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 蔵人さん。


 一般生徒、みなさん基準では『怖い人』かもしれないけど、わたしにとってはCards soldierの希望のヒトだ。


 わたしは、にこって笑うと、蔵人さんの手を取った。


 途端に、周りから『おお~~ライアンハートに触った!』とか『すげー、命しらず~』とか声が聞こえたけど、無視!


 絶対みんな誤解してるから!


「音楽室へ行きましょう!

 早く先輩の歌が聞きたいです!!」


「「「ライアンハートが歌ぁ!!?」」」


 なんか、周りからビックリしたような声が響いて来たけれど、知らないもんねっ!


 怖い人、蔵人さんが歌を歌うことが、皆信じられないみたい。


 皆が驚いて思考停止している間にわたしは、蔵人さんの手を握ったまま、旧校舎の第三音楽準備室に向かって走った。


 ……と!


 準備室の前まで来て、わたし、重要なコトに気がついた。


 カギ!


 準備室には、案外高価そうな楽器が置いてあったし、普段はカギがかかっているんじゃないかな?


 わたし、神無崎さんの権限で第三音楽準備室に入って良いことになっているものの。


 軽音部員でも、Cards soldierのメンバーでもないから、合いカギなんて持ってない。


 宗樹と神無崎さんには追い抜かされていない以上、まだ学校に来てないみたいだし。


 Cards soldierの誰かが朝練で早く来れば、音楽準備室は開いてるかもしれないけれど。


 残りのヒトって、わたしはまだ会ったことのない軽音部部長さん、だよね。


 ……どんなヒトかな?


 ピアノ貸してって言ったら、笑って良いよって応えてくれたらいいな。


 と、思いながら行ったんだけど、準備室の前は、とっても静かだった。


 完璧に防音されて無い限り、中には誰も居ない……かな?


 一番最初に、そっと扉を開けてみる……やっぱりカギがかかってて、開かない。


 次に、扉を叩いてみる……反応なし。


 あーーあ。


 やっぱり思いついたこと、いきなり行動に移しても、無理だよね。


 宗樹だったら、そつなくこなすんだろうけど、な。


 そう息を吐いて手をみれば、わたしってば、まだ蔵人さんの手を握り締めてる!


「わあ、ずっと握っててごめんなさい!」


 ぱ、と手を離したら、蔵人さんは天使みたいに、はにかむように笑った。

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