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そんな、わたしの言葉に、井上さんはぱぁっと、周りが明るくなるような笑顔を見せた。
「もちろん! 軽音部、どころかばっちり、しっかり!
Cards soldierのマネージャーになるコトが出来ました~~!」
「早っ! それはすごいね。
神無崎さん、即決だったんだ」
ま、まぁ、あのダイヤモンド・キングが何かをずーっと悩んでいる姿って、想像つかないけれど……!
感心しているわたしに、井上さんは、笑顔の追い打ちをかけた。
「えへへへ~~
普通に入れて、って言っても絶対ダメだって判ってたから、結局『裏技』も使っちゃったんだけどね?」
「……裏技……」
「きのう言ってた、身内枠ってヤツ!
あははは~~ やっぱ、ズルはいけないよね。
一瞬、キングとジャックの二人同時に引かれちゃった~~
でも、キングは歓迎してくれたし、ジャックは……なんとか承諾してくれたかな?
ちょっと、嫌われちゃったかもしれないけど……」
でも今、大事な彼女さんを黙って預けてくれたんだから、ギリギリセーフよね?
お願い、そう言って~~
なんて、軽く楽しげに笑うのを、わたし複雑な気持ちで眺めてた。
井上さん。本当は、とてもいいヒト、なんだけどなぁ……
……………………
「ねぇ、西園寺さん!
お昼は、一緒に第三音楽室準備室で食べない?」
朝のあり得ない部活勧誘騒ぎを乗り越え、午前中の授業がなんとか終わったお昼休み。
そう、井上さんに言われて、わたしは首を傾げた。
「……なんで?」
「だって、ホラ!
普通に教室とか、校庭の隅じゃ無理でしょ、やっぱ!」
そう、言われて、周りを見渡せば……確かに!
廊下に一杯ヒトが集まり、扉からなだれ込まん勢いでこっち見てる。
うう。
このヒトたち、わたしに部活を勧誘したい先輩がた、ってコトだよね?
朝、生徒会長な神無崎さんに『無理な勧誘をするな』って釘を刺されたから、今まで、直接教室には入って来なかったけれど……!
このままぼーっとしてたら、クラスの皆に迷惑だろうなぁ、って思う。
「……うん。でも、なんで第三音楽室、じゃなく準備室……?」
ウチの音楽室は、三つある。
……とはいえ、授業に使っている音楽室は、新校舎にある第一、と第二音楽室だけだけど、ね。
第三音楽室は旧校舎にあるんだ。
旧校舎は昔、通っている生徒が多かった時には普通に使っていた校舎だけど、今は、直接授業では入らない。
主に、教室を使う文科系クラブの活動部屋と、スポーツ系も含めた部室が詰まっている場所で……
ん~~、と考えていると、井上さんが笑って言った。
「もちろん、第三音楽室を使っているクラブは、軽音部だからよ」
「えっ?」
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