マツリカの時

梶原ユミ

序章

山がざわめいた気がした。

立ち止まり耳を澄ましてみたが、鳥たちは特に騒いでいない。

木々の間から仰ぎ見ても青空が見えるだけで、さしずめ天気が変わるようでもなさそうだ。

それでも先ほど感じたざわめきのせいで、少し胸がどきどきしている。

アケビはまだ固く、山芋も小さかった。あまり収穫が無かったので、もう少し奥まで行ってみようと思っていたが、

「こんな時は山の神様の機嫌が悪い時だから深入りしちゃいけねぇっておっ父が言っていたっけ」

そうひとりごちたおふきは、背負子を揺すって担ぎ直し、山を降りだした。

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