建国

一 対面

 歴史家であった私ウッカ・リーはこのアダムという主君が国中を回って部下を集めているときに出会い、「自分という人物が生きた足跡、そしてこれより建国する予定の国の歴史を綴ってもらいたい」との要望を受け、それを快諾した。

 デップリ王国の歴史をただ綴るよりもよほど面白そうだったのである。

 あのとき私と対面し、アダムと名乗った彼は腰の剣を抜いた。そこには虹色に光る「かりかりばー」の文字があり、その光は私がこの方の部下となるのは既に定められていたことであったのだ、と私に悟らせた。こうして私はツギハギやプリンプリン、その他大勢と共にアダム殿の部下となったのである。

「私という稀有な人材が成し遂げる偉業を書き残す人物が必要なのだ」

 こう言ってのけた彼は、もはや感動すら覚えるほどに自分を大人物だと信じて疑わなかった。そして実際に大人物であり、確かに王の器であった。一生を捧げるに相応しい相手だと判断した私はアダム殿の旅にひたすら付き添い、食事中からトイレの中までその行動を逐一記録し、長大なる伝記の作成に挑もうとしていたのである。したがってこの頃の「ガニマタ王国史」の仮題は「真の王アダムの生涯」というものだったのである。それが如何にして変更になったかを語るには、まだ早い。

 デップリ王国を飛び出した我らが常春の地、つまり後にガニマタ王国の国土となる場所へと到達するのはまだ先の話。そして、そこにたどり着いた我らが立派な国を築き上げるのも、さらにその先の話。その頃になってようやく私の肩書きが「王国史編纂係」となる。今はまだ、しがない歴史家である。

 さあ、今しばらくお付き合い願おう。

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