第2話
強い光が生まれた。パソコンの画面からなのか、自分の手からなのか分からない。
瞼を閉じても、さらに手をかざしても遮る事が出来ないほどの光を。
そして身体が浮いた気がした。
落ちる感覚では無い。持ち上げられたようにすっと浮かぶ感覚だ。
そして、目を開けると全てが変わっていた。
「うわぁ……。マジですか……」
目の前に広がるのは闇。足元に感じるのはごつごつとした岩肌。
とりあえず、身に付けている物の確認をする。どれも欠けていない。ただ制服のままだったのが悔やまれるところだが、それほど問題では無い。
肩に引っ掛けた靴を履く。
その時、何か耳元で囁かれたような気がした。聞いた事の無い音で、何か言葉のような気もするし、ノイズのような感じもした。
首を傾げながら、それ以上は何も無かったので、周りを見渡した。
少し湿っぽい空気が流れ、足音が反響する。洞窟だろう。所々にある薄っすらとした光があるので完全な闇では無いのが救いだ。近くに寄ってみると岩が発光しているようにも見えるが、表面を撫でると手にくっついて鬱陶しかった。光コケと言われるのがこれなのだろうか。
どこか出口は無いかと歩き始めて、
『何者ダ』
呼びかけられた。いや、呼び止められたのか。闇の中では何度見渡しても誰かが居るようには見えない。洞窟と思われる場所で、声だけが鮮明に聞こえてきた。だが、声の主は見当たらない。暗闇なので居場所がまったく検討つかない。言葉の主を探そうと一歩踏み出して、
『何者ダト、聞イテイル』
明らかに不審を顕にした言葉。苛立ちもあるかもしれない。刺激しては不味いとその場で動かない事を選択した。
「平守九十九。高校二年生」
規模の大きな洞窟なのか、反響する九十九の声が消え去るまで返答は無い。
『ドコカラ来タノダ』
「日本から来た。ここはどこですか?」
『新興国カ? 聞イタ事ノ無イ名ダ。ドコノ大陸ナノダ?』
下っ腹に響く声が少しだけトーンを落とす。少しだけ聞きやすくなった。若干篭った声なのは口元に布でも巻いているのかもしれない。
「大陸って〜と。ユーラシア大陸だったかな?」
『フム。マッタク聞イタ事ガ無イナ』
無知な人もいるもんだと思いながら傍にあった岩肌に座った。つるつるとした質感で岩にしてはなだらか過ぎる気がしたものの、ひんやりとして気持ち良かった。
「ここはどこなんだ?」
敵意は無いようなので、気さくに聞いてみる。
『変ワッタ事ヲ聞ク人間ダナ。ココハ人間ガ名ヅケタ方デ言ウナラバ《逃ゲ出シタ者達ノ楽園、ガルゼルク大陸》ニアル《フルテナ王国》ダ。大陸屈指ノ
自嘲なのか、苦笑なのか。少し楽しげな雰囲気がある言葉。不思議だったのは言葉尻にちょっと強めの風が起こった事だ。
「人間が……? あんたは人間じゃないのか?」
九十九の問いは当然の事だろう。まるで他人事のような口調はさておいて、人間と己を別だと断じる言葉だからだ。
『フム。コノ暗闇デハ見エナイノダロウナ。明カリヲ点ケテヤロウ』
その言葉の後、さきほど耳元で囁かれたような不思議な音が洞窟に響いた。
音に導かれたようにふわりと光の玉が現れ、闇を照らす。
視界には二つ、三つ、四つ……どんどん数が増えていく。途中で面倒になって考えなかったが、二十以上の光の玉が洞窟の中を照らした。光の玉は上下に動く事無く、縫い付けたように動かない。
間接照明程度の光量だが、数がそろった今では十分全体を照らしていた。
九十九の正面には人が数人余裕を持って歩けるほどの洞穴が一つ、左右は小動物が通れるほどの穴が数ヵ所。
上を見上げれば夜だと勘違いするほどの闇。かなり深い洞窟なのだろう。円柱の底辺に九十九が居るようだ。上が闇という事は光が届かない場所で折れ曲がっているのかもしれない。
改めて円柱の大きさを考えた。左右を見ておおよそだが、新築だった九十九の家が四つは簡単に並べられるほどの広さ。
そこで、ふと背後を確かめていなかった事に気づいた。
何気なく振り向いて……首を傾げた。
洞窟だと認識したのは足元に転がっている石や岩と同色の壁が続いていたからだ。だが、背後の壁は白かった。真っ白では無く、乳白色というか象牙色というか柔らかそうなイメージが湧いたからだ。
何気なく触れるとひんやりと冷たく、硬い。日陰にある鉄板のような。そう言えばと、腰を掛けていた部分を見ると磨き上げられた大理石のような光沢がある岩があった。やはり、色は白い。
はて? とさらに首を傾げて一歩下がる。
鉄板のような岩肌は複数の薄い白い板が互い違いに規則正しく並んでいる。
もう一歩下がる。
腰を掛けていた岩はその薄い白い板から生えているように見えた。
下がる。
白い板は壁一面にびっしりと並んでいる。
……下がる。
それはまるで蛇の鱗のように見える。
…………下がる。
首をゆっくりと左に向けると鱗に覆われた物体が徐々に細くなり、まるで尻尾のようだ。
……………………。
動かしたくなかったが、視線を右へ。強制的では無いのだが、意思と身体の反応が一致しない。
……………………。
そこには顔があった。一番近い動物で言えばワニだろうか。ただ、九十九がテレビや雑誌などで見るワニとはまったく違う。似ているだけで大きさはワニの十倍どころでは無いだろう。
総合して考えるとドラゴンだった。
漫画やゲームでは神獣、幻獣などと言われるほどで神秘の存在。
九十九の知識では伝説上の生物であり、漫画を読んだ後には若干影響されて一度見たいと思った存在。
(やっぱ爬虫類なのか……? ……違う、そんな場合じゃなくて、……え〜と…………あ、えっと…………?)
九十九が声を失って呻いていると、ドラゴン──色が白いのでホワイトドラゴン──が、人間の背丈ほどの大きさがある翡翠を思わせる綺麗な瞳を向けてきた。
恐怖という感覚がついてこない。頭が異質の情報を処理出来なくなっており、何も考えられなかった。
『ホゥ、我ノ姿ヲ見テモ叫バナイトハナ。何カラ何マデ珍シイ』
興味深げに覗きこむドラゴンは言葉もさる事ながら、学者のような理性的で知性的な視線を向けていた。
もし、口を開けて恫喝、もしくは捕食しようなどとしてくれば恐怖に叫び、腰が砕けるか無様でも逃げようとしていただろう。食べられたとしても。
だが、目の前のドラゴンはじっと見つめるだけで特にどうこうしようという素振りが無かった。それだけに何をして良いのか解らず、混乱する状況になっているのだが。
『アァ、ソウダ。名ノッテナカッタナ。我ハ《白竜レミュクリュ》人間ハ《フルテナ王国》ノ守護神ナドト崇メテイルガ、我トシテハ居心地ガイイカラ居ルダケダ。守ルツモリナド無イノダガナ……』
レミュクリュの口元が歪む。剣のような歯がずらりと並んで居るのが見えた。九十九の身体がびくりと震えた。食べられると想像してしまったかもしれない。だが、レミュクリュは自嘲し口の端を上げただけだ。
鼻から暴風が吹き荒れた。ため息なのか……?
その生暖かい風を受け、やっと九十九の思考が戻ってくる。
最初に思ったのが、敵では無いという事。それも言葉によって意思の疎通が出来る相手だと思う。
そして、己の状況を自嘲しながら話し、目の前の状況を冷静に見ながらも無下に出来ない性格のようだ。
それを優しい性格と言うのか、甘い性格と言うかは受け取る側の捉え方だろう。
やっと落ち着いた九十九がその場に座り、じっと見返した。
『ドウシタ? 人間ヨ』
意図が解らないレミュクリュが問い掛ける。
「正直、混乱してるんだけど、聞いて貰えるかなぁ?」
九十九がゆっくりと言いたい事を整理しながら口を開いた。
□□□□
『……フム。ソノヨウナ世界ガアルトハ……』
包み隠さずに九十九が語った話を聞いたレミュクリュの感想だ。驚きはあるが驚愕というほどでは無いようだ。九十九はまだまだ現実味が無く、夢を見ていると何度も考え直しているのにだ。
『数千年コノ世界デ生キテイルガ、聞イタ事モ見タ事モ無イ現象ダ』
「つまり、俺が見た呼び掛けの言葉にも思い当たる事が無いわけですね?」
『ソウダ。ダガ、通常デハマズ有リ得ナイ状況ダ。呼バレタナラバ何カコチラデ呼ブ
ダケノ事件ガアッタト考エルノガ普通ダロウ。ソレガ何カ、マッタク想像出来ナイガナ』
まともな状況では無い。九十九は画面に映っていた文字が徐々に遅く表示されていた事を思い出した。その時は全力疾走した後などと考えたが、もしそれ以上の最悪な状況だったならば……。
「元の世界に帰る方法は?」
『呼ビ出シタ者ガ特定出来レバ可能カモシレン』
「ちなみにだが、本当に心当たり無い?」
『人間ガ新シイ魔術ヲ創リ出シタノカモシレナイガ、情報ガ無イ今ノ状況デハ何トモ言エンナ』
「レミュクリュさんがどうにかする事は?」
イメージ通りであれば、生命力も魔力も知力、全てにおいて一人の人間が太刀打ち出来る存在では無い。それこそ魔力というモノが実際にあるのであれば、目の前に居るドラゴンも使えると思ったのだ。
『新タニ創造サレタ魔術ノ理論ヲ知レバ可能カモシレン。ダガ、基本的ニ人間ノ魔法ハ人間デシカ使エナイ。根幹トナル発想ガ我々ト異ナルカラナ』
九十九は頭を抱えた。
状況は確かにレミュクリュの言う通りなのだろう。だが、どうにも収まりが悪い。召喚されたと思うが、その主が居ない。さらに召喚という言葉が無い。つまりその類の魔術というものが無いと言う事。
創造したばかりならば副作用によって術者が死んでいる場合もあるかもしれない。どうも嫌な予感がするのだ。可能性は高い気もするし……。
さらに言うと自分の置かれた状況を理解はしたが、今これからどうすればいいのかまったく解らないのだ。話し相手が居るので少しは安心出来るが。
「ここから出たいんだが、外に出る道を教えて欲しいんだけど……」
『ソウダナ……。
九十九が顎に手を当てて唸る。それは契約という言葉に警戒しているからだった。古今東西、契約するという事はリスクを伴う。それは九十九の世界では権利や金のリスクがほとんどだが、今居る世界では命に関わるかもしれない。
「どういう契約なのか説明はもらえるのかな?」
『契約スル理由ハ
「……もう一つは?」
『オマエニ興味ガアルカラダヨ。気ニ入ッタトモ言ウ』
レミュクリュのまぶたがバチコーンと閉じられる。片顔しか見えないので解らなかったが、もしかしたらウィンクだったのかもしれない。が、目蓋を閉じるという一つの動作だけでこれほど迫力があるというのも凄いものだ。
「契約する利点はある?」
『ソウダナ……。我ノ知識ト、竜ノ加護ヲ与エヨウ。ソコラノ人間、妖魔、魔獣ナド蹴散ラセル程度ニハ強イゾ』
ふむ、と腕を組んで考える。話を聞く限り、九十九にしか利点がない。右も左も解らない身では助言をしてくれる者が同行してくれるのはありがたい。さらに惹かれたのは妖魔や魔獣が居るという情報だ。興味本位で会ってみたいと思うが、命がいくつあっても足りないとなれば会うわけにはいかない。だが、レミュクリュの助力でそれが可能なのであれば、それはとっても魅力的な提案ではある。
思わぬ落とし穴が無いか色々と考えて……。
……考えるだけ無駄だと諦めた。
「解った。契約しよう」
『良イ判断ダ。コチラトシテモアリガタイ』
レミュクリュがおもむろに首を持ち上げた。高層ビルに匹敵するほどの大きさだと改めて実感し、身体が数歩下がる。
四肢の先にある爪は成人男性以上の大きさがあり、レミュクリュが言うには鋭さは刀剣以上と自負している。
証拠とばかりに近場の岩を掴むので、割るのかと思ったが、岩が五個にスライスされた。砕くのでは無く、斬るという恐るべき爪だ。
口吻を上げ、ニヤリと笑う(おそらくだが)レミュクリュがおもむろにその爪を自らの胴体、両腕、両足、背中に突き立て、鱗を一枚だけ器用に剥がした。
身体の大きさを考えれば普通なのかもしれないが、刀剣以上の切れ味を持つ爪を鱗に傷を付けずに剥がす。
『服ヲ脱イデ、両手、両足、胸部、背中ニ我ガ鱗ヲ貼リ付ケヨ』
言われるがまま、上着を脱ぐ。
最初に右腕かなと地面に置かれた鱗を手に取った。
白い鱗の厚さは紙程度しかなかった。それでも重さはかなりある。触り心地が鉄板のようだと思ったが、重さもまさに鉄板のようだ。
鋼の盾のような形をしており、しゃがむと身体全体が隠れるほど。
それを右腕に当て、驚いた。鉄板の硬度だった鱗が飴細工のようにぐにゃりと腕に纏わり付き、右腕全体が白い甲冑に覆われたようになった。
「……どゆこと?」
不思議そうに、手を握ったりして具合を確かめる。戸惑いぎみに問う九十九にレミュクリュが口角を上げた。にやりと笑っていると思いたい。どうみても捕食準備しているようにしか見えないのだが、それは伏せて置く事にした。
『我ガ能力ノ一端ガ、オマエニ宿ッタノダ。喜ベ九十九。我ガ
誇らしげに叫ぶレミュクリュ。胸を張っているのか、首が若干持ち上がっている。
正直、人間らしさが失われてそうで若干引いているのだが、好意でもあると考えると文句は言え無い。いや、確かに竜の力を宿すのだとしたら文句など言えるわけが無い。
少しだけ考える間と諦めのため息を吐き出した九十九が、左腕にも付けようと落ちている鱗を持ち上げた。
最初は重量に驚き、持つだけでも苦労した鱗だったが、右腕は容易に鱗を持ち上げ、左腕に当てる事が出来た。
腹部、背中へと鱗を持っていき、上半身が白い甲冑に覆われた。
足元の石を持ち、力を込めて握る。感触や感覚は元のままだったが、威力、耐久力が変わったようだ。石が粉々に砕け、掌にはまったく傷が無く、痛みも無かった。
ほぉ、と驚く九十九。
視界の端にレミュクリュがさらに首を持ち上げ、誇らしげに胸を張っている姿が見えた。
ふむ、と頷いた九十九がズボンに手を掛け、脱ごうとした瞬間。
ブフォー。
レミュクリュの鼻息が荒くなった。
訝しげに見ると視線があちらこちらに動き……挙動不審だった。
首を傾げてズボンに再度手を掛けた瞬間。
ブフォーーー。
荒い。ものすごく荒い。そして生暖かい。
「レミュクリュさん。何か問題があるのか?」
『イ、イヤ、ソウデハナイノダガ……ナイノダガ……』
ものすごく不審だ。首を在らぬ方向へと向けているのだが、ちらりちらりとこちらへ視線を向けている。いや、身体の大きさからすると頭部をブォンブォンと勢い良く振り回していると表現した方がいいだろう。
九十九はじっとレミュクリュを見ながら考える。そして、短いながらも今まで生きてきた間に蓄積した経験と照らし合わせてみた。
そして、ある結論に達する。
「レミュクリュさん。もしかして女性ですか?」
雌……と言いたくなるところではあった。九十九の知識では爬虫類に分類されるとは思うが、言わない方が良い気がした。怒るような気もしたし、悲しむような気がしたからだ。
半分は優しさ、とまでは言わないが、それくらいは考えて発言する程度の優しさを九十九は持っているのだ。
レミュクリュがこくりと頷く。相手が人間だとしても自分と異なる雄であり、男ではある。言葉や文化、生態系や身体の作りが違うのであれば気にならないはずだが、相手の言葉や文化に理解があり、興味を持っているのであれば恥ずかしいと思うのかもしれない。
「じゃ、あっちを向いてください。すぐ済ませますので」
レミュクリュが頷いて視線を壁側へと向けたのを確認した九十九は後ろを向いて一気にズボンとパンツを下ろす。
そして、今身に付けた竜の加護を用いて両足に鱗をくっつけた。もしもを考えて一皮剥けておく事を忘れない。若い男には忘れてはならない事と部分がある。
溶けた蝋燭のように下半身に纏わり付き、首から下が白い甲冑に覆われる事になった。
自分の身体を見下ろして……。
バラエティ番組に出る芸人が着る全身タイツのようにも見えた。もじもじしてみたが、やはり感触に変化は感じられない。毛や身体の凹凸全てが白くなっている。
なぜかやってしまった感に襲われた九十九だったが、気を取り直して服を着る。
振り返ると頭部をほんのりピンク色に変えたレミュクリュと視線が合った。
『……ア、アノ、エット……』
ズボンを脱いだ時点で振り向いて凝視していた事には気づいていた。あまり気にしても気まずいと思い、黙っていたのだが、あまり効果は無かったようだ。
そして、思った事はレミュクリュが人間臭いという事だ。人間の男の裸を照れながらも興味本位から視線が外せない。まるで性に興味を持った女の子のような……。
「で、この白い身体は一生もんなのかな?」
九十九の質問にレミュクリュは応えられない。まだ錯乱しているようだ。しょうがないとばかりに両手を差し出し、勢い良く手を叩く。
パァン。
洞窟内に響き渡る突然の音にびくりと身体を震わせ、意識を取り戻す。
『イ、イヤ、今日中ニ元ノ色ニナルダロウ』
懸念が解消された九十九が頷く。
『デハ、行クトスルカ』
言葉と共に身体を起こし、立ち上がった。九十九が上を見上げ、見上げて過ぎて後ろへ倒れた。改めて間近で見たレミュクリュはとても大きかったのだ。
「出口はどこなんだ?」
『目ノ前ニアルデハナイカ』
言われるがままに背後を振り返って見る。確かに横穴があった。人間ならば四人ほどが余裕を持って歩けるほど広い通路。だが、人間ならばの話だ。後ろにそびえる白竜は明らかに入れる大きさでは無い。一番細いであろう尻尾ですら途中で遮られるだろう。
視線を横穴から真上にある竜の首へ。そして言葉を発する前にニタリと笑っただろう口角。
まるで、予想してみろと言うような雰囲気だ。九十九は肩を竦めて返答とする。どうするのか解るわけが無い。
レミュクリュの口元が細かく動き、牙が見え隠れする。
耳に響くのはここに来てから何度か耳にする不思議な音だ。
レミュクリュが震える。寒さというわけでもないが、苦しそうに震わせている。
何事かと一歩踏み出して気づいた。
見上げるほどの巨体が縮んでいるのだ。
超高層だった大きさが縦も横も縮み、民家ほどに。
民家ほどだった大きさが、車ほどに。
車ほどだったのが小脇に抱えるほどに。
そして、質量の変化のためか、レミュクリュのちっちゃい版の背中には白い蝙蝠のような皮膜の羽が生えていた。当然、色は白い。
「何に驚けばいいのかわかんねぇ……」
パタパタと羽ばたかせて九十九の肩に着地すると髪の毛に捕まる。
『コレデ行ケルデアロウ?』
頭をペチペチ叩きながら先を急がせる。
九十九は肩車の要領で白竜を固定すると洞窟を出るために歩き始めた。
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