第3話

「ああ、えーっと、あー・・・君、んー・・」

「シェイラ、ですよ所長」


名前、覚える気ないと見た。でも私負けない、と謎の気合いを込める。


「あー、シェイラ?の部屋なんだがね」

名前の後にハテナは要らんぞなもし。きちんとしてくれないと必殺、「私には母という名の魔王」を発動しますよ。たまに私も巻き添え食らって大怪我するけど。


「隣の部屋ですか?」

「ここは一応第一執務室なんだよ。一応。で、ここの隣に第二執務室というのがあるんだが、昨日あっちの部屋でポン菓子作ろうとして失敗しちゃってね。おかげで滅茶苦茶散らかっているんだよ。どうしよっか?他に部屋らしい部屋もないし」

「・・・ほほー(オプション、悪魔の微笑)」

「ヒィッ。きょ・・・今日中に片付けるから!!うん。散らかしたのは私だしね。あ、あの、今日はもう帰っていいよ。書類の提出も頼んだ事だしね、うん」


ええ、本来貴方が出すべき書類なのですが、任せすると出さない気がバシバシするので私が出しますよ、ええ。ええ、ええ。

笑顔に怯えられて思い出しました。

私の笑顔は母にそっくりだそうで。

糸目の奥が漆黒に煌めき、口角が鋭利な感じで引き上がり正に魔王!

と、力説されましたが自分ではよくわかりません・・・


「わかりました。では、部屋の片付けはお任せしますが、明日、もし、片付いてなかった場合、母を召喚することになりますのでくれぐれも、よろしく、お願いしますね?」


にっこり笑顔で申し上げたところ再びの土下座発動だったので、なんだかちょっぴり可哀想になってしまいました。

魔王擬きで申し訳ない。




退室の挨拶をして隣の部屋の惨状を確かめて気が遠くなりかけましたが、片付けるのは私ではありませんので気を取り直したものの。すっかり忘れていた通用門に凹みました。

これ毎日通るのよ。笑えない、笑えないったら笑えない。

ガックリ肩を落としつつ、とりあえずは職にありつけた事を祝おうかなと、お酒とスイーツと共に帰宅した私を待っていたものは。


「着歴500件(冷汗)」


相手はもちろん母(魔王モード)。

はははははははは。


翌朝。現場は自室のまいべっど。

魔王本人が寝起きドッキリとか止めて下さい。

口から心臓どころか内臓丸っと出そうでしたよ。

電話じゃ埒が明かないからって・・・来ないで!本当に!!

絶対言えないけど心の中で絶叫です。

朝日が昇る前から延々二時間半、朝御飯摂りながら一時間、出社の支度しながら三十分。

「帰ってから続き話すから」

帰らなくても帰っても地獄ってなんだろー。

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簡単なお仕事ですよ、たぶん。 しらら @tsuhika

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