第36話 戦闘みたいです

俺とカルチは、ワープでワイバーンを倒した場所移転してきた。


「うーん、僕には君の考えることがイマイチ理解できないよ」


別にあんたに理解してほしいわけじゃないのだが…。俺の方がこいつの考えが分からん。


「俺の考えがあんたに読めたら、大変なことになるだろうな」

「君はきっと変態チックな思考回路を持っていそうだからね。僕みたいな一般人には理解できないよ」


くっそ!こいつさりげなく痛いところを突いてきやがる!!しかも変態チックってなんだよ!!確かに変態だけどさ…それをはっきり言うことないじゃん!?


「君は表情が顔に出るから、考えてることがだいたい分かるよ。」

「マジかよ!?そんなに顔に出てるのか?」


そう言って顔を触ってみる。だが、触ったところで何もわからない…なんか俺がバカみたいじゃねえか!!


「プッ、君のそういう馬鹿なところは見てて面白いね。」

「おい、敵の事を笑っていると後悔するぞ!」

「いやぁ、ごめんごめん。…じゃあさっさと決着をつけようか。」


お、急に雰囲気が変わったな。じゃあ俺も本気で相手をしてやるか…。


「じゃあ俺も全力で行くぞ!!」


そう言って俺はカルチの足元の地面を土魔術で操り、穴をあける。だが、その攻撃はカルチの軽いステップによって躱される。


「なかなかいい攻撃だったけど、その程度の攻撃じゃ僕の足止めすらできないよ」

「チッ、やっぱりこの程度の魔術じゃダメか…なら、これでどうだ?」


次は片手剣を構え、高速で相手の懐に入り込んで薙ぎ払いをした。手ごたえがあったので、これは当たっただろうと思っていたが、そこにカルチは居なかった。


「こんな攻撃じゃ、四天王には勝てないよ…。攻撃はこうやってやるんだよ。」


そう言いながら突然俺の後ろに現れたカルチは、とんでもない速度で回し蹴りを放ってきた。


「グァ!!」


なんとか攻撃を防ぐことはできたのだが、勢いまでは殺せなかった。

俺はそのまま30メートルほど吹き飛ばされて、木を数本へし折ってからようやく止まった。


「くそっ、なんて奴だ。ただの蹴りがこんなに威力があるなんて…さすが魔族だ。」


俺がそんなことを言っていると、


「僕は魔族の中でも上から4番目…四天王の中では下から2番目の強さなんだよ?こんなんじゃ魔王様はおろか2番目にも勝てやしない。邪神様になんか相手にもされないだろうね。」


いつの間にかカルチが俺の後ろで腕を組んでいた。

マジか…こいつより強い化け物があと邪神を含めて4体もいるってか…。俺にもっと強くなれってことかよ…


「ツバサ君は、アイラちゃんやイズナちゃんが大事じゃないのかい?君が負けるっていうことは、彼女らが死ぬ可能性がかなり高くなるということだよ?まぁ、イズナちゃんは僕が生きている限りは生贄にすることは確定だけどね。」


な!?…こいつは俺から大切な人を奪うって言っているのか?


「…ははははっ、そんなことを俺が許すとでも思っているのか?あんまり調子に乗っているとブッコロスゾ?」

「そうそう、その意気だよ。君が強くなきゃ倒しがいがないじゃないか!!」


こいつはぶっ殺す!俺はあいつらを守るためなら世界でもなんでも破壊してやる。


「ようやく本気を出す気になったんだね。僕は君の力に興味があるんだよ、どうして君は人間なのにそんなに力があるのか知りたいんだ!だから、ツバサ君と、君と一緒に居たアイラちゃんには実験台になってもらおうと思ってる。…早く僕を倒さないと、彼女が危ないよ?」

「チッ、お前は絶対に倒してやる!!」


そう言って俺はカルチに向かって全力の拳を放った。しかし、カルチは軽々と俺の拳を受け止めてしまう。…なんでだ?


「君は拳を放つときに、僕をどうやって倒すかしか考えていないだろう?君はもう少し拳に力を込めることに集中した方がいいよ。そうしないと、僕は倒せないよ。」


恐らく俺の顔に疑問の表情が出たので、律儀に答えてくれたのだろう。

だが、敵に敵にアドバイスされるとは…だが、今のアドバイスに一応従ってみるか。一応だぞ!別にこいつに図星を突かれたわけじゃないからな!!

とりあえず魔力を6割ほど手に集めてカルチに正拳突きを放ってみる。すると、


「グハァ」


声を上げながらカルチが吹っ飛んで行った。

…何気にカルチのアドバイスはすげえな。敵じゃなかったらいい先生になっただろうに。


「君の魔力の量は人外だね。ツバサ君、君は本当に人間なのかい?」

「アンタは本当に失礼な奴だな!魔族に人間じゃないって言われるとか、ゴミにゴミって言われてるような感じなんだぞ!!」

「ハハハッ、君は本当に面白い人間だね。こんなに面白い人間を殺すのは惜しいな…。だけど、僕は邪神様を復活させないといけないからね。その為には手段を択ばないよ。」

「どうしてアンタはそこまでして邪神を復活させようとするんだ?魔王だけじゃダメなのか?」

「僕は邪神様に使えるために生まれてきた存在だからね。これ以外に生きる道はないよ。それに僕が邪神様の復活をやめようとしたって、他の魔族が邪神様の復活をさせようとするだろうね。」

「じゃあ、俺がその邪神を倒せばいいんだな?」


邪神を倒してイズナが襲われなくなるなら俺はそれでいい…たとえ俺の手足がなくなろうと、命がなくなろうと、俺は大切な人を守る。


「君にその覚悟があるのかい?命を捨てる覚悟が…」


確かに俺はかなりチキンだ。地球ではラノベばかり読んでいた童貞だった…だが、この世界に来てリリーやヴァルキリー、アイラ、そしてイズナに会って大切な人が出来たんだ。だから俺はこの世界の大切な人を守るために、自分の命を捨てるのは構わない。


「あぁ、そのくらいの覚悟はしている。」

「なら、君の覚悟で僕を殺してみるといい。それが出来なければ君の覚悟は口だけのモノだったってことだよ。」


なかなか酷いことを言ってくれるじゃねえか。そこまで言うんだったら、俺のすべての魔力をカルチにぶつけてやるぜ。


「久々に詠唱をするか。スキルを魔法で強化するなんて初めてだからぶっつけ本番で発動できるか心配だけど、手加減をしている暇はない。行くぞ!『我の体に流れし魔力よ、今こそ我の命令によってその力の全てを発現せん。そして我に従い、敵を滅ぼす力となれ。』 これが俺の新スキル!元々はただの身体強化だったが、俺の全魔力で強化するぜ!!名付けて『破壊神の一撃ディストラクションブロー』だ!!」


俺がスキルの名前を唱えると、右腕周辺に凄まじい量の魔力が流れ始める。


「これが君が本気の魔力かぁ。凄まじい魔力量だ、魔力量だけなら神獣を超えるかもしれない…いやぁ、これはいい実験材料になりそうだ。だけど、僕もここで倒されるわけにはいかないんだ。だから本気を出させてもらうよ。『魔力操作』『身体強化』発動!!」


カルチも負けじとスキルで身体能力を上昇させる。そして


「「行くぜ(行くぞ)!!」」


俺たちはお互いに全力で拳をぶつけ合った。


「「うぉおおおおおおお!!!!」」


なんてこった。俺とカルチの攻撃の威力が高すぎて空間が歪んでいる。…これは相当まずい。だが、ここで俺が少しでも威力を弱めると、俺が消し飛んでしまう…だったら、このまま俺がカルチの攻撃を吸収しちゃえばいいじゃないか!!

そうと決まれば行動は手っ取り早く行わなくては。

『吸収』


吸収を発動させると、ズゴゴゴゴゴと音を立ててながらカルチの攻撃を吸収し始めた。…この莫大な運動エネルギーは吸収しきれるか分からないな…。

自分の力が抜けていくのを感じたカルチがこちらを驚愕の表情で見ていた。


「…ま、まさか君は僕の攻撃を吸収しているというのか!?」


すまない、正解だがその質問には答えられないんだ…。

俺はそう心の中で答えつつ、吸収した攻撃を消化して自分のエネルギーに変換した俺は、そのエネルギーをさらに自分の攻撃に上乗せしてカルチに向けて放出した。


「この僕が人間との戦いに負けることになるとはね…。だけど、すごく楽しい時間だった。ありがとう…これはそのお礼だよ。」


俺の全力の攻撃を受けたカルチは胴体と頭を残して消滅した。

カルチが自分が死ぬ瞬間に俺にくれたモノは、スキル『全属性魔法 LV14』をくれた。なぜこんな大切なスキルをくれたのか調べたところ、どうやらこの魔法は光魔法が含まれていたため、魔族には使えなかったようだ。


「ありがとなカルチ…このスキルと、あんたの持ってたスキルは俺が墓まで持ってってやるから安心して眠ってろ。そして、そのスキルが墓に帰った時に、俺がどうやって邪神を倒したかよく聞いておけよ!!」


そう言って俺はカルチのスキルを強奪すると、カルチの死体を埋葬してアイラたちの元へと戻っていった。

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