ドールストーリー

桜井 智也

プロログ「涙は止まることはない」



 


 


―― 174年前――


 


 


ある戦争が起こった。


その戦争は人形ドールを兵に使った戦争で指揮をっていたのはこのグリフォンを象徴としたグリフォン王国の王様だった。


王様はただ勝つだけのためにただ命令を聞いて、ただ、感情もない人形を兵として使った。外見は人形が美しく可憐かれんに動いているように見える。


それが人形なのだ。


中身は精密なロボットだが、外見は美しく、綺麗な人形である。


感情がないのが、当たり前なのだ。


そんな人形達は強制な奴もいれば、ただ殺人用に作られた人形が戦っている物もいた。その戦争は人形戦争と人は言っていた。


この世界は、人形のある世界。


中には珍しい人形も面白い人形、怖い人形……。


他にも色々な人形を町から集めて戦わされてしまったのだ。

 しかし、一体だけ他のどの人形より、すぐれた人形がいた。


 


『No.0201』


 


その人形だけは目に涙を流して戦っていたと言う。



 


 


それから現代に還る。


 


戦争は終わり、街などが優雅ゆうがに暮らすようになった。


荷車や馬車が走っている。


道路も石で覆われて、綺麗きれいに整えられている。


大きなグリフォン王国の中にある、大きな都市には、グリフォンセントラルシティーに立派な城が川に囲まれて建っていた。


この城には王様が住んでいて、この城なら都市全体を眺められそうなほど大きく、高い所に立っていた。その城で、王様の命令で、戦争で生き残った人形の一体だけが、液体カプセルの中で保存されていた。



ボコッ……ボッココ……


液体カプセルの中の空気が逃げるような鈍い音がする。


そのカプセルの中にいたのは、髪色が炎のように赤く透き通った長い髪と真っ赤なリボンを身につけている女だった。


およそ十九歳の身体からだをしていて、ある程度の健康そうな肌をしている。


顔も綺麗に整っていて美人だった。程よい胸とスタイルがバランスよい感じだ。


大人しそうな感じもあるが明るく、はしゃいでいても不思議な感じはしない。


まるで、生気のある人間でも不思議ではなかった。


その彼女を花で例えるとマーガレットの花と言うのが相応ふさしい。


そのとき、保存されている部屋に入って来たのは警備員だった。

「本当に不気味だぜ。なんで王様はこんなものを保存しとけって言ったんだろうな。ここにきたら毎回早く代わって欲しいと思うぜ。こんなところ、入りたくもないってのによ」


警備の男がブツブツと独りで呟いた。



――私は、このままでいいのだろうか……――


「ハァ……。夕飯を食べ始めよう」

警備の男はその人形の前を通る。


地下室で保存されているカプセルは彼女のカプセルがただ一つ保存されていた。


他は何もない部屋でただ一つ保存されている彼女。

「なんか、可哀想かわいそうでもあるんだけどな……。名前がこんな『No.0201』って質素な名前しかないなんてな……」


男が『No.0201』を見た時だった。


 


――私は、どうして、こんなここで立ち止まっている……!?――


突然のことだった。


『No.0201』の髪色と同じ透き通った神々しい炎の色をした目が突然に開らいたのだ。

「う、うわあぁぁぁ!」

 男は目の前で突然起こった出来事に理解が出来ないまま、震えながらピストルを取ろうとした。


『No.0201』はカプセルの硝子ガラスと体についていた小型機を取り壊した。


カプセルの割れたところから、にごったドロドロとした液体が出てくる。

 『No.0201』は無言のままカプセルから出てくる。


『No.0201』はビッショリと濡れていて、赤いリボンが水分を含んでしぼんでいる。


可愛らしい赤と白とピンク色のあざやかなドレスはカプセルから出たことで液体が床に滴っている。だが、目覚めた彼女は不自然なほどに大人びていた。

「と、止まれ! じっとしていろ!」

 警備の男は警報機へと、ジリジリと近づく。

「…………」


『No.0201』は手首や足を動かし、軽く体を捻って、軽く頷く。五体満足かどうかを確かめているのだ。


『No.0201』は周りを見た。すると、目の前に人の存在に気付いた。

「自分勝手なのは承知の上ですが、眠ってください……」

 『No.0201』は男へと近づく。この人形の娘は申し訳なさそうな顔をして近づいてくる。

「く、来るなーー!」

 男は動揺し、ピストルを激しく乱射する。

 『No.0201』はピストルを避けずにゆっくり近づく。『No.0201』の身体にピストルの弾がかすり、服が破れる。しかし、一発だけ左腕の関節に当たり、ピクリとも動かなくなった。


「へ、へ! どんなもんだ……」


言い終わらないうちに男は倒れた。

「すみません、しばらく寝っていてください……」

 男は、自分も気づかぬうちに、『No.0201』に腹部に強烈な一撃によって気絶させられた。


だが、さっき押しそうになっていた警報機は、男が気絶してしまい、圧し掛かってしまう。と同時に警報機は鳴ってしまった。


出入り口に沢山の兵士が警報を聞きつけて『No.0201』に銃を構えて狙う。


「そこの者、止まれ!」


次々と兵が入ってくる。


「仕方ない……。強行突破する!!」


『No.0201』は気絶している男から二丁のピストルを手繰たくり、構えて走って、兵に向って行く。

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