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秋姫巫

first file「誰も知らない恐怖へ」

ピピピ、ピピピ!  枕元に置いてあるスマホのアラームが午前7時になったのと同じに寝室中に鳴り響いた。  理子は頭のすぐ隣で鳴っているスマホに軽く手を伸ばしてアラームを切り、体を起した。  寝室を出てリビングへと向かい、台所に入り大きな冷蔵庫の一番上、冷蔵部の扉を開けてきんきんに冷え切った牛乳パックを取り出した。  冷蔵庫右隣の食器棚から透明のコップ取り出し、コップを台に乗せて牛乳を注いだ。  そしてコップを右手で持ち上げゴクゴクと喉から音を発てながら飲み切った。  牛乳を飲み終えた理子はリビングのテーブルへと移動した。  昨日の晩に今日の朝ごはんを予め作って、このテーブルに置いておいた料理が自分自身の朝の仕事を一つ減らしたのだ。  料理はそれほど冷えてはなく、お風呂のお湯で例えるのなら微温湯と同じ位だ。  ソーセージを一つ口に入れて、電源を仮オフにしていたテレビをリモコンのボタンで付けて、この時間帯にやっている天気予報にチャンネルを変えた。  その直後スマホに電話が一本掛かってきた。  スマホを手に取り電話主の名前を見ると、理子の働く会社の調査部長の名前であった。  調査部長からの急な電話はけして珍しい事ではないが、何時もより2分程早かった事が理子の気に止まっている。  電話に出ないわけにはいかなく理子は食事中ではあるが、電話に出ることにした。 『もしもし・・・?』 『あっ、もしもし理子君?』 『何時もより2分早かったみたいですか、何かありました?』 『問題と言えば問題かも知れないが、そうじゃないといえばそうなってしまうかも知れない事なんだ・・・』  調査部長は少し焦り気にそう言った。 『問題・・・ですか?』 『あぁ、詳しい事は会社に来てから社内で話したいんだけど、今すぐ出ることは可能かい?』 『無理ではないです』 『じゃあ、25分後会社で』 『はい・・・』  理子の方から電話を切り、すぐさま出勤の準備を始め、家を出た。  理子は収入が高めであって、かなりの値段の小さな豪邸を購入しており、私有地も広く家の外には6000万円程の一軒家。  外に駐車してある普通車に、理子は乗り込みハンドル右下の位置にあるキー挿し込み口にキーを挿し180度回転させてエンジンを付けた。  そしてアクセルを強く踏み込み車を出した。  街の少し山側で東京ドーム程の広い土地にある、シュルア調査研究所。  ここでは未解決の心霊事件や世界的に謎の事件の調査をし、2割の確率で無事解決へと導く。  つまりは物凄く危険でかつ汚い事をしている。  理子は調査研究所へ到着し、地下の駐車場に車を停めて地下に造られているエレベーターで1階へと上がった。  1階は主に一般国民からの調査、研究の依頼を受け付けるための大規模な受付カウンターが設けられている。  受付カウンターの規模が大きい分、待合室もかなりの広さである。  何しろ年間800万人もの人々が依頼にやって来るのだから。  それもあって比較的以上に他の職よりも高収入ではある。  理子はエレベーターを降り、階段を使って2階へと上がった。  2階に上がり真っ先に調査研究員としてやらなければならない事。そう、それは調査研究服に着替える必要がある  理子は更衣室に向かい指紋認証式のリーダーに右手を当て、扉のロック一時的に解除し中へと入った。  理子の利用している更衣室のロッカーは合計60個と、この調査研究所では最も少ない。  なんせ更衣室の最高ロッカー数は120個なのだから。  理子は自分のロッカーの鍵を開け扉を開き、真っ先に私物である鞄を入れた。  私物を入れた後、上着やTシャツ。そしてスカートと靴下と言った私服を脱ぎ下着姿となった。  ロッカー入れっぱなしの調査研究服一式を取り出し着た。  そして理子は調査研究員レベル7の証す、レベル7区域立ち入りセキュリティカードを右ポケットへ入れた。  もちろん調査研究員は本来レベルカードの他に何時から何時まで働いたかのかを証し、その時間量に応じて給料を出さねければならなく、そのためのタイムカードがあり。  レベル1から3までの区域を自由に行き来出来る、レベル1:3セキュリティカードが配布されている。  但し、無実績の調査研究員のみにである。  理子の様な幅広い実績取得者は、レベル7区域立ち入りセキュリティカードの様な物を一つ持っていれば何も問題にはならない。  理子は急いでレベル7区域へと向かった。  レベル7区域入り口前で止まり、セキュリティカードをポケットから出し、カードリーダーに翳そうとしたその時。 「おお、理子君。随分早いね」  理子はその声に呼び止められる様に止まり、振り返った。  そこには調査研究長の高橋・H・スルエの姿があった。 「それほど早くはないです。それに調査研究員として時間通りを超えた時間前行動は当然とおっしゃられたのは研究長ではありませんでしたっけ?」  理子は笑顔でそう言い返した。 「ああ、全くそうだ! 一文字足りとも間違っていないよ。それにしてもよくその言葉を思えていたね」  と、スルエは小さく笑いながら言った。 「よく思えていたね。ではなく当然を通り越して常識の隣り合わせだと、私は認識してますよ」  理子は両手をポケットに入れてそう返答した。 「そうだ。そうなんだよ。でも他の者達はすぐ忘れてしまうらしいから困っているんだよ・・・」 「他の調査研究員に関してはまず、雇用と存在理由が見つからない気がします」 「どこがだい?」 「まず、私との違いからで言うのならば・・・生活態度を初期化した方が良いと思っています」 「なるほどね」 「そして遅刻を平気でしておいて「昨日の仕事が悪い」等と言い訳をする事が気に入らないのです。さらに言えば上司に美人やイケメンで仕事が出来る人が居た場合、その上司と仕事がしたいだけの理由で仕事頑張ろうとする事が気に入りません」 「まぁそこは仕方ないじゃないかな・・・」 「そして私が一番嫌いなのは、私の様な美人な人間に性的な方向で接触しようとする人間です」 「それって、プライベートのこと?」  理子の愚痴のような日常会話に対して、スルエはただ苦笑いで居るしかなかった。 「ところで・・・急用は何でしょうか?」  理子は本題の事を質問した。 「大したことではないんだけど・・・念のためために・・・でね」  スルエは苦笑い気に右手で頭摩りながら言った。 「とりあえず。会議室で話そう・・・既に皆が集まっているだろうしね」  と、スルエは真剣な表情でそう言った。  理子とスルエは急いで調捜部の集まる会議室へと向かった。  会議室には既に理子とスルエ以外の人物は集まっていた。  縦に長い会議テーブル、扉から入って左奥にはシュルア調査研究所のトップであり全てを指揮する調査監視指揮官長ちょうさかんししきかんちょうの大日峨朗おおにちがろうが座り、大日に向かって設置されていて入り口から少し離されて設置されている巨大なスクリーン。  会議室の窓は合計4個と言うただ新鮮な外の光を取り入れる要素のみで、室内4つの角にはなぜかそれぞれ4つとも別色の薔薇が生けるように飾られていた。  そして既にこんな会議室で歳行った者同士の話し合いが始まっていた。 「所で最近、理子君がダイエットをしていると思うのだが・・・みなはどう思っているかね?」  大日は室内の者に質問した。 「彼女はスタイルが完璧であるゆえに、頭も冴えている。なのに恋人や結婚の話をしている所を見たもの居ない」  と、調査長の西沢は言った。 「いや、多分この私の狙っておるんじゃぞ。私のようなおじいさんが好きな美女が居ると聞いたことがある」  と、研究資料管の春先はバカな発言をした。 「いえいえ、彼女の結び相手はこの僕ですよ。皆さん方のようないつ飛び立っても可笑しくない人は選べない方があとあとの生活面でも安定ですしね」  と、研修生指導長の金髪ナルシストの南は言った。  その他の3名程は何も言わず、ただ理子とスルエの到着を待っていた。  会議室の扉が開き何よりも先に理子の言葉が大日に届いた。 「すみません、遅刻しました」  理子は会議室の扉を閉め、会議テーブル側に視線を向けた。 (まぁた、このセクハラ連中と会議ですか・・・)  理子は声にも顔にも出さず心の奥底でそう愚痴った。 「遅刻したのはわざとだよね! この僕が君を歓迎するための準備時間をくえれたんだろ?」  と、南は自慢の金髪を捲り上げてアピールした。 (一回で良い。一回で良いからコイツを新種の人体実験に使いたい・・・)  理子は無表情で南を見詰めた。 「いや違う。彼女は私と寝たいんだ・・・だから寝坊遅刻をしてきたに違いない」  春先は狂ったのか意味不明な発言をした。 (ジジイと寝る? 死んでも寝ませんよ。そんなそんなことよりジジイ、お墓に入れてあげましょうか)  と、思いながら理子は春先を笑顔で見詰めた。  だが、理子が見詰める事が彼らの勘違いを生む原因でもあった。  理子とスルエは席に着き、真っ先の理子が言った。 「そんなSWセクシャルハラスメント・わいせつトークは棄てて、本題に入って貰えませんか?」 「ああ、そうだね・・・」  大日は慌てて手元の黒いファイルから書類を出した。  そしてその中の一枚を掴んだ。 「今日君らを呼んだのは、他でもない。例の病院についてだ」 「例・・・」  理子は小声で「例」と口走った。 「実は10年前からファイブ病院は人身売買や無許諾人体実験などの疑いがあったんだ。それは知っているだろう」 「ああ、もちろんです」  南は返答した。 「しかし、その事実がこの10年間で一度も明らかになっていなかった」 「それならどうして・・・会議を?」 「まぁそう急がずに理子君・・・」  大日は右手を小さく上げ、上下に振った。 「だが、ついに明らかになろうとしている」 「それは一体どのようにじゃ」  春先は問った。 「よくぞ聞いてくれた。実はな数年前からファイブ病院に我が調査研究所員の二宮君に潜入調査をお願いしていたんだ。その中で複数の事実が明らかになかった」 (二宮君を急に見かけないと思っていたけど、潜入していたのね) 「それは無許諾人体実験の事だ。まぁ人身売買の事は? と思うかも知れないがそれはまだ明らかになっていない。それ以前に、あのファイブ病院は一年前に廃止となり、動いてすら居ないんだ」 「ちょっ、それって二宮の安否が分からないって事ですよね!?」  南は急に立ち慌てた顔でそう言った。 「ああ、そうなる・・・」 「と言うことは・・・潜入調査の人間だとバレて実験体にされた可能性もあるって事ですよね?」  理子は少し大声で問った。 「その可能性が有無なんだ。そしてね、実はここに居る優秀なみなにお願いがある・・・」  全員が唾を飲み込んだ。何しろこの次の言葉が何なのかを皆が分かっていたからであったからだ。 「ファイブ病院の謎を全て明らかにするために潜入して欲しいんだ・・・つまりは」 (まさか、史上最悪のアレを?)  理子だけが何を言われるのか、分かっていた。 「ファイブ病院の情報更新、通称updateアップデート任務を頼みたい!」  その言葉を圧力にみなは何も言えなかった。 (updateだって!? 冗談じゃない! 絶対やらないよ)  南は全否定した。 (ジジイとは言え比較的楽に死にたいんでね。ここは下がるとするか)  春先もほぼ全否定の考えであった。 (私にもまだ人生がある。強制ではなさそうだからここは離脱や辞退が正しい。理子君、君もそうした方がいい)  と、思いながらスルエは向かいに座る理子を見詰めて訴えかけた。 (え? 何?)  と、理子はスルエに見詰められている意味を理解出来ず、大日に視線を向けた。 「やはり、出来るわけがないか・・・何しろバイオハザード級と呼ばれるレベルクレイジーの任務なんだからね・・・」  その時、理子が割り込みを入れた。 「やります・・・」 「え?」  大日は聞き間違えたのかも知れないと思ってしまった。 「今なんて言ったの理子君?」 「いえ、だから行きますって言ったのですが・・・ダメですか?」  理子の言葉に大日とそれ以外の者も大きく動揺した。 「正気か!?」  南は思わず両手をテーブルに叩き付けて立ち上がり怒鳴った。 「はい。あなたよりは常に正気です」  理子は真顔で返答した。  理子の言葉に南は呆れた素振りで強く腰を下ろした 。 「で、updateはいつですか?」  理子は大日を見詰めた。 「先にお礼の言葉を言っておくよ。本当にありがとう! そして必ずしも無事を祈る。それと任務日は明日となるが、大丈夫かね?」 「問題ありません・・・」  そう言いつつも理子は表情はどこか恐怖を感じていた。  会議は無事終了し、今日は帰るように言われた理子は地下駐車場に降り車に乗り、家へと帰り残りの時間を楽しんだ。  そしてベッドに腰を下ろし枕元に置いておいたスマホに手を伸ばし取った。  スマホの電源を付け、ある人物に一本だけ電話を掛けた。 『はい?』  電話を掛けてわずか4秒で、その人物は出たのだ。 『私だよ・・・理子・・・』 『理子なの? あなた本当に理子なの?』 『詐欺とかじゃなくて、本当に理子だよ。お母さん・・・』 『本当なのね、理子・・・』  電話越しに母は泣き始めた。 『しっかりやっていけているの? お金とか、生活環境には慣れたの?』 『全く心配症だな・・・』  その言葉と共に理子の目にも涙が浮かんだ。 『当たり前でしょ、女の子なんだから・・・』 『女の子ではなくて、女性って言わないと。もう私も23なんだし』 『うん、でも元気みたいでなにより安心した』 『実はどうしても言わないといけない事があるの・・・』 『もしかして、結婚したの?』 『そんな軽い物じゃない・・・』  理子は横になって通話を続けた。 『実はupdateの任務を引き受けて明日以降こうして話す事は出来ないこも知れなくてね』 『どうしてそれを引き受けたの』  母は再び泣き出した。 『昔、お母さんが言っていた言葉を思い出してね。誰かが動かないと誰も動かない! どんな危険や困難があるかなんて先頭を歩く人にしか分からないけれど。それによって得られる事は大きい。小さな犠牲から大きな情報が得られた時、先頭を歩いた物が【本当の勇者】って』 『ええ、そうね・・・でも』 『大丈夫。必ず生きて帰る、私は過去に関わった仕事で【残された人気持ち】が分かっているから』 『そう、ならしっかり頑張りなさい』 『必ず・・・いや、生きることが生命の義務だから、絶対に帰る』 『ええ』 『おやすみ・・・』  理子は通話終了ボタンをタップし、通話を終え、そのまま眠った。  そしてこの日が来てしまった。  理子は誰よりも早く会議室に到着していた。  その理由は、昨日のupdate任務追加潜入員の事でたった一人、理子だけがその任務に参加すると名乗り出たあと潜入員にはファイブ病院の位置情報と現在分かっている内部情報ファイルの所持義務としている  理子は会議室の窓から外を見ていた。 (ファイブ病院って正式名称なのかな・・・?)  と、これから行こうとする病院の名前が引っかかっていた。  すると会議室の扉が開き、大日が入室した。  大日の右手には例のファイルがあった。  大日は理子にファイルと小型無線機、そしてデジタルカメラを渡した。  そして大日は申告そうな表情で言った。 「本当に良いのかい? 辞めても大丈夫だよ?」 「いえ、私が行かないとダメな理由がいくつかあるので」 「理由?」  理子が言う理由とは、例の潜入員である二宮の事であった。 「潜入員の二宮君の事で、どうしても私が行かないといけない気がして・・・」 「実は私も同じ心配をしていたんだよ。二宮君の生死が潜入から凡そ一年半前も経ったが、病院が廃止となってから一切の連絡が取れていない。私としても大きな損害になりかねない・・・」  理子は大日を睨むように見詰めた。 「大きな損害? あの・・・言葉をしっかり選んだ上で使って頂きたいです。我々はあくまでも研究員と言う労働者なんです。物と認識した損害であるなら彼に変わって私が大日さんお許しません」  そう言うと理子は会議質を出ていった。 (近年変に感じていたけれど、この調査研究所は近いうちに崩壊するわ・・・)  エレベーターを使い地下駐車場へと降りて自分の車へと乗り込んだ。  そして車を発進させた。ファイブ病院の存在する深い山奥へと・・・・・  深い山奥、道路には木の根や草がその先に行かせないように生えていた。  もはや整備されていない道路とほぼ同じになりけけていたが、やはり違いとしては病院まではしっかりと繋がっていた。  理子は車を減速させて窓から病院の方をチラっと見た。  病院の周りはレンガを積上げられて造られている壁に、病院の外観を見た感じでは普通とは違って窓が物凄く少なく、外壁には木の芽がビシビシに貼り回っていた。病院の外壁も同様に。  そのまま病院の入り口である門へと車を走らせた。  理由はよく分からないが門の扉は開きっぱなしの状態となっていた。 (二宮君が開けたのかな?)  門を潜り、向かって左側にある草だらけの駐車場に車を停めた。  大日から受け取った小型無線機を右ポケットへ入れ、左ポケットにはデジカメを入れた。  そしてファイルを手に取り、車のドア開けて外へと出て再度病院の外観を見渡した。  廃止してから一度足りとも関係者や客が着ていないのが一目瞭然であった。  理子は病院の入り口へ行き、扉のノブに触れた時・・・  後ろ側でガシャン! と大きな音が鳴った。  理子はビクっと反応し、慌てて振り返った。  すると病院の門が閉じられていた。  当然ながら理子は閉じていなく、門が閉じるほどの強い風が吹いていたわけでもなく。  と思っていた時、急な強風が理子を襲った。  強い風と言っても理子の長い髪が荒々しくなびかれるほどであり、人を飛ばすほどではない。 (でも一つ分かっている事はある・・・それは。このファイブ病院が普通の病院ではないと言うこと)  再度理子は病院の入り口の扉のノブを握った。  95度くるりと回し開けようとすると、なぜか扉は開かなかった。 (別に鍵が掛かっているわけでもないのに・・・)  理子は扉の窓から中を見ようとしていたが、あまりにも中は暗すぎた。  だが、扉の鍵が掛かっていないことは確認出来ていた。ギリギリ見えていた事が理由で。  それでも理子は必死に扉を開けようと頑張った。  だが開くはずはなかった。  仕方なく病院右側から裏へと周り裏口から入ろうと、理子は病院裏側へと向かった。  裏側へと到着した理子は衝撃の光景を目にした。  それは病院の表と裏に違いに大きな差がありすぎた事であった。  病院表側は廃止したのが一目瞭然であったが、それに比べて裏側はまだ病院として動いていてもおかしくはない程に綺麗であった。  既に廃止して一年は経っているとは言われていたが、裏側を見ていまうと、とてもそうには思えない物であった。  そして一番気に入ったのは、病院へ搬送される患者を乗せる救急車の駐車スペースと思われる場所のシャッターが8割程開けられていた。  理子は迷いなく駐車されていた救急車の運転席の様子を確認しようと近づいた。  そして理子は運転席の残されていた物を目にして、衝撃過ぎたのか一瞬右手で口を塞いだ。  運転席にあった物は、大量の血痕だったのだ。  血痕と言っても席に染み付いて既に一年は経っていたため濃い赤色の模様と化していた。  そして席には病院の裏口の扉を開けるための鍵であろうか、少し変わった形の鍵が残されていた。  理子は鍵を回収し、すぐそこにある裏口へと向かった。  裏口の扉に近づきよく見てみると、裏口の扉の鍵穴と理子の回収した鍵とは形が一致していなかった。

 それでもと、理子はさっきの鍵を扉ん鍵穴に挿し込んだ。

 すると不思議な事に、サイズ、形が一致していたわけでもない鍵穴に鍵がしっかりとはまった。


 そして、扉を開けて中へと入った。

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