第42話 一件落着みたいです

「…うぅ、いったい何があったんだ?」

「お、やっと目が覚めたか」


どうやらヒロトは目が覚めたようだ。…恐らくこれで元に戻ったはずだが、とりあえずさっき起こった事を覚えているか聞いてみるか


「なぁ、さっきあった出来事を覚えてるか?」


俺がそう聞くと、ヒロトは首を振った…なんだ?やっぱり覚えていないのか?


「すまん、ちょっと記憶が曖昧なんだ…。なにか大変なことがったのは分かるんだが…」

「そうか…覚えてないなら教えてやるか、後でまた同じことが起こるのは勘弁だからな…。ヒロト、落ち着いてよく聞け、お前は悪魔に憑りつかれてたんだ。」


そして俺はヒロトにさっき起きたことをすべて話した。


「…という感じだったんだ。」

「マジかよ…。俺のせいで迷惑をかけたな。」


そう言ってヒロトは俺に向かって頭を下げてきた。…なんか人に頭を下げてもらうのって罪悪感があるな…。


「なんか罪悪感があるから、早く頭を上げてくれ。」

「え?…あぁ、わかった。」


俺がそう言うと、ようやくヒロトは頭を下げるのをやめた。ふぅ、やっぱり頭を下げられるのは慣れないな。…とにかく、これでアイラたちの命が狙われることはなくなったのだろうか?


「なぁ、いきなり自分の記憶が曖昧なことってよくあるのか?」

「前まではよくあったんだが、最近はほとんどなくなったな。…そういえば今日は久々に症状がでたな。」


うーん、どうすれば完全に悪魔を払ったって確信できるようになるんだろうか…。とりあえず鑑定を使って様子を見てみるか。

『鑑定』

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ヒロト  人間


lv24

HP 1100/1100

MP 980/980


スキル

召喚 LV2

鑑定 LV3


ユニークスキル

異世界翻訳

悪魔憑依


称号

ロリっ娘大好き

悪魔に憑りつかれた男


加護

邪神の加護


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…この『悪魔憑依』っていうユニークスキルのせいでヒロトが悪魔に憑りつかれているのか。…ユニークスキルじゃ、俺の強奪の範囲外だし、一度払っても他の悪魔が寄ってくるな…。


「とりあえず、いったん悪魔は払っておいたが、時間が経てば再び悪魔が憑依してくるはずだ。だから、教会か商店で聖水を買うか、光属性の魔法を覚えておくことをお勧めするぞ。」

「…なるほどな、悪魔には聖水と光属性魔法ってことか。分かった、とりあえず教会で聖水を買ってくる。」


ヒロトは頷きながらそう言った。そして、深刻そうな顔をして続けて言った。


「…恐らく、ツバサは悪魔に嫌われている。今回俺に憑りついた悪魔がそうだったように、俺の近くにいるとお前達がまた襲われる可能性がある。だから、俺はこの街を出る。俺に憑りついた悪魔は異世界からの転移者しか狙わないようだからな。」

「おいおい、ちょっと待ってくれ。俺はこの街に長居する気はないぜ?俺たちはもともと居た街に帰る途中でこの秋葉原によっただけだ。それに、俺は明日この街を出る予定だったしな。」


俺がそう言うと、ヒロトは少し寂しそうな笑いを浮かべた。そして俺は、これ以上ヒロトの近くにいると、分かれが惜しくなるかもしれないので、早々に立ち去ることにした。…もちろん、別れの挨拶は既に済ませた。


「あーあ、せっかく話が合う転移者に会えたと思ったのになぁ…。まぁ、またどこかで会える気がするから、次会ったときはラノベの話で盛り上がってやるか。」


そう独り言を言いながら、俺はアイラたちが待っている冒険者ギルドに戻っていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


俺が冒険者ギルドに到着すると、すでにアイラたちはギルドの入り口で俺の事を待っていた。


「よぉ、待たせたな!!」

「…ツバサ、遅かった。それと、この女…なに?」

「ホントよ!襲撃者を倒しに行ったと思ったらこんな可愛い女の子を連れてきちゃってさ!」


どうやら意外と怒っているようだ。…まぁ、当たり前か。帰りが遅いうえに、いきなり自分たちの知らない女の子が来るんだもんな…。


「それについては悪いと思っている。だが、この娘はアイラたちと同じく悲しい人生を歩んできたんだ。しかも、俺と同じ世界から来たんだぞ。ここで放っておくわけにはいかない。」


俺がそう言うと、アイラたちはまるで過去の自分たちを見るような目でアリスを見た。


「…そう、なら仕方ない」

「可哀想に…だけど、私たちがついてるから大丈夫よ!」


うんうん、やっぱり仲間は大事だな!と、俺がそんなことを考えていると、アリスが意外なことを言い出した。


「ありがとう…でも、私はある程度レベルが上がったら一人で旅をする予定なのよ…。身勝手な考えだと思うけど、私はこの世界を一人でのんびりとした旅がしたいのよ。我儘言ってごめんなさいね」

「…そういう思考の仕方は、嫌いじゃない。自分の生き方は、自分で決めるもの。」

「そうよ、自分が旅をしたくなったら、好きに旅をすればいいのよ!」


どうやら、俺の嫁たちは、良い方向へと成長してくれているようだった。だが、とりあえず言わなきゃいけないことがあるな。


「えー、いきなりだが、明日から新しい街を目指して出発するつもりだ。だから今日はゆっくり休んで、明日に備えよう!!」

「…ん」

「了解」

「分かったわ!」


こうして俺の長いような、短いような一日は終わりを告げようとしていた。

…だが、この時の俺たちは、この後に起こる惨劇をまだ知る由もなかった。

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