うそつき執事のお仕事
51 うそつき執事のお仕事
かたん ことん
かたん ことん
柔らかい音を響かせ電車が、走る。
随分と長い間。
事故の時に名乗り出せなかったことと、Cards soldierのコトで悩んでいたのが、色々話せて気が抜けたらしい。
隣に座った宗樹が、居眠りしてる。
そして、わたし自身もまた、微かに触れる宗樹があったかくて気持ち良く。
今日一日の目まぐるしい出来ごとにも疲れて、うとうととしてた。
かたん、と電車が音を立てるたび、宗樹の少し長めの茶色い髪がさらり、と揺れる。
長いまつげに縁どられ、閉じたまぶたは穏やかで。
眺める方も、ね……む……く………
くぅ……
わたしも、宗樹の様子にほっとして、このまま深く眠ってしまうかと思った。
ふっ……と、完全に意識が遠のきかけた、その時。
はっ、と目が覚めた宗樹が小さく『うぁ』と声をあげた。
「ど……どうしたの!?」
一気に目が覚めたわたしに、宗樹が悪りぃ、と息をついた。
「……降りる駅を寝過した。
ここから先は単線だから、今の時間、乗ってる電車が終点まで行って帰って来ないと、JRの乗り換え駅までつかない。
遅くなるぞ、どうする?
次の駅で降りて迎えの車を呼んだ方が多分、一番速く家に着くが」
「う……ん。宗樹はどうするの?」
「駅で迎えが来るまで、一緒に待つ。
ん、で来たらお嬢さんを車に乗せて、俺は電車で帰る」
「一緒に車で帰らないの!?」
「間違えるな。
俺はお嬢さんの『オトモダチ』じゃねえ。
一緒に車に乗る資格がない」
「なによ! 資格って!?」
家までの最寄りの駅は、一緒なんだから!
ついでに乗って行けばいいじゃない。つてそう、何度も誘ったのに、宗樹ってば、本当に頑固! 石頭!
絶対に、車に乗らないって言うんだもん!
だからわたし、ぷう、と頬を膨らませて聞いた。
「遅くなるって、どれくらい?」
その時間に多分、爺が心配するだろうなぁ、とは思ったけれど、ま、いいや。
「じゃぁ、わたしも、電車で帰る!」
そう言い張れば、宗樹の目が丸くなった。
「ちょ……っ! 勘弁してくれ。
俺がついてて、そんなに遅くなったことがバレたら、クソジジィに殺される」
「わたしの目標は、西園寺の手助けなしで過ごすこと、だもんね~~
別に車なんて呼ばなくて良いもん」
とか言って、思い切り宗樹使ってるけど、そこんとこ、無視!
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