エリとユウキの異世界過酷生活

@yumesaki

第1話 異世界へのプロローグ

私立双胴高等学校。そこは日本でも最高峰の学力を誇る優秀校である日の放課後。学校の校門前にはには二人の男女がいた。彼らの名は霧島侑希と平柳絵里。


「俺とつきあってください!」


 そう言って彼、侑希は頭をさげた。

 放課後、授業が終わってすぐの時間帯に告白のシーンが発生するものだから目立たないはずもなく、二人の周囲にはかなり多くのひとがいた。

 周りを囲む生徒の数およそ七十人。それもまだ学校の中から人が出てきていてまだ数が増えていっている。

 普通ならばいくら思春期の少年少女達の興味ある青春の一ページだからと言ってこんなにも多くの人が集まるはずもない。

 何故こんなにも生徒たちが集まっているのか。それは侑希と絵里ふたりの関係にあった。


 平柳絵里。彼女は外務大臣、平柳修三の娘だった。平柳修三は元々大手飲食店の社長で日本で屈指の実業家でもある。その証拠にといったら変かもしれないが、この時代においてもなお彼女の後ろには使用人の恰好をした男の人が控えていた。しかも、ご丁寧にリムジンと一緒にだ。もちろんその娘の絵里も一般人であるはずもなく彼女は類を見ないくらいのお嬢様だった。

 彼女は元々、親の方針で公立の中学校に通っていっため常識に欠けるよなお嬢様のようではないが、それでも容姿、気品、立ち振る舞いすべてが他を圧倒するような雰囲気を漂わせていた。


 それに対して彼、霧島侑希も有名だった。

 彼は普通の家柄の一般人だ。でも、彼はこの学校ではとても有名人だった。

 顔は普通の域から出るものではないが、全国屈指の優秀な学校で成績は確実に五番以内、スポーツだって全く盛んでないのにも関わらずラグビーで花園(高校ラグビー全国大会のこと)までの道を切り開いた。これだけでも有名人必須だった。

 けれど彼を一番有名にしたのは、そのようなことではない。

 それは、彼の一途な思いだった。

 侑希は元々中学校ではそんなに頭がよくなかった。それにスポーツだって才能はあるものの凡人の域はでないものだった。

 そんな侑希を変えたのは、絵里への一途な恋愛感情だ。

 絵里と侑希は二人とも市立戸坂中学校という同じ中学校だった。そんな二人が本当に出会ったのは、三年生の春同じクラスになってからだ。いや、出会ったというよりも侑希が絵里を見つけたというのが一番正しいかもしれない。

 最初、侑希は別に絵里の事など全く好きではなかった。正直彼は噂やそういうのに興味のないタイプで、絵里の事など噂に聞く程度でどうでもいいと思っていた。

 だが偶々絵里と同じ図書委員となったとき、絵里の華やかでさびしそうで美しくて儚い笑顔を見た瞬間に変わった。変えさせられてしまった。

 彼は初めて本当の意味で恋をした。彼女の笑顔に恋をした。

 そこから普通であった彼は彼女の気を引こうと努力した。けれど、お嬢様である絵里はいろいろと忙しく、侑希のシャイな部分もあってか学校でちょっと会話をするぐらいしか戦果を挙げることができなかった。

 半年後中学三年生の秋に季節が変わったころ、進路の話も上がってきて焦った彼は絵里に手紙で告白をした。けれど、結果は玉砕だった。

 しかも答えに来たのは彼女の使用人だった。忙しいからと理由をいっていたが、ショックだった。それと使用人の言葉も彼の胸を撃った。

 「あなたではお嬢様にふさわしくありません。もしお嬢様がその気になったとしてもあなたには資格がありません。」こう言ったのだ。

 それから彼は努力した。時間がなかった彼は彼女と一緒の学校に行けるように勉強した。それも、双胴高校というかなりお金がかかる名門私立の学校にいけるよう特待生合格で行けるように。

 侑希はそれでちゃんと合格した。

 また、合格したころにはもっと彼女の事を好きになっていた。いろいろなイベントを経て彼女への想いを募らせていっていた。

 球技大会。文化祭。マラソン大会。ちょっとしたクラスでのレクリエーション。

 どんな時でも、侑希の瞳に移るのは彼女の姿だった。

 今度は高校に入学して、勇気を出し直接好きといった。結果は振られた。

 でも諦められなかった侑希は彼女に嫌がられないように気を付けながら彼女にできるだけアピールをした。

 そして三度目の告白は終業式の日に告白した。でも振られた。


 彼は、絵里の事が好きで好きでしょうがなかったし、実は絵里が三年になって海外に留学するということもあって彼は焦っていて好きな様子を全く隠さずいたし聞かれても堂々と大好きだといっていたので、中学校の話も隠されていたわけじゃないため、漫画みたいな侑希の思慕の思いは校内の一番気になる恋の話題だった。


 それで今日、二年の終業式の日間近。

 絵里が、恥ずかしそうにそば向き発する答え。


 「侑希くん。ごめんなさい。」


 綺麗な声音で紡がれたのは断りの言葉だった。

 彼女はそう言って待っていたリムジンにのって去っていった。


 「はぁ~。」と結果を聞いて周囲までもが残願って息を吐いた。それほど侑希の恋は注目の的となっていたのだ。


 侑希は、泣き笑いのような表情を浮かべた後、「今までありがとう。」そう言って部活に向かって歩いた。

 あるラグビー部の生徒によると、彼は帰り道に堪えきれず大声をあげて泣いたいたそうだ。


 それから修行式の日まで、侑希は彼女の迷惑にならないように普通に学校をすごした。

 日々は緩やかに過ぎ、予定調和のように絵里は海外留学のため日本を離れた。

 侑希の恋は、ここでひとつの終わりを迎えたのだ。

 



 

 それから半年後、侑希は大学受験に向けて塾に通っていた。

 彼はもう恋愛などしなくなっていた。

 もっと言うと彼は、恋愛に対して臆病になってしまっていた。一途な恋によって彼の真摯さに惚れた女子も皆無ではなかったのだが、彼は恋愛がだめだった。

 そのぐらいで、と思う人もいるかもしれないがほとんど全てを彼女に好かれるために頑張っていた彼には大きすぎる衝撃だったのだ。

 

 侑希は、駅前に塾校舎に向かって歩く。

 賑やかな駅前の喧騒はいつも、なぜか寂しく感じられていた。

 

 ふと侑希が上を見上げる。見上げた視界に入ったのは少し高いビル達。


 侑希は目を見開いた。

 すぐ近くのビルの屋上に一人の女の子が立っていたのだ。

 そして彼はすぐにその女の子が絵里だと見抜いていた。そう海外に留学に行っていたはずの絵里だったのだ。

最悪の予想が脳裏に浮かぶ。いや、侑希には何故か分からないが、その予想が当たってる気がしてしょうがなかった。


 そして最悪の期待通りに彼女がビルの上から飛び降りた。

 侑希は急いだ。彼女を助けようと。落下地点まで。

 でも、女の子一人とはいえ重力によってとんでもない速度がかかっていて、侑希の奮闘むなしく、二人は日本から地球から永遠に意識を手放した。




 

 侑希は違和感を感じた。

 明らかに危機を感じ、死を感じたのだ。

 けれど、今彼が感じてるのは心地よいそよ風。うっすらと目を開けると夜の星々が輝いているのが感じられる。

ここが天国かと侑希は思ってみるが、そうは考えられなかった。

彼にははっきりとした感覚があった。

 疑問に思って起き上がってあたりを見渡す。


 そこは一面、見渡すほどの草原が広がっていた。



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