第15話 作家のアシスタント

「マリアさん、また、事後報告なんですが、書籍化作家さんの活動日記でアシスタント募集してたので警告メールをしておきました。記事はすぐに削除されたんで良かったんですが、さすがに、このサイトで求人してしまうのはアウトというか、ちゃんと、求人サイトに募集を出して欲しいですね」


 メガネ君はさらりと報告したが、マリアの目がきらりと光るのを見て不安になった。


「了解です。それは面白い発想ね。それ、いいかもしれないわね」


 坂本マリアはまた、良からぬことを考えているようだった。


「いや、マリアさん、作家のアシスタントはさすがにアウトですよ。完全にゴーストライターになりませんか?」


 『お嬢様は悪役令嬢』『聖徳太子の志能便しのび』のゴーストライティングに手を染めてしまっているメガネ君が言っても説得力はあまりないのだが。

 しかも、業務の一環ということで、アルバイト代を上乗せされていたので、裏バイトであるが、趣味と実益を兼ねていた。結構、美味しいかもしれない。


「え? メガネ君、やってるじゃない。どう、アルバイト代を支払うから私の作品も書いてみない? 新作のアイデアが浮かんできたので、そちらを書いてほしいのよ。最初からメガネ君が書いたら文体が変わったりしないからいいと思うのだけど」


 ついに言いやがった。

 凄い発想だよ。


「いや、そすがにそれはまずいですよ。それに、三作品も同時更新なんで、さすがにこれ以上は無理ですよ」


 正確には嘘である。『二―ト忍者の戦国転生記』『複垢捜査官 飛騨亜礼』も更新してるので、四作品である。


「そうかあ。さすがに無理だよね」


 マリアは残念そうな顔をしたが、あっさりと引き下がった。

 くるりと椅子を回して、パソコンに向かうとキーボードを打ち始める。

 何か嫌な予感がするが。


 そっと、背後からマリアのパソコンを覗いた。

 クラウドワーキングサイト『ライターズ』に求人広告を出していた。

 ライター募集と。


 見なかったことにしよう。


 そういう発想も無くないが、それでは自分の作品ではなくなってしまうような気がする。


 いっそ、原作 坂本マリア、ライティング メガネ君と分業体制にしてみてはと思う。

 と、良からぬ妄想に走るメガネ君であった。

  

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