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「外にいる先輩達って、別にわたしをいじめるために集まっているわけじゃないもん。
わたしがどれか、一つか二つの部活に所属して、無理な所は謝れば……ちゃんと収まるよ、ね?
だから、わたし、逃げないで話し合ってみるから……」
わたしの言葉に、今まで自分の手をじっと眺めてた宗樹が、ゆっくり顔をあげ……ため息をついた。
「悪りぃ、変なコトを言って。
今言ったコトは、ウソだ。
一つか、二つの部活に所属、って。
それだけじゃ、残った所から不満が出てくるんじゃねぇか?
西園寺を追いかけてる部活のリストを作ろう。
それを元に、俺が良い具合に時間調整してやる」
うん。
本当はそれが一番良い形だって、わたしも判ってた。
でも、宗樹にこれ以上迷惑をかけることなんて、出来なくて……!
わたし、さっきよりは大分マシに笑って、手を振った。
「いいって、自分でやってみる。
だって、わたし。
特別扱いがイヤで、この高校に来たんだもん!」
「おい、待て……!」
宗樹が伸ばした手を振り切るようにして、わたしは廊下に飛び出した。
……けれども。
結局、宗樹と井上さんを振り切って、勇ましく進めたのは、旧校舎を出た所までだったんだ。
新校舎と繋がる渡り廊下の上で、とうとう、わたし取り囲まれちゃった。
な……なんか、朝より人数増えてない?
たじたじと、後ろに後差ずれば、ごん、と壁にぶつかってさらにヒトの輪が狭まってくる。
こっちに向かってやって来るヒトたちは、みんなにこにこと笑ってたけど……すごく怖い。
わたしの相手ばかりじゃなく、一人、一人が他の部活のヒトに出し抜かれまいと、必死なんだ。
この緊張感だけでも、死にそう。
しかも、集まってる集団に打ち合わせも、司会も無く。
皆が口々に勝手に希望を言ってくるから、あっという間に収拾がつかなくなった。
「西園寺さん」
「西園寺さん!」
一杯名前を呼ばれて、是非、ウチの部に来て、なんてお願いされて。
でもわたし、何にも出来なくて……っ!
誰の言葉にもこたえられずに、目をぎゅっとつぶった時だった。
すぐ近くで、がおんっ! っていう獣の咆哮を聞いたような気がした。
「おら! 西園寺理紗はオレサマが預かったって、言ったはずだよな!?
聞けねぇヤツは、マジで潰すぞ!」
聞き覚えのある、元気な声にそっと片目を開けると……
そこに、神無崎さんがいた。
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