第27話:襲われている村②

大抵、村というものは大きくても小さくても似たような造りをしていることが多く、一応は賊の残党がいないか、(今後の国造りの参考に)村の造りで特徴的な部分はないか、など注視してみたが特にこれといって収穫はなかった。

だが、思いもよらぬ収穫が子供の下へと向かったらあった。


「さっさと回収して戻....ろ?」


「.....あっ!」


寝ているはずの少年がまだふらつきながらも薪を杖代わりに立っていたのだ。


「お前...なんで起きてんの?」


「んなもん知るか!...くそ!うまく動けねえ...」


少年は毒吐きながらプルプルと立っていた。

側から見れば情けないことこの上ないのだが、俺からしたらもう驚愕の連続だ。

俺がかけた魔法は『スリーピングシャドー』という単体或いは複数を眠らせる闇の初級魔法。

だが初級といえどその効果は確かで、時と場合によってはどんな強者でも眠らせることができる。

そして俺はそんな魔法を手加減しつつ、2、3時間は眠るようにしてこの少年に放ち、少年も眠ったはずなのだが、どういうわけか少年は効果途中で抵抗レジストしていた。

一応対抗魔法はあるものの、条件発動に設定しておかないとまず防げない。そしてそれは、かなり高難易度の技術であり、こんな少年に使えるとは思わない。


「....お前、魔法は使えるのか?」


「あ?んなもん...使えるわけねえだろ....」


(魔導具系をつけている様子はないし、だったら体質か?それとも本能的な魔法行使か、或いはそういう能力者か)


なんにせよ人以上に知識欲が強いと自覚している俺からすればすごく気になるものだ。

先天的に魔法を抵抗レジストできる体質か、本能的に魔法を行使できる天然の天才か、身体の異常を回復する能力者か、あとで解明してやろう。


とりあえず今は連れ帰る。


「ほれ、村長は無事だから行くぞローソって奴のガキ」


「ガキって言うな!お前だって女みたいな顔しやがって、女ならそういう格好をしやがれ!」


「改めて眠らすか。『スリーピングウェイブ』」


今度は『スリーピングシャドー』の上位である広範囲睡眠誘導系魔法を集中して使ったため少年は簡単にコロリと落ちた。大丈夫、人体にこれといった影響はないしちゃんと起こせば起きるから問題はない!


「はぁ....後でこいつの親に聞いたりするか、もしかしたら磨けば光る原石かもしれんしな」


己を鍛える必要がなくなった今、俺の密かな楽しみの1つはこういう原石を見つける事である。


ジジくさいとかは言わないでほしい。





「さて、早速話し合いに移りましょうか」


クソガキをローソという奴の所へと引き渡した後、俺はティファとハピアを連れて村長の家へと訪れていた。

無論、今後の話し合い(という交渉)をする為だ。

ちなみに、アリア達この場にいない連中には馬車の移動や商売の準備、瓦礫等の撤去をしてもらっている。


「ティファ、説明頼む」


「かしこまりました。こほん、まず今回の賊捕縛に対し、私たちが捉えた賊はリーダーを含めて6人を捕縛しました。本来ならば賊は街の衛兵等に引き渡すのが鉄則ですが、賊達はあなた方に引き渡したいのですが、よろしいですか?」


「それは構いませんが....彼らは賞金がかけられている賊です。いいんですか?」


今回俺らが討伐した賊達はどうやらここいらで有名らしく、そのリーダーにかけられた賞金は金貨5枚にまで登るという。これは賊の賞金首としてはある意味破格だ。

だが、俺らにとっては"たかが"金貨5枚の為に街に行くまでの道のりこんな奴らと一緒するのはごめんだ。


「構いません。それと私たちの方で倒壊した家々の瓦礫等の撤去及び簡易な住居の組み立てを無償でやろうと思うのですが、それはよろしいですか?」


「それは....こちらとしては願ったり叶ったりの提案です。ですがそれではそちらが損をするだけ。後になり料金を請求されても払う事はできませんよ?」


「それも構いません。ですが、対価と言ってはなんですがこちらから3つ要求させていただきたい」


そこでティファは目の光を強め、それを見た村長がおもわず息を飲む。

こういう無駄に細かい交渉テクニックがティファは上手い。

あちらに有利な事を持ちかけたこの状況でそんな事をされればどんな無理難題が来るか相手は警戒するだろうに。


だが。


「では要求させていただきます。まずここでの永続的無税商売の許可、2つ目が現在売れる分だけのカラメルハニーを我々への3割引での売却、それと、村に対する期間無制限の貸し1つ。契約書はこちらで用意します」


そこでティファは村をつぶすような無理難題を吹っかけたりはしない。

これはまあ俺がよくやっていた手なのだが、簡単に説明すると100万を見た後に1万を見て安いと思う心理の応用だ。散々恩を売ってめちゃくちゃな要求をするようにして相手を心構えさせてから、相手の想像より少し低い要求を出すことで心の緊張の落差を生み出す手法。

例えば今回俺らが村を救ったわけだから、村の物品等を無償提供してもらったり、もはや村の所有権ごと要求したりする難易度の高い可能性があった。


そして今回の場合、カラメルハニーもそうだがそれ以上に期間無制限の貸し1つ、というのが本命だ。

無論、貸し1つと曖昧で親しみやすい表現をしているのはわざとであり、詳しく正確に言うならば『期間無制限絶対命令権一回分』と言ったところだ。

まして意地の悪いのがこちらで用意する契約書について。

これは大口の商人同士の契約や国同士の同盟等でも使われるものであり、どんな理由であれ契約を交わしてしまえばそれを破れなくなる魔法道具の一種だ。


少々厳し目の要求だろうが、前述の通り最悪を予期させてからのため、この要求に村長は頷いた。


「...わかり、ました.....ですがカラメルハニーは村の決まりで会議を開かなければなりません。狭いとは思いますが今日はここでお泊まりください」


「ありがとうございます。契約書はまた後で。では私たちは復興の作業を開始しますのでこれで失礼します」


「よろしくお願いします」


ティファが締め、交渉とは言い難いほぼ一方的な話し合いは終了した。

ちなみに、完全に今更なのだが俺たちはカラメルハニーを商売用に欲しいとかではない。

ただカラメルハニーは前も言ったように希少なために市場を探しても月に5本見つかれば幸運な激レア食品だ。

そして、美味い。

濃厚な甘みでありながら不快にならない絶妙な後味のハチミツであり、焼きたてのパンにかければ絶品だ。

故にただ私的に欲しいだけである。保存も効くし。





「さて、早速始めるか。作成クリエイト・クレイゴーレム」


ザッと村を見渡し、被害状況を確かめてから重たいものを持ち上げるための人形をスキルで作り出す。

人形と言っても命令を設定すれば学びつつ勝手にやってくれる軽いAIのようなもので非常に便利だ。

とりあえず5体ほど作成し、命令として瓦礫の安全な撤去及び一箇所への集積を設定して行かせる。

それと今度はもっと高度な人形を3体作成し、まだ使える木材の選別と用意した木材を使用しての簡易住宅の設置を命令する。

これで復興は数時間で終了するだろう。


「傍観しててもいいんだけど....」


家々の陰、チラリと見やるとそこには明らかにこちらへと敵意ある視線を向けて来る者が何人もいる。

どれも若い男から推測するに、おそらくだがこの展開を不思議に思う者達の過激派だろう。

まるで見計らったように現れた俺たちは確かに怪しいし、賊を村長に引き渡すことを知らない者達は自作自演にすら見えるだろう。

それに、居て欲しくない話だが俺らの登場をよく思わない連中の可能性すらある。


ここは会議が必要だろうな。


「通信《コネクト》、グリフィア」


『どうされましたか?殺りますか?』


「その物騒な考えを今すぐ直せ。それで、今すぐ馬車を中央まで持って来てくれ。商売を開始する。後、皆には一応武装させておいてくれ」


『了解しました。失礼します』


「うし、ティファとハピアも武装しておいてくれ。2人は目立たないようにな」


目立たないように、という言葉にハピアは引っかかったようだが、ティファはなんとなく察していたのだろう。

すぐに袖や懐、腰に俺が与えた短刀、それに俺が作った長短可変式の槍を背に忍ばせていた。

ハピアもそれを見て察したのか双剣を腰に差す。

うん、やはりハピアはティファと同じような役回りが似合う。


程なくしてフィア達が馬車を連れて中央の広場までやってきたため、とりあえずフィア、アリア、リグリットにはわかりやすく武装して周囲に立ってもらい、クラーリとティファは売り子、ハピアは蔵出しを担当してもらうことにした。俺は平たく言えば監督の立ち位置だ。


「さて、ハピア。まず前面に出すのは何が良いと思う?それと目玉商品も決めてくれ」


「私がですか!?」


「あぁ。勉強だと思って思った通りのことを言ってみ。一応参考までにだけど、土地、人、現状をよく理解するところが重要かな」


「土地、人、現状ですか.....えと...ここは村、周囲には平原と森のみで大きな街は離れた位置....人は....貧しくはないけど富裕層でもない....現状は村が半壊しているから....」


どうやらハピアは考え事をする時に声に出す癖があるらしい。だけどこれは商売などに限っては良い癖だ。

人は声に出すことで情報を整理しやすくなっているため、こう言った声に出しても問題ない情報や勉強の知識等は整理したりするのにとても有用である。

それに、考えていることも結構を的を射ている。


「答えは出たか?」


「一応....自分なりに答えは出しました。やはり今後の賊襲撃に備え、武具を多く陳列することだと思います!どうでしょうか?」


............どうやらハピアはアホの子であったらしい。

なぜ過程があっていて答えが大幅にズレているのだろうか謎すぎてちょっと理解の範疇を超えている。


「ふむ、お前実は全然考えていないな?ティファ、模範解答をどうぞ」


「まず村の周囲に馬車で半日以内に行ける街はありません。それにこの村はお世辞にも裕福とは言えず、まとまった収入は月に一度来るカラメルハニーの納品日に入るお金のみ、その他は細々と暮らしているような村です。そして今回の賊の襲撃に際し畑や家々が多く破壊されたせいでおそらく多くの生活必需品、食料等が失われたことでしょう。そしてもう一つが少なくともカラメルハニーの納期は数日先ということが村長の発言から確認できました。それらを含めると、第一に生活必需品及び長期保存の可能な食料品、第二に包帯や安価な回復薬等の医薬品、武具は在庫処分品と称して大量生産の安価な槍や弓を置いておくと良いと思います。目玉商品は....それらの少しグレードの上の範囲から並べればいいでしょう」


「長々とありがとう。まあ簡単に言えば生活に必要なものを重点的に並べたらいいんだよ。さて、そろそろ開店だ。上手くやってくれよ」


「ん?おいユート。お前はやらんのか?」


「俺はやることがあるんでな。アリア、何かあったときは頼むぞ。それと絶対にこちらから手は出すな」


「.....了解した」


「んじゃ後は宜しく頼むわ」


そう言ってとりあえずこの場を皆に預け、俺は俺で個人行動を開始する。

無論、アリアに言ったようにやることをやるためだ。


少し、ここでもめんどくさいことになりそうだからな





夜、俺らは村長の客間にて売上の確認と情報の共有をする為のミニ会議を開いていた。


「遮音、認識阻害、気配感知、対物理シールド、対魔法シールドの展開よし、OK、始めようか」


「やりすぎな気がしなくもないが....まあいいか。じゃあまず私たちの売上から報告しよう。ティファ頼む」


「はい。今回の売上は銀貨24枚、大銅貨27枚、銅貨12枚。予想通り売れた商品のおよそ6割が食器や服などの生活必需品でしたが、予想外なことが1つ」


「若い連中、そうだな....ちょうどユートよりいくつか年上くらいの男衆5人が難癖つけてはきたが、結局武器をいくつか買っていってな....あれは、どうも怪しかった気がする」


ふむ、この復興状況の中、武具を買い込むのは賊の再襲来や残党を警戒していると取れなくはないが、ここの武器庫には同じような武具が防衛用に備えてあったはずだ。

無論、私用とも考えられるが....やはりこの際においてわざわざ買ったのは色々と怪しい。


「他に気になったことはあるか?」


「あっ!えと、リグリットさんとクラーリがここに来る途中、視線を感じたと言っていました。私もいくつかは感じていたのですが、どうも粘着質というかしつこい感じで.....やはり獣人だからでしょうか?」


「ふむ....アリア達は気付いたか?」


その問いに皆無言で頷く。

じゃあ別に『黒の刃』のように獣人だから、という理由では無いだろう。

こいつらは総じて容姿が整っているが、初対面で偶々寄った村故にストーカーという線もないと思われる。


そして、その尾行のようなものは俺も感じた。


「わかった。これから皆警戒するように。あと、先に手を出すのはダメだが、危害を加えられたり加えられそうになったら戦意喪失までは許可する。事後処理が面倒だからくれぐれも殺すなよ」


備えあれば憂いなし、と言うようにやはり何事も数十手、少なくとも二手三手先を想定し、可能な限り危険を排除するに限る。

この世界において臆病とは生き残る為に必要なものの一つだ。臆病者ほど長生きする世界が戦乱の世というものだ。


「さて、じゃあ次は俺からだな。俺からは2つ。まずこの村で伸びしろのある奴を見つけたこと」


「....ユート?まさか女ではあるまいな?仲間にするとか言うまいな!?」


何をそんなに焦っているのだか....目を血走らせるなよ。


「落ち着け紅バカ。俺が見つけたのはここの村のガキ、仲間にするどころか連れてく気すらねえよ。懇願されても断固拒否る」


仲間が増えて良いことは多いが同時に悪いことも多いのだ。連携とか人間関係とか痴情のもつれとか、そしてそれは生意気なガキ程引き込んでくるので断固拒否だ。

まあ、能力的に言えば凄まじいことこの上ないのだが。


「そのガキ....あー、俺が運んできたあいつな?名前をロックと言うらしい。そして、固有スキル【魔法干渉】を持ってる」



スキル名:【魔法干渉】

効果:自身に対するあらゆる魔法に干渉する。

意識的に行うことで魔法を『消滅』『反転』『弱体化』『改変』することが可能となる。

無意識的にも発動し、その場合は通常の半分程の効力と『消滅』『弱体化』のみ可能。

[能力詳細]

『消滅』:魔法そのものを打ち消す。

『反転』:魔法の属性、方向等を反転させる。

『弱体化』:魔法の効力を弱める。

『改変』:魔法を書き換える。



「とか言う魔法使いに対するチート能力だ。使い方さえわかれば魔法使いも大軍だろうと無力になるだろうな」


例えば、魔法使いとの戦闘時、相手の放った魔法を『反転』させて跳ね返したり、『改変』してより強い効力で攻めたりと魔法使い相手になら文字通り無双できる。

無論、使うには少なくない魔力が必要だし使いこなすにはしばらくかかるけど、ちゃんとやれば歴史に名を刻めるレベルの能力があの生意気なガキに宿っている。

さらに、概念系のため俺がコピることもできない。

つまり、本当の意味で唯一無二の固有スキルだ。


「俺の柏手はこれで言う『消滅』に値するが、はっきり言って利便性が違う。そういう点から踏まえて、とりあえず明日使い方を教えてくるわ」


「.....は?何言ってんだお前は」


「リグリット?...ユートに対してお前、と呼ぶのは早くないですか?」


「フィアは少し大人しくしとけ。リグリット、俺はこういう若い芽を摘み取.....育てるのが好きなんだよ。花が咲いた時に楽しみだろ?そういう点ではお前と一緒だ」


リグリットも毒作りという非凡な芽があり、暗殺者としても立派な芽があったから仲間にした。

こう言っては非情かもしれないが、世の中努力でも生まれつきでも良いから才能あるものしか上手く成功していかないものだ。中卒だろうが東大出だろうが、成功する者は必ず何かの天才だ。それが計算脳なのか発想力なのか、はたまた努力というものなのかはわからないが、とにかく芽がある者は育ててなんぼだ。


「それに....面白いだろ?俺らが見出したただの生意気なガキが将来世界的に有名になってたら。話の種にもなるぞ?」


「ユート....それは流石にジジくさくないか?」


「ほっとけ。さて、じゃあもう一つの報告だ。たぶん数日中にめんどくさいことになるだろうから、だから明日中にお前らは復興の事後処理を、俺は指導を終わらせて夜にはここを発つ。と言ってもそれら全てがパァになる可能性が高いがな」


「村人の襲撃、ですね」


ティファのその言葉に一同(主に新参衆3人)が息を飲む。

ここで疑問に思わなくなったあたり、慣れてきたなぁと思ってしまうのが少し悲しい。主に自分の運が。

まあ、先ほどのアリアの報告で大体察しは付いていただろうが。


「無論今の所ただの予測の域でしかありませんが、少なくとも昼間の武器を買い込んだ数人は危険だと思います。それと身内を殺されたり家や家財道具を破壊された人々からの行き場のない恨みなども危険かと」


「人はそういうもんだしな。この場合少し扇動したら村の半数は賛同するだろう」


村の半数といえど精々数十人、蹴散らすことは可能だがそんなことではハピア達に会わせる顔が無くなってしまう。それに、金の卵も恨みとかで変な風に成長してもらっては困るから殲滅とかはしない。

けれど、1人2人は殺してしまうだろう。

そんなことになればリアル最低魔王ルートの突入だ。

ちなみに今は半ば魔王ルートである。


「それで、だ。リグリット、お前に1つ頼みたいことがある。頼めるか?」


「.....嫌な予感はするが、とりあえず聞くだけ」


「まあどのみちやってもらうからいいけど」


「おい!それ依頼にする形あるのか!?」


「報酬は払おう。んで、内容だが....簡単に言えば情報収集をして欲しい。今から」


「.....なんの情報だ?」


「昼間、武器を買い込んだとかいう連中のだ。会話とかを盗み聞きして、上手くいきそうなら機密文書とか重要機材とかパクってきてくれ。それと、武器の確認も頼む。できるか?できるよな、よし行ってくれ」


「.....怖いんだが....ああいや、偵察に行くのが、じゃなくてユートが、だぞ?別にいいけど」


半ば命令ではあるが、まあいいだろう。本人も満更でもない感じだし。

とりあえず念のために毒機構短剣を装備させて、1時間後に戻ってくる約束でリグリットを窓から静かに出発させた。


「さて、俺らは寝るとしようか。今日はしょぼいとはいえ久々に本格的な戦闘だったからハピア達も疲れているだろう。ベッドは使ってくれて構わないから自由に寝てくれ」


「ん?じゃあユートはどこで寝るんだ?床とかは流石に許容できんのだが....」


「大丈夫大丈夫。俺は見張り兼リグリットを迎える役をやるから座ったまま寝るし。だからシスルス、来い」


『はい!』


久々に(?)名前を呼ばれて嬉しかったのか瞬時にこちらの意図を汲み取り、シスルスは刀とかして飛んできた。

流石に抜き身のままだと危険なので前に作っておいた(人化できるため不要となった)隠蔽用の鞘に入れて、抱く。


『ユ、ユート様!?』


「我慢してくれ、流石に無手のまま見張りなんてやれん....ことはないけど、もしもの威嚇用としてだ」


『し、しししししかしですね?ユ、ユート様はこの状態でお休みになれるのでしょうか!?』


「俺の特技は基本的にどこでも寝れることなんだよ。それに俺のいた国に昔いた武士もこうやって寝れたというし、だから大丈夫だ」


何か視線が痛いような気がしなくもないが、別に女体を抱いているのではないのだ、別にいいだろう。

なんて思っていたらトコトコとクラーリが何か思いついた顔で前までやってきた。


「どした?寝にくいなら目だけでも瞑ってた方がいいぞ?」


「んふふ〜♫クラーリはここで寝る」


唐突にニンマリと無邪気な笑みを浮かべたと思ったら胡座を組んだ足の中にすっぽりとはまった。


「お、おう。なんかご機嫌だな。まあいいけど」


なんか異様にご機嫌なのは少し気になるところでもあるが、この年頃だ、人肌も恋しくなることがあるだろう。

なので、俺はあくまでお父さん代わりとして、或いはお兄さん代わりとして許可をだした。

決してロで始まってンで終わったりペでなんて始まったりもしない。


決してロで始まってンで終わったりペでなんて始まったりもしない。


「さて、寝よう.....どうした?そんな怖い顔今する必要ないぞ?ほれはよ寝ろ寝ろ」


俺が促してやると何故か渋々と言った感じでベッドへと向かっていった。


「....クラーリ、恐ろしい子」


「私も子供体型のはずなのだが.....」


「...背が....高すぎた......」


三者三様....なのだろうか?ちょっと言葉の真意とかは知りたくないのでそのまま目を瞑ることにした。

幸いにしてクラーリの耳と尻尾の毛並みはふんわりとしており、子供特有の高い体温と合わさって羽毛の抱き枕のようだったので、普通に眠ることができるだろう。

一応脳内で1時間後と仮想アラームを設定し俺は少し浅めの眠りに身を委ねた。

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