Ⅲ.2004/07/31
作業2日目の朝。
今日はちゃんと着替えてから自分の部屋を出た。昨日勝平に厳しく言ったから、また家の中に居るって事はないと思うけど、一応ね。何があるか判らないし。
ガラッ
「おはよう」
ガレージへの扉を開けて挨拶した。その……一応礼儀として……ね?
すると、そこには勝平が居て……。
「っ!!?」
勝平がいるのは当たり前なんだけど、そうじゃなくて……上半身、裸。
「なっ!!ひ、ひ、他人の家で何やってんの!!?」
思わず怒鳴り吐けてしまった……。だって、驚いたし、目のやり場に困る……。
「『何』って暑いから。クールビズだよ。クールビズ!」
「はぁ?何よそれ」
「『クールビズ』もまだない時代なのか……」
溜息混じりに言われた。なんか、“遅れてる人”って言われている気分……。
「それより!何か着てよ!!」
「俺を殺す気かよ。こんな暑い日に冬服って……熱中症で死ぬぞ」
「そんなの知らないわよ!!」
もう、何が何だか分からなくなってきた。唯でさえ暑いのに、恥ずかしくなってきて尚更暑い!!オーバーヒートしそう!!
「本当はこれだって脱ぎてーんだよ!!」
そう言いながらズボンの膝辺りを掴み、風を通そうとパサパサさせている。
「でも、一応香澄も女の子だし?場をわきまえてだな……」
……ん?ちょっと待って!
「『一応』って何よ!!どういう意味なわけ?!」
「あー!!もう、めんどくせー!!着りゃいいんだろ。着りゃあよぉ!!」
渋々着てくれた。けど、なんかムカつく……。でもさ、考え様によっては……私の事、考えての結果なんだよね?んー……分かんない。
昨日に引き続き、今日もタイムマシン造りに勤しんでいた。
さっきからやけに静かで、進行状況は快調だった。てか、ホントに静か。昨日は勝平が話し掛けてきて集中できなかったけど、今日はずっと静かで……机に伏せたまま。
「ね、ねぇ?」
「…………」
あまりにも静かだから話し掛けてみたけど、返事がない。それに、さっきから全然動かない……。まさか!!?
「ねぇ!!ちょっと!!」
勝平の肩を揺すってみると、腕で隠れていた顔が見えて……真っ赤!!?
嘘!!まさか、熱中症!?
ガレージには扇風機が回っていて、暑いけど少しはマシな感じで……。でもそれは、私みたいに半袖短パンの涼しい格好の人にはって事で……。勝平は長袖長ズボン。まあ、捲ってはいるけど、冬服だから熱が逃げにくくて……
「やだ!!ちょっと!!」
どうしよう!!どうしよう!!凄く具合悪そうだよ!!とりあえず、水!!
私は水と氷を取りに台所へ駈け込んだ。
「えーっと!!えーっと!!これでいいのかな?」
ビニール袋に水と氷を入れたものと、塩水を持って、急いでガレージに戻った。
机に伏せている勝平を床へ寝かせ、額と脇の下に氷水の入ったビニール袋を当てた。
「大丈夫?ねぇ!!」
もう、私、馬鹿だ。勝平の事、全く考えないで、自分勝手で……。まさか本当に熱中症になるなんて思っていなくて……。真夏に冬服がどれだけ暑いのかも、考えれば直ぐに分かるのに……。
「ぅう……」
「あ!!大丈夫!?水、飲める!?」
勝平は頷き、ゆっくりと飲んだ。
「ごめん……迷惑かけて……」
弱々しく勝平は言った。
「ううん。私が悪かったの……ごめんなさい……ごめんなさい……」
泣きながら言う私に対して、勝平は優しく頭を撫でてくれた。
勝平をリビングのソファーに寝かせ、私は作業に戻った。本当なら、他人を家に入れるなんて嫌だけど。しかも1人で。でも、そんな事言っている場合じゃないよね。具合悪くて動き回れないだろうし、大丈夫……だよね?……なんか……勝平の心配より、自分の家の心配している私って……最低。
「はあ……」
溜息を漏らし、作業を続けた。
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