第37話 慰めみたいです

俺がワープでアイラたちの元へ戻ると、丁度アイラがイズナの拘束を解いて助け出しているところだった。


「何とか勝ったぞ。なかなか手ごわい相手だったが、ギリギリのところで逆転できた。」


そう言うと、アイラは泣きそうな顔をして「お帰り」と言った。そんなアイラを見た俺は、たまらず抱きしめた。


「アイラたちの身に危険が及ぶようなことがあったら、俺が絶対に守ってやる。だから安心してくれ…。」


俺はカルチが戦いの中で言っていた事をよく思い出し、それを二度と忘れないようにすることにした。

大切な人たちを失うのなら、大切な人を作らなければいい…という考えをするのではなく、自分が大切な人を守れる力を手に入れることが大切だ。しかし、時には大切な人を守ることが出来なくなることがあるかもしれない。だから俺は、もっと強くなる。強くなってそんな状況が起こらないようにする…たとえ自分の身を犠牲にしようとも…


「…ツバサ?」

「……ん?あぁ、ごめんな。ちょっと考え事をしてた。」


どうやら考え事に集中しすぎてぼーっとしてたみたいだ。


「…考え事はいいけど、ツバサは少し自分の命を大切にした方がいい…。最近のツバサは、自分の命を軽視してる。」

「!?」


…まさか、アイラにそこまで見破られているなんてな…。俺もまだまだだな。


「…ツバサが死んだら、私たちはすごく悲しい…。それに居場所もなくなる。ツバサは、私たちが悲しくて泣いてても平気なの??」


…俺は自分の視点から物事を決めていて、アイラたちの事をちゃんと考えていなかったんだな。俺がアイラたちを失ったら悲しいと思うように、アイラたちも俺が死んだら悲しいんだもんな…。


「まったく…俺は何てダメな奴だ。ゴメンなアイラ、ちょっとだけこのままでいさせてくれ。」


そういうと、アイラを強く抱きしめた。すると、アイラは嬉しそうに背中に腕を回してきた。


「もうちょっとたったら、イズナを起こして冒険者ギルドに戻ろう。そして宿に帰って反省会だ。」


俺がそう言うと、アイラが首を傾げた。


「反省会?」

「そう、反省会だ。今回の件で俺の考えの甘さが分かった。だから、宿に帰ったら俺のダメな点を言ってくれ。改善できる点はすべて直すからさ…」

「…ん、いっぱい用意しておく」


アイラはそう笑顔で言ってるけど、俺のナニが短いとか言われたらどうしよう…。そんなこと言われたら、俺はもう生きていけない…

などと暗いことを考えているうちに、いつの間にかイズナが起きてきたようだ。


「…んん?あれ?なんで私はこんなところで寝てるの?ツバサ、村長さんは見つかったの?」

「あぁ、見つかったが、村長は魔族だったんだ。」

「え…ええええええええ!?魔族って、あのめちゃくちゃ強いって噂の?…怒らせなくてよかったぁ」


イズナはすごくホッとしてるな。だが、本当のことを教えてやらねば…


「ホッとしてるようだけど、イズナはもう少しで邪神復活の生贄になるところだったんだぞ。」

「…助けてくれてありがとう!!この恩は一生忘れないわ。」


俺とイズナがこんなやり取りをしていると、アイラが何やらニコニコしながらこちらを見ていた。


「どうした?やけに嬉しそうだな?」

「…イズナが起きてから、一気に騒がしくなった。でも、これが私たちの日常。私はこの瞬間が大好き…」

「あぁ、俺もこの瞬間が一番楽しいぞ、夜も楽しいけどな。」

「本当に、ツバサは変態ね。そのうち外でヤりたいとか言い出すんじゃないかしら…」

「ん?外でなら既にアイラと一度ヤってるぞ?」

「…ん、あれはすごく恥ずかしかったけど、気持ちよかった。」


アイラがそういうと、イズナが何やらボソボソと呟いていた。


「もうすでにそういうプレイは体験済みなのね…私も外でしたかったのに」

「ん?なんか言ったか?」


俺がそう聞くと、イズナは顔を真っ赤にした。


「べ、別に何も言ってないわよ!!と、とりあえず、さっさと冒険者ギルドに戻るわよ!!」


まったく、こいつはなかなか素直になれない奴だな。まるで某超能力アニメのヒロインの○坂○琴みたいだな。


「じゃあ、さっさと冒険者ギルドに戻るとしますか…」

「…ん」

「早くいくわよ」

「わかった、それじゃ…レッツゴー!!」


こうして俺たちは冒険者ギルドに帰っていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


冒険者ギルドに着いた俺たちは、受付にさっき起こった出来事のありのままを話した。


「…ということがあったんだ。」

「かしこまりました。それではギルドマスターにこの案件を伝えておきますね。それと、今回の報酬ですが…ワイバーンが変異種だったため、その分の上乗せとして漆黒貨3枚ですね。」


なんと…日本円で約300億円ではないですか!?だが、俺はすでに日本の国家予算額以上の金を持っているので、金には困っていない…。なんか、いつか俺の金銭感覚が狂いそうで怖いな。

しかし、こんなことで悩んでいても仕方がない。とりあえず金を受け取って、何か金の使い道でも考えるか。

そうして俺は受付のお姉さんが震えながら渡してくれたお金を受け取った後、冒険者ギルドを出た。そしてギルドから宿に向かう帰り道で俺は悩んでいた。

うーん、常日頃から苦労を掛けているアイラたちに何かプレゼントをしたいなぁ…。でも、俺は地球では非リア充だったから何かを買えばいいのやら…。

そんなことを考えながら歩いていると、服屋の看板が目に入った。よし、服にしよう。


「なぁ、お前たちに服を買おうと思うのだが…どうだ?」

「…服買うの、初めて」

「私も服を買ってもらうのは初めてね、貴重な体験よね。」

「アイラたちは可愛いからな、この街で一番いいお店を探すか。…やはりヒロトに聞きに行くしかなさそうだな。」


そう思った俺は、アイラたちを連れてヒロトの家に向かった。

インターホンもどきを押すと、すぐにヒロトが出てきた。


「よぉ、また来たぜ。」

「どうした?またなにかお困りか?」

「正解だ。今回は服屋を探しているんだが、この街で一番品質がよさそうな服屋はどこだ?」

「えーと、この街で一番いい服屋っていうと…ツバサ達の泊まっている宿の裏にある服屋だな。あそこならメイド服から水着までなんでもありだ!ナース服なんてもんもあるぞ!!」

「ありがとな!そこに決定だ!!」

「あぁ、喜んでもらえたようでなによりだ。」


そして俺たちはヒロトに教えてもらった場所に向かった。


「ここか…いかにも高級っぽい店だな。」

「…ん、なんかすごくワクワクする。」

「こういう雰囲気の店は慣れてないから緊張するわね」

「とりあえず入るか…」

「…ん」

「ええ」


俺たちが店に入ると、さっそく店員が話しかけてきた。


「いらっしゃいませ。本日はどのような服をお探しですか?」


んー、とくに種類は決めてなかったから店員にお任せするか…


「この娘たちに合う服を見繕ってもらえないだろうか?」

「かしこまりました。そちらの椅子に掛けてお待ちください。」


そう言うと、店員はすごくきれいなお辞儀をして、慣れた手つきで服を選び始めた。



そして6分ほど経過すると、店員が再び戻ってきた。


「こちらのお嬢様は左手の方にある試着室へ、もう一人の方のお嬢様は右手の方の試着室になります。すでに、服はご用意させていただいておりますので、そちらをご試着ください。」


店員はそう言って再び元の位置へ戻っていった。…まるで長年働いてきた執事のような振る舞いだな。

俺がそんなことを考えていると、いつの間にかアイラたちの着替えは終わったようだ。


「二人とも、どんなふうになったんだ?」


俺がそう尋ねると、試着室のカーテンがほぼ同時に開いて新しい衣装に身を包んだアイラたちが出てきた。


アイラは凄く可愛らしい感じの洋服だ。青っぽいスカートがクールさを強調していて凄く似合っている。

イズナは凄く明るい感じの服で、スカートの裾から見えるシミ一つない綺麗な白い足が、印象的だ。


「二人とも、すっごく似合ってるぞ!!」

「…ん、ありがと」

「と、当然じゃない!」

「この服は買うのか?それとも買わないのか?」


そう聞いてみると、二人は即答した。


「「買う(わ)」」

「お、おう。じゃあちょっと会計を済ませてくるわ」


そう言って俺は服屋の会計を済ませた。

因みにお値段の方は、大銅貨9枚と銅貨6枚…日本円で約96,000円だった。

意外と安いんだな。さすがヒロトおススメの店だ。


そして買い物に満足した俺たちは宿へ戻って、反省会を行うことにした。

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