第十三章
気晴らしに、私は近くの川の土手を歩いている。
あの後、私は病院の大部屋で目が覚めた。ユリカと分かり合う事の出来たあの部屋だ。
でも、あれは全て夢だったみたい。『個室に入院したんじゃないの?』とか、『刀が刺さって倒れてた?』とか訊くと笑われたから。でも、私にはただの夢だったとは思えなかった。本当に物語が暴走して暴れていたんじゃないのかと、今でも思う。ただの夢にしては登場人物の言葉に大きく動かされたし、精神的にも大きく成長出来たと思う。
シュウの『存在してはいけないものなんて存在しない。何か理由があるから存在している』って言葉には勇気付けられたし、ハルの言葉にも勇気付けられた。人を信じられなくなった時、あの言葉を思い出すと皆が近くにいる気がするから。いや。本当に傍にいるんだ。
私は手に持っている本を開いて見た。
そうそう、お姉ちゃんとは今でも喧嘩する。でも、前よりは仲良くなれた。お互いに溜っているものを言い合ったからだろう。話し合う事が大切なんだ。
お姉ちゃんとパパの仲はあまり良いとは言えないけど、いつかは仲良くなると思う。そう信じてる。
ママは私の熱意に負けて私が漫画家を目指す事を許してくれた。今では私の一番のファンだ。
今でもやっぱり、人を心の底から信じる事が出来ない。でも、だからって私はもう一人じゃない。私にはユリカやシュウ、トウナやハル、皆がいる。皆が支えてくれる。
私の中で皆は本当に存在しているんだから。
時間が経つと記憶は少しずつ薄れてしまう。でも、この事は一生忘れないと自信をもって言える。
私は草に寝転び空を見上げた。胸に『春夏秋冬』と書かれた本を抱きしめて。
ここに記しておけば何度でもあの時が蘇るから。本を開く度に会えるから。
扉を開けば見えるはず。大切な友達が――
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