第22話 狐みたいです
突然アイラが倒れた
「どうしたアイラ!?」
いったい何があったんだ?…もしかして魔族が居たのか!?
「ツバサ…、気をつけ…て」
俺はアイラに駆け寄った…よかった、気絶しているだけだ。…だが、アイラタソを傷つけた奴はゆるさん。男だったらぶっ飛ばしてやる!!そう思った俺は自分ができる限りの力で気配察知を発動させた。
…みつけた。
俺の後ろ100mほどの距離に気配があった。俺はアイラを森の茂みの中にあった窪みに隠してから、その気配のすぐ近くにワープした。
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「あ!あの魔族っぽい男を仕留めようとしたのに女の方に攻撃が当たっちゃった。…だけど、とりあえず魔族っぽい男の仲間を一人撃破したわ」
女はそう言ってさっき男を守って攻撃を受けた死んだはずの少女を探した…だが
「え!?仕留めたはずなのに消えた!?」
女は仕留めたはずの少女が消えていたことに驚いていたようだった。それもそのはず、その仕留めた少女というのがアイラで、しかもアイラは死んでいなかったのだ。おまけにそのアイラはすでにツバサによって移動させられているのだ。
「死体がひとりでに歩くなんてことがあるわけないし!…もしかしてあの女がさっき庇った男の仕業?」
女がそんな独り言を言っていると。後ろから声が聞こえた。
「そうだ。俺がアイラを安全な場所に隠したんだよ…」
「!?」
女が後ろを向くと、そこにはさっきまで少女と一緒にいた男がいた。
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俺が女のすぐそばにワープすると、女はなにやら独り言を言っていた。
「死体がひとりでに歩くなんてことがあるわけないし…もしかしてあの女がさっき庇った男の仕業!?」
そんな子供でも分かるような出来事が理解できていない可哀想な女に、俺は優しく説明をしてやった。
「そうだ。俺がアイラを安全な場所に隠したんだよ…」
「!?」
俺がそう言うと、女は『ビクッ』としてこちらを振り向いた。
「あ、あんたはさっきの…いったいいつの間にきたのよ!」
「いつの間にって言われても、普通に移動してきたぞ」
(ワープでな)と、俺の心の中で付け加えて俺は律儀に質問に答えてやった。
「それと、さっきお前が言っていたことのうち、間違いが3つある。まず一つ、アイラは死んじゃいない。そして二つ、俺たちは魔族じゃない。三つ目は……特にないな」
「特にないとかふざけてるの!?」
相手にツッコミ入れられちゃった、テヘッ☆
そんなことを言っている場合じゃなかった。ひとまず俺は女の目を見つめた。
「なっ、なによ!」
「お前、よく見ると可愛いな」
「こ、殺そうとしてきた奴にいきなり何言ってんのよ!バ、バカじゃないの!!」
「いや、べつにこっちは仲間が気絶しただけだし…」
「あ、あんたに可愛いなんて言われても嬉しくない!」
そんなことを言いつつも顔は真っ赤になっているな。…うーむ、ツンデレはこれまた貴重な属性ですな。しかも、この子の種族は見たところオオカミみたいだし…拙者のハーレム要員に加えたいでござるなぁ。
俺はそう思ったが、とりあえず今は敵を前にしているので、倒してから決めることにした。
『鑑定』
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イズナ 狐族(亜種)
LV20
HP 19800/19800
MP 20400/20400
スキル
火魔法 LV11
変化 LV5
剣術 LV9
呪い無効化
称号
狐の逸れ者
お頭の弱い子
称号
なし
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キター!オオカミじゃなくて狐だったよ!She is 狐っ娘!!しかもツンデレの!!!
ふぅ、いったん落ち着こう
「お前…イズナって名前なのか?」
「なっ、なんで名前を知ってるのよ!」
「いや、ステータス鑑定したら書いてあったからさ…」
「え?あんた…ステータスの鑑定使えるの!?もしかして異世界転移者?」
「ヤベッ、…まぁいっか。確かに俺は転移者だ、だがそれがどうかしたのか?」
「な、何でもないわよ。それよりも!あんたたちは私の縄張りで何してんのよ」
「え?イズナの縄張り?…ごめん、知らなかった。」
「はぁ、まったく。あんたたちが暴れたせいで私の家がめちゃくちゃよ…それにいきなり凄い音を立てて暴れまわるから魔族かと思って攻撃しちゃったじゃない!」
どうやら俺たちが暴れまわったせいでイズナに勘違いさせちゃったみたいだな。
「ほんとにすまない。俺にできることなら何でもする。」
「何でも?」
「あぁ、できる限りならな。」
「それなら…んーと、じゃあ私をあんたの仲間にしなさいよ。私の家は壊れちゃったし、どうせ街にはいつか行こうと思ってたから…」
「お安い御用だ。ちょっと俺の連れにも話してくるから待っててくれ。」
そう言って俺はアイラの元へ向かってアイラが起きるのを待ち、それからこうなってしまった経緯を話した。
すると
「…ん、私たちのせい…だから問題ない。だけど、ツバサは渡さない…」
「そうか、ありがとなアイラ」
「…ん」
「ということでイズナは仲間に入れて大丈夫だそうだ」
「そう、じゃあよろしくね。えーと」
「俺はツバサだ。そして、こっちの子がアイラ」
「アイラってハーフエルフ?なんか普通のエルフとは雰囲気が違うけど…」
「…ん、私はハーフエルフ。だから、普通とは違う」
「アイラも・・・・同種族の仲間たちに捨てられたのね…。」
「アイラもってことはイズナも同種族の仲間から捨てられたのか?」
「そう、私は狐なのに毛の色が銀だし、火魔法の威力もおかしかったの。それに普通の狐族は基本的には狐の姿で、人里に降りる時だけ人化するんだけど、私の場合は元々人型だったのよ」
「そうか、イズナも苦労してるんだな…」
「そ、そうよ!少しは労りなさい!!」
「あぁ、イズナは可愛いのに苦労してるんだな」
「か、可愛い!?……」
「…ツバサ?」
「ごめんなさいアイラさま!」
こうして俺の仲間が一人増えた。だんだんとハーレムに近づいてきているような気がする!
…そういえば魔族の事を完全に忘れていた。
「そうだ!魔族をまだ倒してない!!」
「…ん、早く倒さなきゃ」
「あー、それなら問題ないわよ。私が倒しておいたから。」
「「え?」」
思わず二人そろって素っ頓狂な声を上げてしまった。
「だから、私が倒したのよ!」
「イズナって意外と強いんだな」
「…ん、なかなかやる」
「でしょ~♪でも、私の愛刀が折れちゃったのよね…何かいい剣持ってない?」
「…また、あの武器屋に、行くしかない」
「あの武器屋かぁ…まぁいっか。今からこっそり街に戻って武器屋に行こう」
「いいの?ありがとね!」
どうやらイズナと多少は仲良くなれたようだ。
そう思った俺はこれからの生活を考えてウキウキしながら街に戻った。
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