涼宮ハルヒとの共鳴(未完結抑止版)

風祭繍

プロローグ

あれもこれも未体験 いつだってトツゼン

 サンタクロースをいつまで信じていたか、ということを聞かれたとしたら、私は、はっきりと確信をもって言える。今でも信じている、と。だって、いつも私の傍にいるからさ。

 そんなことを考えながら、私は坂道を歩いていた。

 本日から私は高校生になる。この坂道の上に建つ高等学校へ向かっている。ふと立ち止まり、空を見て呟いた。

「坂の上の雲…… 登っていけばたどり着けるのか…… そこに何かあるのか、それとも……」

 その時、背後から声を掛けられた。

「よう。佐々木」

 振り返って答える。

「やあ。キョン」

 私が答えた相手、彼こそが、私の信じるサンタクロースなのだ。私たちは並んで歩き出した。

「なあ、お前。今更だけど、何でこの学校にしたんだ? お前なら県内どころか日本でも指折りの進学校に行ったって十分やっていけるはずだぜ?」

「……まあ、精霊の導きによって、かな?」

「また、それか……」

 私たちは、同じ中学の同級生だった。キョンは学業において平均的な成績であったが、私は一年生の中盤あたりから、ちょっとしたコツを掴んだもので成績は結構上位だったんだ。でも、勉強に関しては大して周りのみんなと変わらなかったと思うんだけど。

 変わっていたとすれば、そのころからファンタジー系の言葉を呟き、何もないところを見つめたり、傍目には『おかしな人』と移ってしまうような行動をとったりしていたね。でも、これって自覚しているってことは、まだ本気じゃないんだろうけどね。でも、私の周りにいる人々は、私のその様子がすごく嫌いってわけでは無いように見えたんだ。

「俺はもう、そういうのとは縁が切れちまったよ。宇宙人やら未来人やら超能力者やら、ゲームやアニメのヒーローは現れてくれないもんなのさ」

「一度できた縁というものは、なかなか切れないものなんだよ。君はきっと、何かに気付いていないだけなのさ。そして、私もね」

「……何にだ?」

「……何にだろうね?」

「……はぁ」

 ごめんね。私も良く分かっていないものだから、適当にごまかすしか無いんだ。とにかく進んでいこう。坂道を上り、私たちは学校の門をくぐって自分たちの教室へ向かった。

「しかし、中学で三年間同じクラスだったのに、高校でも同じとはな。相当な確立じゃないか、これ」

「それはきっと、私がそれを望んだから、かな? でも、それだけじゃないのかも」

「また、そんな……」

 私達は席に着いた。キョンの席は私の左前方。その後、私の隣、キョンの後ろの席に一人の生徒が座った。

「!」

 その生徒の姿を見た瞬間、私は雷に打たれたような勢いで立ち上がった。何だか良く分からないが、体が動いてしまった。そして頭が後から回り出す。体のあちこちでビリビリと何かが疼き、細胞が動いているのを感じる。そして、唐突に理解した。何を理解したのか分からないけど、なんだか分かった。


「なんだ!? どうした!?」キョンが驚いて立ち上がる。

「……? ……何なの?」その生徒も戸惑いながら、私に問いかける。


 彼女を見つめながら、私は口を動かす。うまく口が回らない。そもそも声に出すつもりも無かったのに。

「……あなたが……? ようやく、来てくれたの……? それとも、私がたどり着いたのか……?」

「「???」」

 キョンとその生徒はますます怪訝な表情を浮かべる。その数秒後、私は平静を取り戻した。そして、彼女の目を真っすぐ見つめて言った。

「佐々木真実(ささき まこと)です。よろしく。私は、ただの人間にこそ興味があるんだ」

「……は?」

 彼女は心底戸惑い、なぜ自分が戸惑っているのかわからない、そんな堂々巡りが頭の中で起こっていることを示すような表情して、口を半開きにしたまましばらく固まっていた。

 「……涼宮ハルヒです。……よろしく、できそうもないわね」

 私たちは、しばらく睨みあった後、視線をそらすことなく握手を交わした。きっとキョンは今こんな風に考えているんだろうな。『なんなんだ、こいつら』って。

 うん、私にも分からない。

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