第51話 明暗30 (162~166 北村からの建設会社銃撃事件についての情報 本橋の遠軽への護送)

 その日の夜勤は西田と吉村の担当だった。遠軽署の夜勤は、都市部と違って忙しいということはないので、割とリラックス出来るものだ。たわいもないレベルから、本橋の件まで硬軟織り交ぜながら、共にコーヒーを飲みつつ話し合っていた。


 西田が仮眠から覚めて吉村と交代してすぐ、具体的には22日の午前3時頃、北見方面本部から緊急連絡が入った。女満別町(95年当時。現・大空町)の建設会社・九谷くたに建設に銃弾が数発打ち込まれたという知らせだった。日曜の深夜ということで、会社には誰も居なかったが、ガラスが割れたので、警備会社に自動的に通報が行き、駆けつけた警備員が確認して所轄の美幌署に110番したという流れだった。


 西田は建設会社への銃撃の一報を聞き、週刊誌で見た高垣真一の道東における利権争いの話を思い起こしていた。あの時はまだ記事で書かれた程の緊迫感は、警察としては全く認識していなかったが、それが現実になりつつあるのかと、嫌な予感が少ししていた。今のところ単に建物への銃撃で済んでいるから、大した問題では無いが……。


※※※※※※※


 夜も完全に明けた10月22日、日曜の朝、引き継ぎのために課長と話し合っていると、テレビの朝のニュースでも銃撃事件の話が軽く触れられていた。

「これか、西田が言ってたのは……」

沢井は西田から話を聞いていたこともあり、テレビを凝視した。

「公共事業の削減絡みで、建設会社同士のシマ争いが過熱してるらしいですね。それでヤクザも動いているとかいないとか……」

「建設会社への銃撃って話だから、まあヤクザ絡みだろうなあ……。これ以上エスカレートするとやっかいだ。北見方面もこの前まで忙しかっただけに、しばらくはゆっくりしたいだろうに……」

そう言うと、再び西田と引き継ぎを続けた


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 西田と吉村が帰宅した後、竹下は北見方面本部の倉野に、椎野の本橋に宛てた手紙についての新発見の報告を入れ、是非、札幌での取り調べを自分達にもさせて欲しいと最後の要請をしていた。倉野は椎野の手紙の意義を竹下が解き明かしたことを褒めたが、最難関の課題を竹下本人に突きつけてきた。


「椎野が本橋の自白に大きく関与したことは、それで完璧に説明出来るとして、本橋がそれを認め、政治絡みまで自供するとは到底思えないんだ。果たして、札幌まで行ってそれに時間を取ることを『本社』が認めるかなあ。そして何よりも、竹下が本丸と見ている、大島の関与については結局推測の域を脱せられるような情報でもないだろ? それでは追い詰められないんじゃないか? 琴似留置場でも、本部の刑事相手にあの調子らしいし……」

「率直に言って、そこは弱いですね……」

竹下も本橋の取り調べで何か引き出せる程の「発見」だとは断言出来なかった。


「まあいい。一応札幌の本部と話してはみるが、余り期待しないでくれ。最終的に実況見分で連れてきた時に、ようやく取り調べを許可されるってのが落ちだと思うぞ」

倉野は突き放すように言ったが、期待させたくないという配慮だったのだろう。竹下もそれを感じてはいたが、忸怩たる思いも抱いていた。「時間が足りない」という焦燥感は募るばかりだった。そして結果的には、案の定と言うか、道警本部は遠軽署に札幌での取り調べの時間を与えることはなかった。


※※※※※※※


 遠軽署の面々は、何とか大島海路の関与の確証を得ようとしてはいたものの、具体的に行動を起こせるだけの材料もなく、10月25日になってしまった。同日、道警本部は本橋の取り調べ状況が、「基本的」には順調なため、勾留延長後に生田原ので実況見分に移る見通しを遠軽署へと伝達してきた。西田達は何とか勾留延長期限までに大島の関与に結びつく情報、証拠を掴もうとはしていたが、正直「打つ手」が見いだせていなかった。


 竹下も通常業務をしている時も上の空という感じで、事件のことを考えているようだった。手紙という頼みの綱も、ある意味では「空振り」だったこともあって、行き詰まりを強く感じていた。


 上司である沢井は部下の奮闘を見つつも、ある程度成り行きを「見切った」感があり、仮に何か見つかったとしても、それはそれで立場上やっかいなことになるわけで、このままの方が理想的だとすら考えているのかもしれないと西田は思っていた。いや、当然動くべき時に動かないようなズルい上司ではないことはわかってはいたが……。


 そんな思いを抱きつつ、西田は本橋を札幌拘置支所から遠軽に護送するため、再び手はずについて沢井と討議していた。今回は鉄道輸送にするか、直接車で引っ張ってくるかを本部、北見方面と打ち合わせする必要がある。基本的には車の方がいいのだが、輸送距離がかなり出るので、マスコミへの対策も課題となる。そうは言っても、ある程度マスコミに情報をばらしておくのも警察の常であって、言葉を悪く言えば、車での護送はマッチポンプ的な対応ではあった。


 西田としては、旭川まで高速を使えるので別に車でも良いし、鉄道の場合に必要な、駅からの車への乗り換えも不必要だという利点を考慮し、沢井の許可も得て、遠軽署としては車を使いたいとの希望を出した。最終的に道警本部側もそれを採用し、10月30日に護送することが決定した。また、リーガルオフィスの本橋の担当弁護士が、札幌へもわざわざやって来て、接見を担当していることが遠軽署にも報告された。


※※※※※※※


 10月28日朝、西田が出勤してくるなり、夜勤明けの大場が、

「係長、深夜に網走で銃撃事件あったみたいです。また建設業者だそうで……」

と話しかけてきた。

「またか?」

西田はコートを素早く脱ぎながら、週刊誌の話が確実に現実化してきたなと思った。あの頃は大げさだと感じていたが、取材した側が予測していたのか、たまたま過激化しただけなのかはともかく、事実が記事に追い付いてきていたのは確かだった。


※※※※※※※


 深夜に銃弾が打ち込まれたのは、港湾関係の建設改修に強い網走の村山組で、事実上、地元ヤクザである、日照会のフロント企業だと言う話だった。網走選出の道議会議員である、民友党の「小坂 公介」の主要な支援者であり、民友党道議会議員としてはベテランの域の人物だ。言うまでもなく、国政では地区選挙区代表である大島海路の支援者でもあった。港湾関係の公共事業において無類の強さを発揮しているのは、技術力もさることながら、その絡みが大きいという噂だった。ただ、港湾関係の公共事業は将来的には減る可能性が特に高く、村山組はここ1、2年、一般建設事業方面の公共事業にも積極的に参入して来ていたらしい。


※※※※※※※


 そんな詳しい話を遠軽署の面々に教えてくれたのは、久しぶりに遠軽署へやって来ていた北村だった。夕方、本橋の護送の件で遠軽署に打ち合わせに来たのだった。


 護送は、遠軽署と北見方面本部の共同作業という形を採り、北見のメンバーとして北村が選ばれていたからだ。遠軽署との関係を倉野が重視して選抜してくれた模様だった。北村は北見方面本部のマル暴に親しい友人がいることもあり、その手の情報にも精通していた。


「そうなってくると、北見の4課(現・組織対策課)も忙しくなってるんだろ?」

沢井の質問に、

「はい。最初の銃撃から徐々に慌ただしくなって、今日のこれで警戒度合いが高まってるようです。1課の方もこれから協力しないといけなくなるかもしれないです」

と北村は答えた。


「例の連続殺人が終わって、やっとこっちに本腰かと思ったら、そうも言ってられない可能性が出て来たな」

「西田係長、まあそれはそうですけど、基本的にうちも、一般の本部系の組織の中じゃ確実に暇な所ですから、まあ贅沢は言えませんよ」

自嘲気味に北村は言ったが、疲れよりも充実感が目立っていた。

「それはそうと、どうなんですか本橋の方は?」

「どうなんですか」には「遠軽署としては」の意味が込められていたのだろうと西田は推測した。だが、「大島」の件については、元相棒であり、北村自身も知っていることではあるが、この状況下では軽々しく言わない方が無難だと西田は考え、


「うん、まあ現状は本社に任せてるから……」

とお茶を濁すにとどめた。

「いや、それはわかってますけど、ウチの倉野課長から内々に聞く限りじゃ、多少は近づいてきてるって話ですが?」

と小声で西田にぼかしながら聞いてきた。

「何だ知ってたのか!」

西田は拍子抜けしたが、北村の話しぶりから、大島への捜査について、なんでもかんでも倉野が言いふらしていたというわけでもないことはわかったので、特に焦ることはなかった。そして何より、案外倉野も僅かながらでも期待してくれてはいるんだなと感じた。

「そういうわけで、どうなんですか?」

北村は尚も追及してきたが、それに対しては竹下が、

「残念ながら、『これだ!』というモノは未だにわからないままですわ……」

と投げやりに返した。

「そうなんだ……。そりゃ残念だなあ」

北村は如何にも悔しそうに顔を歪めた。


「どっちにしても決定的なものがないと、なかなか表立って動けないよ。倉野さんにもそう言われた。遠軽に留置する時に一応本橋にあたってみるつもりではあるが」

西田は北村にそう説明した。

「自分も実況見分から北見方面の捜査員として参加させてもらうんで、その辺での成果が出るように、もし協力出来るなら協力させてもらいます!」

「そりゃ心強いな」

西田はそう言って北村の心意気を歓迎したが、基本的には余り期待出来ないという認識は北村には敢えて言わなかった。ただ、倉野から聞いていたのだとすれば、北村も内心はある程度状況把握はしていたのではないかとも思っていた。


「ところで、北村は松島孝太郎から、佐田実と伊坂大吉の間で取り交わした契約書についての証言引き出したんだよな?」

「はい? ああ松島の証言についてですか……。そうですよ」

突然西田に質問を受けたので、一瞬何のことかわからなかったようだが、慌てて肯定した。

「よく引き出したよな」

沢井が褒めると、

「いやあ、俺の彼女のおかげですよ、ある意味」

と北村は謙遜してみせた。


「言われてみりゃ、倉野課長が言ってたな。彼女の親族が松島の担当看護婦だったっけ?」

「西田係長。親族とは言っても彼女の義理の姉なんです」

「義理の姉ってことは、彼女の兄さんの嫁さんか?」

「それです。俺と同い年の人なんですけどね。その人が松島の担当で、懇意になったんでそのツテをフルに利用させてもらいました」

今度は西田に何故かちょっと得意げに説明した。

「どんな人間なの、松島は?」

竹下が聞くと、

「正直、死にかけって状況ですから、元気な頃は知らないんですが、かなりやせ細っては居ましたね。ただ、意識はしっかりしてました」

「肺がんだっけ?」

「沢井課長、そうです。結構苦しいみたいですね……。喋るのも結構苦しそうでしたよ」

北村はこの時ばかりは笑顔は曇っていた。さすがに知人でもないとは言え、直接話してきただけに、病状の辛さについては感じたものがあったのだろう。


「そうか……。もう長くないんだもんなあ。証言が他にも得られれば良かったんだが」

西田はしみじみと言ったが、

「残念ながらそこまでは無理でした。『詳しいことは知らない』という含みのある言い方だったんですが、それ以上の証言は得られませんでした。力及ばずすいません」

と北村は詫びた。

「いや、お前が謝るようなことじゃないよ、当たり前だけど」

西田はそう言って北村の肩をポンポンと叩いた。


「入院してきた最初は嫌な奴だったと、彼女の姉さん、ああ『百瀬』って苗字の看護婦さんなんですが、その人が語ってましたけど、病状が進むにつれて弱気になってくると、ようやく看護婦のありがたみに気付いたみたいで、打ち解けたみたいです。それがあの証言に繋がったんでしょう」

「それならそれで、最後に全部ぶちまけてくれないかなあ、知ってること……」

横から小村が口を挟んだが、その場に居た全員がそう思っていたことは言うまでもない。


 北村は打ち合わせを終えるとすぐに北見へと戻って行った。その後、遠軽署から護送に加わる刑事をどうするか全員で話し合った。西田は今回は、竹下と吉村以外の部下に任せるつもりだったが、沢井は西田に行くように命じた。大阪からの護送との兼ね合いもあったが、北村とコンビだったということも考慮したのだろう。


※※※※※※※


 10月30日、午前7時。道央自動車道を旭川方面へひた走るワンボックスカーの中に、西田と北村は同乗していた。正確に言うなら、あの本橋もその中に居た。他に、道警本部捜査一課の落合主任、ひら刑事の宇野が同乗していた。生田原の殺害現場での実況見分のために、札幌拘置支所からいよいよ遠軽署へと護送している最中だった。


 道警本部の他の捜査員は鉄道で遠軽まで、北見方面本部の捜査員は車で遠軽署まで来て、その後合同で生田原へと向かう算段になっていた。


 ある程度マスコミの追跡を覚悟していたのだが、空撮しているらしきヘリが1機程見えた他は、おそらく1台程度の車がそうだと思えた程だった。おそらくだが、現地での実況見分の撮影に注力するつもりなのだろう。


 実況見分日程が急遽確定したので、西田と北村は、前日の夜に鉄道で札幌入りして、睡眠もそこそこに遠軽へ護送車でとんぼ返りしていた。そういうこともあり、職務中で不謹慎とは言え、かなり眠気を催していた。本社からの落合と宇野は事情を知ってか知らずか、こちらも会話もせず静かなままだったので、車中は高速走行している車の風を切る音以外は静かなものだった。


 本橋も黙ったままだったが、他の刑事達も黙っていたので気になったか、

「おい、お前らやけに元気がねえな。何か言わんかい!」

と突如文句を言い始めた。

「質問は受け付けないんだろ? こういう時は」

西田が冷静に、大阪からの護送時に本橋が口にした台詞と同じ言葉を口にして皮肉を言うと、

「そりゃそうだが、世間話ぐらいはしてもええやん」

と返した。

「世間話ねえ……。そんなことより自分のやったことについて反省してもらいたいもんだが……」

落合は嫌味を口にしたが、

「ただ、ここから先、かなり(時間が)掛かるからな……。なんか言いたいことあるなら勝手にしてればいい」

と本橋に冷たく言い放った。


「そいつは実にありがてえな」

本橋は憎まれ口を叩きつつも、

「ところで、大阪で俺を取り調べて、こっちまで護送もしたあんたの部下2人は今日は来てないんだな?」

と西田に尋ねてきた。

「今日は二人共遠軽で留守番だ」

と、西田は目をつむったまま返した。

「そうかい。特にメインで取り調べもしてた、確か竹下とか言ったっけ? あいつは若いがなかなか見どころのありそうな刑事だったな。今日は会えなくて残念やな」

「竹下なら遠軽でお前をまた取り調べることになってるぞ。手ぐすね引いて待ってるはずだ」

西田は本橋を脅すような言い回しをしたが、

「ふーん、そいつは楽しみだな。自慢じゃねえが、運良くヤクザだった割に、あんまり警察のご厄介になったことはないんだが、そんな俺から見ても、骨もあるし、頭も良さそうな刑事だと思うぞ。まあちょっと融通が利かなそうなイメージはあったな。警察の中じゃ能力程出世しないんじゃないか、ああいうのは」

と奴らしい返しをしてきた。

「まあな……」

西田は本橋にそう言われて、思わず濁すような返しになった。答えようがなかったというよりは、むしろ本橋の竹下評が的確で驚いたためという方が正確だったろう。


 現実に大阪で取り調べした時には、竹下はそれほど切れ者ぶりを本橋本人の前で発揮したわけでもなかった。同時に融通の利かなさを、刑事達の前でこそ見せたが、本橋の前で見せたということもなかった。にも関わらず、分析が実に的を射ていたからだ。


「ああいう優秀な部下を持つのはいいことだぜ。俺はそれなりに人を見る目はあると思うが、直属の子分に裏切られて、今じゃこの始末だからな……。世の中じゃ上司が大事みたいなことを言うが、上に立ったら、それ以上に部下の能力も大事だよな?」

再度確認してきた本橋に、

「ああ、それはその通りだ」

と、今度は確信を持って西田は答えた。


「それにしても、こんな話してても話題が広がらんなあ……。じゃあこんなんはどうや? お前らは一体どうして刑事でかなんてつまらない仕事やってるんだ? 偽善からか? それとも親方日の丸目的か? 1人ずつ答えてみい!」

と、急転直下話題を変えてきた。

「お前に偽善と呼ばれるのもシャクに触るなあ」

西田はそう言いつつも、

「正直言って、正義感というより公務員に魅力があったってのは否定しない」

と正直に答えていた。

「公務員は色々恵まれてるからな。しかし、おかげで日本はこの有り様なんだぞ!」

本橋は相変わらず、「おまえが言うな」レベルのもっともらしい言葉を吐き続けたが、他の刑事達は、西田のような回答を率直に言いつつ、本橋の言葉には一々取り合わずニヤニヤしながら、稀代の犯罪者の妙な「正論」をただ聞き流していた。


 そして、最後に北村に振ると、

「恥ずかしながら……」

と前置きした上で、

「昔から推理小説みたいのが好きで、その影響もあって、刑事になるのが夢だったんだ」

と恥ずかしそうに頭を掻いた。

「こりゃまた、一転してお花畑みたいな理由の奴が出て来たな」

本橋は馬鹿にしたような口ぶりではあったが、一方で興味津々に、

「もうちょっと話してみろや!」

と突っ込んできた。

「最初に興味持ったのがシャーロック・ホームズでね。それからは江戸川乱歩やら横溝正史やらとどんどんはまっていった」

「そうか、推理小説の王道路線やな……。俺は推理小説は特別好きでもないが、ガキの頃、確かにシャーロック・ホームズなんかは学校の図書館で借りてよく読んだ記憶があるわ。そんな俺が人殺しやって、あんたが刑事か。世の中うまく行かないもんやな」

本橋はそう言うと豪快に笑った。


「ところで、シャーロック・ホームズと言えば、どんな作品が好きなんや? 色々あったやろ、長編やら短編やら」

本橋の更なる質問に、

「そうだなあ……。難しいことを聞いてくれたな」

と北村は困惑しつつも、一生懸命考えていた。そしてやっと

「話の意外性で『赤毛連盟』なんか印象に残ってるな」

と答えた。

「赤毛連盟……。確か、赤毛の店主の店の地下にトンネル掘って、銀行の金庫から金を盗もうとした話か?」

「おう、そうそう! よく憶えてるな、大して好きでもないのに!」

本橋の意外な知識に北村はちょっと喜んだが、置かれている状況に気付いたか、すぐにはしゃぐのを止めた。


「あれもなかなかいい話やったな。確かにコナン・ドイルの奴は傑作も多いが、俺が印象に残ってるのは『青い紅玉(近年は紅玉ではなくサファイヤと訳したものも多い)』やな」

「ああ、あれもいいな」

思わず北村も同意していたが、その直後、死刑囚と話があったことに、再びバツの悪そうな表情を浮かべていた。そして、シャーロック・ホームズシリーズが好きだと言っていた刑事と死刑囚がホームズの件で意気投合していたのを見て、西田は内心笑いをこらえていた。これらのやりとりで、眠気に満ちていた車中に奇妙な活気が出て来ていた。

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