secretlove

音切 享楽

プロローグ

僕には一ヶ月以前の記憶がない。

一ヶ月前、目が覚ますと僕は病院のベッドにいた。起き上がろうとすると酷く体が痛む。仕方なく頭上のナースコールを押す。すぐさま慌てた表情の医者と看護師が病室に入ってくる。

医者曰く、僕は交通事故に遭い、それから数週間、目を覚まさずにいたという。検査の結果、打ち身などはあるものの、大きな怪我はなく、後遺症の心配もないそうだ。しかし、事故の際に打ち所が悪かったらしく、記憶喪失になってしまったらしい。

記憶喪失になった僕のもとに僕の保護者を名乗る身なりの良い初老の男性が現れた。男性は僕の事故以前のことを教えてくれた。

僕の名前が天明零てんめいれいであること。17歳で龍紋学園に通っていること。四方院家という屋敷に仕えており、その家のお嬢様の執事をしていたことなど色々と教えられた。男性自身も四方院家に仕えており、執事長をしているという。

数日間、様子身のため入院し、無事退院することが出来た。

そして現在、退院した僕は記憶が戻らないまま、四方院家の屋敷の前にいた。

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