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真麻まあさ! ここでお嬢さ……ヒトを投げるな!!

 危ないじゃないか!」


 宗樹の地の底から這い出るような、不機嫌マックスの低い声を出した。


 確かにここは『旧校舎の準備室』って言うには、広いし、何よりも、Cards soldierのモノらしきギターの類いや、その他の楽器。


 そして、チューニング用らしい、アップライトのピアノが壁際に置いてあって、雑然としてる。


 確かに、あのとんがってドラムセットに放り込まれたら、大けがをするかもしれない。


 だけども、井上さんは、きゃらっと笑う。


「大丈夫、クローバー・ジャックが絶対受け止めてくれると思ったもの~~

 なんせ、二人はラブラブゥ~~?

 ジャックも大好きな西園寺さんを抱きしめる理由が出来ていいかなぁ、って!」


「ふざけんな! 俺は西園寺なんて嫌いだ!

 ただ、役目を果たしているだけなんだからな!」


 ……え?


 井上さんの言葉に、反射的に出て来た言葉、みたいだったけれど!


 こういう、とっさの時の言葉って……本音、ってこと多いよね?


 宗樹の言葉を聞いて、わたし胸が押しつぶされるかと思った。


 は……ははは。


 お役目って! いや、全くその通り以外のナニモノでもないんだけど……!


 西園寺、嫌いだって、そりゃあ……ね。


 この、短い期間だけど宗樹を見れば、良く判る。


 彼、小さな時から、苦労してるんじゃないかな、って。


 ピアノや、バイクや、マネージメントの他にも、きっとまだ西園寺の執事になるためには、きっと、習わなくちゃいけないことがたくさんあって。


 自分の自由時間を削って、腕や才能を磨いても、その全てを西園寺の主人に奪われる。


 そんな中『なんにも知らない』ことになっている、自由な高校生活に、未来の主人になるはずのわたしが来ては……いけなかったんだ。


 本人も、軽音部には来るな、って散々言ってたじゃないの!


 ここに、わたしがいちゃ、宗樹の邪魔だ……!


 ますます切なく、痛んで来る胸を抱え、わたしはなんとか笑って抱えられた宗樹の腕から逃げた。


「藤原先輩、わたしを受け止めてくれて、ありがとう。

 でも、もう、どっか行くね?」


「ちょっ……!

 行くって、どこに……!?

 まだ、外にはヒトが一杯いるよ?

 からかい過ぎちゃったなら、ごめんね?

 昼休みの間は、一緒にいようよ」


 井上さんは、そう言ってくれたけど、わたしはごめんね、って頭を下げた。

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