2.イダちゃんとおとうさん

イダちゃんのおとうさんは、どうやらいそがしい人らしい。

それでも毎年運動会には来ているみたいだ。ちゃんとイダちゃんのかっこいい姿を見に来ている。

それでも平日はやっぱり夜おそくまで帰ってこないし、休日もよくお仕事が入るから、なかなか会うことができないと、イダちゃんは言っていた。

「イダちゃんは、おとうさんのこと、好き?」って聞いてみると、

「好きだよ。」ってすぐ返ってくる。

女子の中には、もう、はんこうきみたいに、「うちのおとうさん、うざい。」って言っている子も多い中、イダちゃんは笑ってそう答えるのだ。

「忙しいけど、最近はよく、お休みの日に3人ででかけるんだ。遊園地とか。」

そうやって、嬉しそうに言っていた。

それを聞くと、周りの子たちは、「へえ、いいなあ。」ってうらやましがる。

「イダちゃんは、おとうさんと、仲がいいんだね。」

「そうだね、わりと仲、いい方かも。」


「でも、おかあさんとおとうさんは、どうなんだろ?」


「イダちゃんのおとうさんとおかあさん、仲悪いの?」

「よくわかんない。けど、前みたいに家族で出かけること、あんましなくなったかなあ。」

「へえ。」

「きょーいくほーしんのちがい、とかなんとか。」


へえー、とか、あーうちも最近けんか多いー、とか、みんな口々に適当なことを言う。それを聞いてイダちゃんは、

「まー、どこもそんなもんだよねえ。」

とけらけら笑っていた。

イダちゃん言い方おばさんくさーい、ねーそれよりさ、昨日のテレビ見たー?、あの人ちょーイケメンじゃなーい?、やばい次算数じゃーん、げーめんどーい。


さあ、算数の、用意をしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る