいなと笑みを浮かべる。だがそれに対して、イアもまた笑みを浮かべていた。
炎を宿す剣を持って、大きく振りかぶる。だがそれよりも遅く振られたイアの剣は、その炎の剣ごと天使の体を縦に両断した。
「私の剣は
「さすがはイア先輩……!」
「私達の姫ですわ」
「さぁ、私達も続きますわよ!」
ゲイザーの女子生徒達をその姿で鼓舞し、奮い立たせる。その姿は美しく、全女性が憧れたと言っても、過言ではなかった。
毒の短刀を振りかざし、一撃で天使達を屠っていく。だがその最中で、陽日は一人の生徒を捕まえ、路地裏に連れ込んでその首筋に短刀を突きつけた。アンデルスの、フロウラだ。
「この天使の軍勢、どうやったら止められるの。どうしたらいいの」
「し、知りません……私は、アンデルスは何も知らないんです……すべてクリス学園長の独断で……」
「自分達の学園でしょう? 何も知らないなんてあるの」
「やめろ、金陽日」
止めたのは、
「脅しに脅したが、こいつらマジで知らねぇみてぇだ。クリスの野郎は死んだみてぇだし、マジであいつら全滅させるしかないかもしれねぇ」
「……わかった。七枝先輩、アンデルスの生徒達をまとめてください。統率力のあるあなたなら、できるはず」
「てめぇはどうするつもりだよ」
「私は怪我人を手当てしてくる。まだ助かる命が、あるかもしれない」
オルアは霊力を溜めていた。この街に一度入った天使達を、閉じ込めてしまおうという考えだ。
だがそれには、
「オルア! まだか!」
「もう少し……もう少――?!」
「! オルア!」
オルアがさらわれる。突然のことでもがいたオルアだったが、それが天使でないとわかると旗を落とさないようにすることに意識がいった。
「ティア! ちょ、下ろしてくれないかな!」
「ブー。キーキー」
こういうとき、会話ができないのが難点である。言語機能が未発達のティアがなんと言いたいのか、まるでわからなかった。
だがその意味を、オルアはすぐ知ることになる。ティアが連れて行ったのは闘技場から少し離れたホテルの屋上で、二人の女性が立っていた。一人は少女で、一人は布を被った背の高い女性だ。
少し高いところから落とされ、オルアは片膝をついて着地する。
「君達は……?」
「
神を討つ軍。ミーリが作った、ユキナの軍勢に立ち向かうための小さな軍。その名前を知っていて、しかも目の前の少女の霊力は間違いなく。となれば、事情の呑み込みは早かった。
「そっか。ミーリくんはもう二人も仲間を集めたのか」
「二人じゃないし、三人だし。ね、ティア」
「うぅ! ティ、ミーミー、グゥ!」
降り立ったティアを、少女は背伸びをして撫でる。見た目、ティアの方が年上に見えるのだが、そこは関係なさそうだった。実際、神の年齢と見た目は一致しない。
「それで? この状況を、神を討つ軍はどうするんだい?」
「それを今から聞きに行くのよ。私達のリーダーに!」
そのリーダーはついに、二〇〇体目の天使を倒していた。師匠と比べるとまだまだだが、全体的に見ればかなりのものである。
だがそれでも、天使の数は一向に減る気配がない。むしろ増えている気すらする。それでも今自分達の足元には大量の死骸が散乱していて、自分達は血塗れであることは変わらなかった。
「まったく……多すぎ。まだ増えてるし」
ユキナが着地する。その口についた血を舐め取って、ミーリと同じ空を見上げた。
「まったく、多すぎ。まだ増えてるし」
「それ今俺が言った」
「そう。以心伝心ってものね」
「それはちょっと違う気もする」
「そう? ……でもどうするの、ミーリ」
「倒していくしかないでしょ。途方もない作業だけど、それが一番効率がいい。まぁ師匠達もいるし」
「そうね。まぁ、やるしかないか」
今は閉じ込められている大天使。その先に、槍を向ける。それは一つの勝利宣言。絶対にこの場を生きて勝つと、自身にすら誓う行動だった。
「行くよ、ロン」
『えぇ。私はあなたの槍、必ずあなたを勝たせてみせる!』
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