■エピローグ:銀河帝国首都アルカイックにて
「……報告は以上です」
アイディス中佐は情報省最高実践能力者の前に立っていた。
今回のプロジェクトではいくつかの問題が生じ、普段の落ち着いたネットランナー精査とは状況が異なっていた。
中佐の表情はいつになく緊張していた。
「行動データは全て追っていた。貴官の任務遂行に問題は無い」
最敬礼。そして去っていくアイディス。
◆
「これで全部か……」
「とても楽しそうですね。
情報省最高実践能力者こと、エナ・リーヴァン将軍の傍で一緒に報告を聞いていた男性が口を開いた。
「わかるか」
「一番のお気に入りの妹君、ですね?」
「ああ、実に面白い」
エナは極小さく微笑んだ。
ここに
無感情、無表情、完璧なプログラムを作成し、標的のプログラムを完膚なきまでに破壊する能力を持つレナ6に、マザーコンピューターはなぜか『辺境の落ちこぼれ』分類のドクターをマッチングさせた。
マザーの計算結果に疑問の余地はないはず……だが、マッチング結果を最初に見たあのとき、さすがの
「落ちこぼれと組むハンデがレナ6を成長させたのか、この落ちこぼれが実は分類不能な異才なのか……いずれにしても、今後が楽しみだ」
「これから彼らがどう成長するのか……楽しみに待つまでもなく、将軍なら予想がおつきになるのでは?」
情報省最高実践能力者は銀河帝国のありとあらゆるコンピュータを強制的に支配下におく権限が与えられている。
その気になれば、銀河中のコンピュータに超高度な予測計算をさせることも可能なのだ。
「精度が高いとは言え、予測はあくまで予測でしかない。全ての未来を予め正しく計算出来るのなら、精査も何も必要なかろう」
「失礼致しました」
構わない、とエナは軽く手を振る。
それにしても……。
「同じロットなのに、感情にかなり個体差が出来たものだな」
今回のプロジェクトは同じロットで生産した妹達二〇人について同じ構成のグループを作り、四つの惑星で同じ任務を行わせた。
当然惑星ごとに地形や建物に差異はあるが、些細なノイズにもならない。結果には影響していないだろう。
「次は実戦ですね」
「そうだな……」
――『エスト』。
銀河中の人々からそう讃えられる最高級のネットランナーは、己の脳に保管した妹達の行動データを何度も精査し、そして極小さく微笑んだ。
「今後どの様な反応が起こるのか……楽しみだ」
(惑星ヘカテ編 終)
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