川野流の中波放送
姫川真
第1回
皆さん初めまして、私は川野流と申します。以後お見知りおきを。
これをご覧にいなっているリスナーもとい、読者の皆様は今始まった『コレ』が『何の目的で』『誰と誰が』『何を』するのかよく分かっていないことでしょう。
長々と説明するのは少し面倒なので簡潔に、まずは『コレ』について。
始まってからここで、一四五文字目となった『コレ』は『川野流の中波放送』という音声無し、映像無しの文字だけのラジオ番組です。
と、台本には書いてあるのですが、文字だけでお送りするラジオを放送と言えるのでしょうか? それ以前にラジオの定義がこの番組は成立しているのでしょうか? まぁ、第1回からそのような疑問が浮かび上がりましたが、これから少しの間お付き合いください。
さて、見て頂ければわかるかと思います。文字だけでお送りしている『川野流の中波放送』はバックグラウンドミュージックも無ければ、オープニングトークとフリートークの間の音楽もありません。
現在こちらとしてはどうすることも出来ないので、リスナーの皆様が各々でお好きな音楽を流しながらご覧頂ければと思います。現在対策を『川野流の中波放送』制作委員会が模索中ですのでリスナーの皆様にはご迷惑をおかけしますがしばらくの間よろしくお願い致します。
台本に書かれた謝罪文を音読したところで、第1回記念の特別コーナーを始めたいと思います。タイトルは『川野流とは誰?』です。
性格上長々した説明は苦手なので簡潔に言いますと、私のプロフィール紹介です。以上です。
実にわかりやすい説明ですね。それでは早速自己紹介を始めたいのですが、実はオープニングトークの後でガラスの窓の外にいる大人から無駄に大きな箱と某有名辞書を渡されました。簡潔に言うと、箱の中に入っている数字のページに書かれている見出しから好きなものを一つ選んでそれに沿った自己紹介をして欲しいとのことです。
はっきり言って面倒くさいですが、仕方がないのでやるとしましょう。
「……」
ごめんなさい。ガラスの窓の外の大人から「無言はやめてくれ」とお達しが来ました。だったら一人くらい中に入って話し相手になってくれないでしょうか?
無理みたいですね。ちなみに、私が最初に引いた数は九五八でした。という事で九五八ページを開いてみると……『こうとう』から『こうなん』の欄みたいです。この中から一つ選びたいと思います。
無言が出来ないのは少し面倒ですね。えっと、それでは九五八ページ三段目後半の『購読』を選んで自己紹介をしたいと思います。
私、川野流は割と活字を読む方で、昔から学校帰りに書店に立ち寄っては週刊少年誌を立ち読みしたりそれこそ目についた小説を『購読』したりしています。実家には中学卒業までに自費で買った小説だけで二〇〇冊以上はあり、高校に進学してから住むことになった祖母の家にはアルバイトをして溜まった貯金を使って買った漆塗りの本棚に小説だけでなく漫画本や自叙伝、風水や受験で使った参考書なんかが飾るように置いてあります。
って、こんな話で面白いですかね? せめて、ガラスの窓の外の人たちは笑っておいてくださいよ。
ガラスの窓の外の大人が渋い顔で「もう一枚引こう」と言うのでもう一枚引きます。はいっ。引きました。
最初に言っておくと、見えていないからってズルはしていませんし、ガラスの窓の外の大人が仕込んだ訳でもありません。
番号は二〇〇三で二〇〇三ページは『とくかわ』から『とくしや』です。本当にただの偶然なので驚きを隠せませんが、折角起きた奇跡を無駄にしたくは無いので二〇〇三ページの一段目に載っている『特技』を選んで話をしたいと思います。
特技と言ってすぐに思い当たるような特技は持っていないと思うのですが、この番組のパーソナリティーに選ばれたという事は喋りが上手いと思ってもいいのでしょうか?
「……」
いや、喋ってくださいと言われても、窓の外の大人全員が私から視線を逸らしたら無言になりますよ。
ダメみたいなので他の事だと、少林寺拳法をかじっているとかどうですか? 良いですか。分かりました。
私ですね、五歳の時から少林寺拳法と言う護身術を習っています。一応、小学六年生の卒業前に初段を取らせて頂きました。
最近は所属こそしていますが、めっきり行かなくなったので技はうっすらとしか覚えていないので時間が空いた時にでも行けたらと思っています。
もう少しですか? そうですね。少林寺拳法あるあるかもしれないですけど、少林寺拳法って私が始めた頃はマイナーだったのか少林寺拳法の道場に向かっている時に知り合いとすれ違うと柔道とか空手に間違えられることが多かったです。これはあくまで私個人の見解ですが、最近は芸能人の方も少林寺拳法を習っていた方とか出てきて柔道や空手程ではないですけど有名になってきたと思います。もし、私の拙い説明で少林寺拳法に興味が湧いたリスナーの方がいれば是非お近くの少林寺拳法の道場に足を運んでみてはいかがでしょうか?
個人的な宣伝が入ったところで第1回記念の特別コーナー『川野流とは誰?』のコーナーでした。
先ほどのコーナーで私がどのような人物なのか全く分からなかったと思いますが、今後は『川野流の中波放送』宛にメールを頂ければオープニングトークやフリートークでお応えする機会があるかもしれません。
そして、メッセージと言う言葉が出てきたところで第2回から本格始動予定のリスナー参加型コーナーの紹介です。
その名も『ゲストを作り出せ!』
まぁ、何ともありきたりなネーミングセンスですが意味不明なコーナーだと思うので簡潔に説明しますと、この番組には川野流しかいない。川野流が一人で喋り倒すのにも限界があるはず。と思ったガラスの窓の外の大人の気遣いで生まれたコーナーです。
今回は第1回という事でメッセージの方は全くないのでガラスの窓の外の大人から頂いたハガキを読みます。参加希望のリスナーさんはこれを例としてこのコーナーに応募してください。
それでは、ペンネーム『ガラスの窓の外の大人1さん』の作り出したゲストです。
『氏名:姫路涼 性別:女 一人称:僕 誕生日:八月二日生まれ 年齢:一六歳 職業:学生 性格:おしとやか』
「『ゲストを作り出せ!』初ゲスト『ガラスの窓の外の大人1さん』の作り出した、姫路涼さんにお越しいただきました」
「初めまして、僕は姫路涼と言います。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。初対面で馴れ馴れしいかもしれませんが、涼と言う名前は涼しげで綺麗な名前ですね」
「ありがとうございます。お父さんが付けてくれたので大事な名前です」
「涼という事は、春か秋生まれですか?」
「八月の二日が誕生日です。僕が生まれた日は夏にしては涼しい風が吹いていた心地の良い日だったそうです」
「生まれた日の事を忘れないような名前ですか。素敵ですね」
「お父さんが聞いたらきっと喜ぶと思います」
「そう言えば、姫路さんは学生さんという事ですが」
「はい、高校一年生です」
「高校一年生にしては大人しそうな表情の中にも凛とした瞳が可憐で大人っぽいですね」
「そんなに褒められたことがないので恥ずかしいです」
「姫路さんは綺麗なのだから自分に自信を持っていいと思います」
「そう言われると照れちゃいます」
「顔を赤く染めて恥じらう姫路さんとはもう少しお話をしたい所ですがそろそろお別れのお時間になってしまいました。姫路さん最後に『ガラスの窓の外の大人1さん』に一言お願いします」
「今回はコーナー説明という事でほんの短い間しか喋れませんでしたけど、またゲストとして私を生み出してくれたらうれしいです」
「『ゲストを作り出せ!』のゲスト姫路涼さんでした。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
と、今回は短くまとめましたがこのようにリスナーさんの想像力で生み出されたゲストと私が僅かな時間、話をするコーナーとなっています。応募の際は、
『ペンネーム ゲストの名前 性別 一人称 誕生日 年齢 備考』を明記の上でご応募ください。応募多数の場合は抽選となる可能性があるので予めご了承ください。普通のメッセージもお待ちしています。普通のメッセージの場合もペンネームの明記をお願いします。
住所、電話番号など、個人情報については犯罪防止の為ご明記にならないようお願い致します。
さて、『川野流の中波放送』第1回目の放送もそろそろお別れのお時間となってしまいました。今までに無いラジオの概念を超えた文字だけのラジオですが、第2回以降もご覧ください。
『川野流の中波放送』第2回でお会いしましょう。お相手は川野流でした。
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