野菜のPrince!

( ˙-˙ )

二人はVegetable

「おい、人参ニンジン。俺はもう限界げんかいだ。

別に減るもんじゃねぇし、いいだろ‼︎⁉︎」


バックステージから野獣やじゅうのようにドスのいた男の声がれた。強引な要求に、弱々しい青年の声が抵抗する。

「ぁあ、ちょっと…待ってください…。

だ、大根先輩ダイコンせんぱい。そういう問題じゃ、ないですよ…‼︎男同士おとこどうしでこういうことするのは……。」

「大丈夫だ。もしもの場合は、俺が責任を取るから安心しろ。」

「もう大根先輩……。」

「人参、お前なに赤くなってんだ?さては俺に

れたか?」

「ち、違いますよ‼︎別に惚れてなんか。それに赤いのは生まれつき…」

「まぁ後でたくさん可愛かわいがってやるよ。それじゃあ、行くぞ‼︎」

「はい、先輩‼︎」


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


大根先輩を先頭せんとうに僕達がステージへ踏み出すと、観客席かんきゃくせきから沢山の歓声かんせいが上がった。

同時に、照明スポットライトに照らされて、眩しさに眩暈めまいを覚える。

でも、僕にとって気持ちいい光。

苦労してつかんだあこがれの舞台ステージなのだから。


「キャアアアアアアアア////‼︎‼︎‼︎‼︎ 今日の人参様の衣装いしょうはメイド服よぉぉww」

「男がメイド服を着るのは反吐ヘドが出るほどキモいけど、人参様と大根様だけは許されるのよねww」

「今日もお美しいわぁ。人参さま大根様こっち見てぇぇええ!!」

「一度でいいから、間近であの美顔をながめてみたい!そしたら死んでもいいかも」

「あの二人のCPとか萌え死ぬわあああ!!」

「わんわんわんわん/////」

「俺もああなりたいぜ!!!」

「無理」「死んで出直しなさい」「うんうん」

「かっこいいいいいいいいいい!!!!」


僕、“人参”と先輩にして相棒あいぼうの“大根”は只今ただいま

人気絶頂にんきぜっちょうのアイドルユニット『vegetableベジタブル』。

デビューしてからずっと人気はうなぎのぼり、デビューシングル【White or Redホワイト オア レッド】はめちゃくちゃ売れまくり、オリコンチャートの上位を数ヶ月占め続けたほど。

最近発売した初アルバム【VegetaBoyベジタボーイ】はすでにミリオンを超え、老若男女構わず、ペット、いや、生きている動物全てを虜にして支持を受けているアイドルなのだ。


そして、本日の衣装は思い切って “メイド服”である。

僕は猛反対もうはんたいしたのだが、大根先輩の一点張りいってんばで、結局けっきょく着るはめになってしまった。

そして、ライブは始まって最新の曲を披露したり、トークをしたりミニゲームをしたり…。

スケジュール通りの時間が過ぎ、ついに“あのコーナー”がやってくる。


「今日のライブに来てくれたみんな、ありがとう!」

「そんなお前たちに、褒美ほうびがある! 大根様が直々じきじきにくれてやるぞ!!!!」

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「なんと、今日の褒美は……採れたて産地直送さんちちょくそう!! メイドin北海道、新鮮しんせん夕張ゆうばりメロンだ!!」

「キャアアアアアアアア!!!欲しい~!」

「それだけじゃない! お値段の方は……今なら!1万円だ!!!今だけだぞ」

「キャアアアアアアアアア安い~~!!!」

「ほら、俺様が売ってやる。直筆じきひつサイン付きでな」

「ここに並んでね!!! 急がなくて、ちゃんと数はあるよ」


そう、僕たちがこの仕事をしている本当の目的もくてきは、客に野菜やさい果物くだもの特産品とくさんひんを買わせるため。


ファンは、僕達の事を人参だけに赤い天使てんし、大根先輩を白い堕天使だてんしなんて呼んでいるけど、アイドルになる前はただの売れすじに悩む農業家のうぎょうか息子むすこだった。

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