新問題児の箱庭外伝
@moti
第1話
〜箱庭へ〜
おう、元気してるか?こっちは問題ない。無事に西郷焔との接触、関係構築に成功した。今後、少なくともことが起こるまではこっちにいる報告だ。じゃあな。
PS.折角だから何人かそっちに送る。つーことで、眷属を呼んどいてくれ。頼むぞ。
〜
皆うすうす感じていたのだ。
鵬魔王曰く、“動けばいらない事しかしない駄神”
蛟魔王曰く、“天界のヤンキー兄ちゃん”
そう評されてもまだ余りある圧倒的残念オーラを漂わせるあの神様が、むこうで問題を起こさないかという事を。
無論、できるはずがない。
だが、いくらなんでもこれはないだろう。
むこうが送ったくせに、面倒はこっちで見なくてはならんらしい。
だが、止められなかった我々にも責任が少なからず、いや少しぐらい…いや全くないのだがそれで放ったらかしなのも忍びない。
だからこそ、口を揃えてこう言うのだった。
「「「あのクソ駄神がっ‼︎」」」
*
犬が吠えている。
その合唱を聞きながら少年は木陰から月を見上げていた。
少年の容姿は身長180前後、ジャージ姿で無造作にまとめられた銀色の髪が似合う、野性味溢れる少年だ。
今日は
そんな想像をしていると、途端に小腹が空いてきた。
だが、今は鍛練の最中だ。休憩に何か摘むのはまだ早い。
そう思って鍛錬を再開する。
少年の得物は槍。
突き、払い、叩きつけ。その動作はたとえ素人が見ていようと、一目で熟練者の槍裁きと判る。そうして鍛錬を続けること10分。不意に落ち葉を踏みしめる足音が聞こえる。途端に槍を構え直し警戒する。この付近には視線避けの結界があり、これを通り抜けて来るのは少なくとも普通の人ではない。
少しの沈黙
「誰だ」と叫ぼうとした瞬間、向こうが口を開いた。
「おっと、すまん警戒させちまったか。お前に危害を加えるつもりじゃない。安心してくれ。俺は
そう答えたのはスーツ姿の長身の男性、
取り敢えず敵意や殺気の類はなかったが警戒は怠らず構えをといて答える。
「釈天さんですか、分かりました。それで、釈天さんはなんの用事なのでしょうか?」
「じゃあ単刀直入に言うぞ、お前異世界に来ないか?」
「は?」
「はぁ、じゃあもう一度言うぞ、異世界に来ませんか?と聞いたんだ。もちろん冗談や詐欺、誘拐の類じゃない。金も要らない。ぶっちゃけ今財政難でお金は貰えると助かるんだけどよ。なんでこっちも女と遊ぶには金がいるのかなぁ。」
こいつ相当ろくでなしだな、思いつつ考える。異世界という存在を頭ごなしには否定できない。なぜなら、自分が実際に不思議な力を使っているからだ。視線避けの他に幾つかだが魔術も使える上にうちの一族は代々不思議な力を持っているのだ。異世界は流石に驚いたが納得出来ないほどじゃない。だが、気になることがあった。
「幾つか質問をしたい。構わないだろうか?」
「いいぞ。」
「まず、1つ目、異世界っていうのはどんな所だ?」
敬語が外れていたが、女と遊ぶろくでなしならいっか、と思う。
「そうだなぁ、エルフとかの獣人みたいなのからグリフォンなどの幻獣、ましてや神々や英雄などもいてそいつらがドンチャン騒ぎしてるとこ、と言えばいいか?」
随分と楽しそうな異世界があったものである。
「2つ目、その異世界でお前は俺に何をさせたい?」
ついにお前って言っちまった。少し睨まれたがまぁいいだろう。
「俺の目的ってことか。今回に関してはなにもない。強いて言うなら少し人口が減ったからな。人口を増やして景気が少しでも良くなればいいってぐらいかな。あと、こっち来て少し暇だったからだな。これでいいか?」
少し見直した。
「じゃあ3つ目、これは確認だが、何故俺が選ばれたのかという問いの答えは、俺が不思議な力を持っているから。という答えで正解か?」
「まぁ、その通りだ、神様がいる世界だからな、普通の人間じゃ駄目なのさ。お前はまあ、及第点ってとこかな。」
少しカチンときたが神様と比べられたらなと思い機嫌を直す。
「最後に、異世界へは持っていけるものはあるのか?」
「基本的には自分が持ってるものだな、金は通貨が違うから意味ないぞ。お前だと、その槍だけでいいと思うぞ。」
「了解。その話乗った。いいよ、異世界行ってやる。」
「こっちが行かせてやるんだがな...まあいいや、そういや、お前の名前、聞いてなかったな、なんて言うんだ。」
「俺の名前は
*
取り敢えず交渉が成立した所で、
「そういやおっさん。これから行くとこには神様がいるとか言ってたけど、どんな神様がいるんだ?」
「 そりゃあもちろん全ての神様に決まっているだろ。」
「マジで⁉︎ じゃあキリストとブッダとゼウスとインドラがお茶会してたりするのか?」
「バッカお前キ◯ストとブ◯ダはキリ◯トとかブッ◯とかいう風に表現しろ。あと、基本的にはそいつらは仲悪いぞ。俺もいーかげん仲直りまでは無理でも和解ぐらいはしたいんだけどなぁー」
「ん? なんでそこでおっさんの話になるんだ?」
「……げ、気のせいだ気のせい分かったか」
どうやら突っ込まれたくないらしい
「つまりおっさんはキリス◯ととか◯ッダとかと会話出来る程度には偉い人物ってことか?もしかしておっさんも神様の一人だったりするのか?」
「ば、馬鹿言え。俺は本来ならキ◯ストとかブッ◯とかよりあんなやつらとは会話しねえっつーの。」
釈天からすれば会話をしないという事を伝えて回避しようと思ったらしいが、いかんせん自分をあんなやつらより下に置くのはプライドが許さないらしい-つまり、自分の首を自分で締めた。
「へぇ、オッサン宗教の創始者様たちより偉いのか、オッサンいったい何者なんだ?」
「そっ、それはだな、えーっと、……」
口ごもる釈天。
ここだ!と陽は直感して攻めようとした時、
「おーい、釈天さーん。」
「遅いぞおっさん。」
不意に新たな声がして、正体を問い詰めるチャンスを逃してしまった。
「す、すまん。待たせたな、だが交渉は成立したぞ。織、練花。これがお前らと一緒に異世界へ行く最後の1人だ。」
そう言って俺と織、練花と呼ばれた二人を向かい合わせた。
「じゃあお前ら、今の内に自己紹介しとけ、どうせ向こうに行ったらする暇なんてないだろうしな。」
そう言って釈天は自己紹介を促した。
「じゃあ、僕から自己紹介をしようか。」
そう言ったのは黒髪直毛で170cm位の日焼けした少年だった。顔立ちは整っているが、汚れた白衣が台無しにしている。
「僕は
そう言って目を向けたのは、小柄で茶髪の髪をポニーテールにしている少女だった。かなりかわいい方なのに、目つきがしっかりしているのと、カジュアルな服装のせいで不良っぽく見える。
「あ、オレ?オレは
そう言って練花は俺のほうを見る。
「最後は俺だな、俺の名前は瀬丹田陽。俺も特に呼ばれ方に指定はない。まず俺の説明の前に少し、家が特殊でよ。俺は魔術が少し使えるんだ。」
これに二人が食いついた
「はあ⁉︎マジで?すげえなそれ。箒で空飛んだりすんのか?」
「どこのハリー■ッターだよ。俺はそんなのは使えない。というのか出来るのかなそれ。まあ、俺が使えるのは簡易的な結界系と、炎魔術位だ。だから、こんな森の中で、修行してたんだ。」
「じゃあ、それが陽くんの能力かい?」
「それに関しては違うと断言しておこう。魔術は適性の有無はあるけど誰でも使えると父さんが言ってたからな。それに、戦闘では、槍術のほうが強いぞ。魔術は時間がかかるんだ。」
と少々芝居がかっていう。その後、三人で軽く話して打ち解けた...と思う。
「よしお前ら、自己紹介は終わったか?。なら最終確認だ。お前らが行こうとしている所は修羅神仏がいる所だ、死ぬかも知れない。もちろん日本より治安もよくない。その上、こっちには二度と帰って来れない。それでもお前らは行くか?」
「もちろん。」
「当たり前だ。」
「ノープロブレム。」
三者三様にこたえを言う。
「それならば、この俺が、
それは、見送る者の送別の言葉。しかし、陽たちの反応は違う所にあった。
「え?いやちょっと待て、おっさん今帝釈天って言った?言ったよね?え、つまり、おっさんがあの帝釈天?」
「しまったぁぁぁ‼︎やっちまったぁぁぁ‼︎いいかお前ら。この事は箱庭…お前らが今から行く世界では伏せといてくれ。分かったな?」
「分かった分かった。黙っとくよ。」
「すまんな、あと、出来る限り早急に忘れてくれ。」
「へいへい。まあいいや、じゃあ早く箱庭って言う所に送ってくれ。」
「お、おう。受け取れ。」
そう言って渡されたのは、一通の手紙だった。
「これを開けるだけだ。じゃあ、頑張れよ。」
「おう。」
陽たちは手紙を開く。
作者コメ
まず、この作品を見ていただき、ありがとうございます。戦闘などはもう少し先なので、気長に見ていだだけると幸いです。
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