春の夢の如く
猫井 咲良
序章
第一章 恋の始まり
彼の日記 ~その一~
子供のころからだったと思う。
ひとより少し、力が強い。
怒りっぽくて、手や足がすぐに出る。
だからよく、
それは小学校に上がっても、中学に上がっても、変わることはなかった。
自分の力と、他のひとの力が、かけ離れた以外は。
何人相手でも、勝ててしまう。大人であっても。同い年でも。
強い者は狙われるというが、それは本当で、常に誰かが喧嘩を売ってきた。
めんどくさくて、それを全部倒し尽くしたとき、自分はこう呼ばれていた。
『バケモノ』
しかし、自分を喧嘩の相棒として慕ってくれるものがいたから、寂しいわけではなかった。
ただ、学校では避けられていた。
自分から関わるのも苦手だったから、暇な授業もお昼も寝てばかりで過ごす。
そんな日常を、変えたやつがいた。
中学二年の春。転入してきたそいつは、皆が避けるはずの自分に、笑顔を向けた。
怒りもなく、怯えもなく、ただ呼んでくれた。
それが、どれだけ嬉しかったことか。
きっとそいつは知りはしないのだ。
彼の日記は、そう始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます