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「電気が、電気が消えたぞー」
「電気が!」
「テレビもつかんぞ」
「一体どうなっているんだ」
「電力会社に電話をしてみるんだ」
「だから、電話も繋がらないんです」
「誰が武村のじいさんを殺したって言うんだい?」
「この島には人なんか殺す様なやついねえ」
「うんだ、うんだ、不審者が紛れ込んでいるかもしれんよ」
「船はどうなった?お母ちゃんがあの船に乗っているんだよ」
「おい船を出せ」
「雨が強くなってきた上に風も強くなってきた、今出せば確実に大波に飲み込まれるぞ」
「おらもだ、おらだってヤスエが船に乗ってるんだ。晋さんもう一度船をだしてくれ、おらも乗って行く、死体がどうのこうの言ってもこの目で確かめんと信じきれんわい」
「いや、わしは断る。この雨の中、出すのは自殺行為だ」
「それなら、俺が出す」
「銀さん、わいも連れてってくれ」
「台風が来るって前から言ってたのに、閻魔祭延期しないからこういうことになるのよ」苛立ちを抑えきれずに私はそう言った。
「佳代子ちゃん、閻魔祭はもう何十年も同じ日にやってきたんだ。島の神様は大切にせにゃいかんのんよ」
「そんなこと言っても、安全上に問題があれば延期すべきでしょう、あれだけ行ったのに、静雄さんが亡くなってからまとめる人もいないって言うのも分かるけど」そんな事を言ったところで今更どうなるわけでもないことは分かり切っている。
しかし、何かを言わなければ気が済みそうにないのだ。
銀さんが船に数人が乗り込むとこの嵐の中、必死に呼び止めたにもかかわらず悪魔のようにして揺れ乱れる果てしない海へと向かって行ってしまった。
「行ってしまったものは仕方がない。他のみんなは一旦公民館にでも避難しよう。ここじゃ高波にさらわれる可能性もあるし」
「じゃあ私、車出す」私はそう言って車の方へと向かった。
「それじゃあヨネコさんは佳代子ちゃんの車に乗せてもらって。和夫さんも玉緒さん、それから一郎さんも乗せてもらって」
「わしの車にもあと二人乗れる」
「わしの車にも乗れるぞ」
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