第17話 ハイリの歌声
谷内くんは力尽き、仰向けのままハイリ星の夜空を見上げた。この広い大宇宙に放り出されると、自分の命があまりに小さく思えて動けなかった。このまま死ぬのかと思ったその時、風の音すら聞こえない静まりかえった森の中から、森が夜空に語りかけるように、懐かしい女性の声が聞こえた、、、
私の名は、ハイリ、、、、、
続いてその歌声が森に沁み込むように広がり、谷内くんの心にもかろうじて届いた、、、
黙っていてもそのままにしておいて
話さなくても話したくないわけじゃないの
もっとしっかり自分の声を聞いているの
本当の声を聞き取れなくて焦っているの
お母さんが教えてくれたように
言葉にしづらい時ほど考えてしまうの
泣きたい時は何も考えないで
泣いてなくても泣いてないわけじゃないの
たまに溢れそうになるから包んでいるの
本当に泣きたい時はもう忘れているの
ほかのだれかに言いたいけれど
考えれば考えるほど言えなくなるの
もしも許されるなら時をくだって
枯れるまで涙を流したいの
谷内くんはまだこんなに体に水分が残っていたのかと思った。小2の頃に受け入れられなかった母の死が、今になって本当にそうだったのだと、やっと受け入れることができた。当時、流せなかった大量の涙が今になって押し寄せてきて、波のように涙が出た。はじめて命の尊さを理解して、泣いた。ずっと泣いて、また力尽きるように眠った。
この星の歌姫、ハイリは、原桜子の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘の娘である。谷内くんは知る由もないが、原先生は、子供達に地球で子供達に伝えきれなかった言葉の魅力を、ハイリ星で静かに伝え続けた。命をつむぎながら伝え続けた。のちにそれが歌となり、ハイリ星に、歌が誕生した。
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