あとがきのようなもの

はじまりはアニメのバイブルでした

 最後までお読みいただき、ありがとうございまず。

 いろいろと書けるのがネット小説だから、少しだけあとがきっぽいことも書かせてください。


『ホンファの一日』は、もう10年以上も前に書いた『メタル・ボーラ―』という少年冒険ものの、アニメのバイブルが下地にあります。

 実は『メタル・ボーラ―』は、『星のカーヴィ』を制作した、アウン・エンターテインメントというアニメスタジオの、次回作候補の1つとして書いたものでした。

 因みにバイブルと言うのはアニメの背景設定や登場人物設定をしたうえで、最低1クール(13話分)のプロットを添えたものになります。


『メタル・ボーラ―』は残念ながら、作品として世に出ることはありませんでした。そして筆者のPCの中で、永い眠りにつきました。

 ずっと眠っていた『メタル・ボーラ―』が目を覚ましたのは、偶然の出来事が重なり合った結果です。


 アウンの精鋭スタッフを引き継いだ『ダイナメソッド』という会社が、恐竜をモチーフにした企画(アニメではない)を立ち上げようとした時のこと。

 『メタル・ボーラ―』のバイブルもその際、再び業界関係者の目に触れる機会を得たのです。


 なんと驚くべきことに、その時『メタル・ボーラ―』は独り歩きを始めました。そして世界中の誰もが知っている、ハリウッドの某監督と某監督に、企画を持ち込もうと言われるまでに話が発展したんです。


 仕掛け人は両監督と旧知の仲。2人がまだそれほど売れていない頃からご存じだとの事で、プライベート写真も見せてもらいました。


 しかし結局、その話は実現しませんでした。

 ハリウッドでプレゼンをするためには、その行為自体にも結構な経費が必要となるからです。

 アメリカンドリームは、そう簡単には転がっていないという事ですね。


 さて、もう一度バイブルは眠りに入るのか……

 いや、まてまて、折角目を覚ましたんだから、何とか形にできないか?

 でも、他人の力を借りるわけにはいかないしな……


 そうだ、自分一人で完成できる唯一の方法がある――

 小説ならば――


 そこで書き始めたのが本作です。


 ここで告白しますが、実は『ホンファの一日』は、『メタル・ボーラ―』のバイブル約40ページのうち、最初の1ページだけを、しかもその1ページの中でも、上からたった1/3の部分だけを書いたに過ぎません。


 なぜそんなことになるのか……


 アニメの世界には、書く側にとって、大変に都合のいい不文律があります。

『あるところに、世界征服を企む悪の結社があった』

 僅かこの1文を書くだけで、そこには何の疑いも無く、悪辣で、強大な組織が設定できてしまうのです。

 おとぎばなしの、『むかしむかしあるところに~』と同じお約束です。


 しかしこの作法は、小説には全く通用しません。

 実際に、自分で出だしを書いてみて、思わず苦笑してしまいました。


 世界征服を企むほどの敵役ならば、それにふさわしい理由も、組織のヒエラルキーも、悪事を行う資金源も説明しなければ、はなはだしく未熟な作品にしかなりません。

 だからバイブルのほんのさわりの、敵役の設定部分を書くだけで、今回のように、長編小説1本を要してしまうわけです。


『ホンファの一日』の中では、未解決のままで残したキーワードが幾つかあります。例えば『ヘス』、『エモーションアンプ』、『ファゼンタ』がそうです。

 これらについても同じ理由で、小説に表現しようとすると、最低でもそれぞれに長編小説が必要になるでしょう。

 実は既に、そのうちの1本は書き終えています。


 細々なことを言うと、本作では未回収の伏線が幾つか残っているのですが、それも続編を前提にして、敢てそのままで残しました。


 今、本当に一番書きたい物語は、少年冒険ものとしての『メタルボーラ―』なのですが、それを書き始められるのは、一体いつになるのでしょう?

 13話分のプロットは、もうとっくに出来ているんですけどね。


 それでは、いつかまた、続きを読んでいただけることを願っています。


 高栖匡躬

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