第4話 バルの執行役員達

バルの執行役員達


ある金曜日の夜、いつもより少し早めにバルにいくと、L字のカウンターに雑居ビルの主たちが勢ぞろい、、、店長ヨッシーを囲みながら楽しそうに酒を飲んでいる。僕は避けるように窓際のカウンターへ。しばらくするとヨッシーが注文を取りに近づいてきて「カウンター空いてますよ」とお誘いを受けるが遠慮する。「遠慮せずどうぞ」とヨッシーが優しく迫ってくるので、遠慮がちにカウンターの端へ移動する。

するとすかさずシゲさんが「それでは、バル、執行役員が揃ったところで、乾杯!」と。いやいや、僕は常連と言ってもまだまだなので、、と恐縮しつつも、裏社会の猛者達とカウンターに並ぶのは、肩書き以上にもてはやされたみたいでまんざらでもない。この高揚感で酔いの廻りが速くなる。


L字のカウンターでは、執行役員達の会話が弾んでいるが、どうも僕の妄想を掻き立てる言葉が飛び交っていて、まるで妄想が現実化しているような錯覚すら覚える。


○ナオミさん(櫂の会)

「悪い女は、私の目をまっすぐ見れないの」

→ナオミさんは、新橋の風俗、キャバクラ、ウエイトレス、マッサージ、、ありとあらゆる接客業で働く女達の総元締め。新橋で働く女はナオミさんが決める。


○イムラさん(あなたの話)

「人は自分自身を語りながら、自分の内面と向き合うのよ」

→イムラさんは、新橋で迷える者に、自分自身の物語を語らせ、心の底にたまる濁りをきれいにしてくれる。イムラさんのもとでどん底から息を吹き返した者も少なくない。


○シゲさん(文字なし)

「ひとでなし以外は消さないよ」

→シゲさんは、新橋における暴力団の活動を未然に防ぐ組織のリーダー。暴力による解決は望まないが、消さなければならない状況に陥れば、消すことも辞さない。看板には昔、ひとでなしの文字が刻まれていた。


○中尾さん(クリーニング商会)

「最近は物騒な事件がなくて助かりますよ」

→中尾さんは、血でまみれた衣装から、死体まで、あらゆるトラブルの痕跡を抹消するプロ中のプロ。


言葉の断片をつなぎ合わせて新橋の世界を妄想していると、あの雑居ビルの1階のカーテンの向こうが気になりはじめた。僕は現実と妄想の狭間でとんでもないことを企ててしまう、、

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る