第42話 パン作りなのじゃ!

 着替えを終えたルル達は、筋トレアスレチック部屋とはまた別の、煙突と繋がるオーブンのある部屋に移動した。


 ルルはこれから始まるパン作りに胸を弾ませ、実際にぴょんぴょんと体も弾ませる。そのたびに前掛けがめくれ上がりその下にあるブルマがチラリちらりと見える。

 その様子を背後から眺めている保護者組には普通に体操服姿が見えているので、前から見ると若干はしたないことになっていることには気付かなかった。 


「どんなパンを作るのじゃ!」


「今日はたぶんルルちゃんもよく食べているテーブルパンです!」


「おおー!テーブルパン!……どんなパンなんじゃ?」


 よく食べているパンとナンが説明したが、ルルはパンの名前に詳しいわけではないためさらに説明を求める。


「あ、名前を言ってもわからないか!ご飯時に食べる丸っこいパンよ!」


「あれか!ふわふわでわし大好きじゃよ!」


 詳細を聞きやっと名前と実物が結びついたルルが笑顔で答える。今朝も食べてきたんじゃとニコニコしながら続けるルルに、ブロートもいかつい顔を緩ませて話しかける。


「そうか!大好きか!そう言ってもらえると嬉しいぞ!」


「なんでブロートが喜ぶんじゃ?」


「ハハッ教会用のパンは俺たちが作っているからさ!」


「なんと!いつもせんせぇが作っているものかと思っておったのじゃ!」


 普段食べているパンは教会で作っているものだと思っていたルルは、ブロートの発言に吃驚してから、えんじ色のブルマを履いたお尻をつきだしてぺこりとお辞儀をする。


「おいしいパンをいつもありがとうなのじゃ!」


「いいってことよ!それが俺たちの仕事だしな!」


「むしろおいしく食べてくれてありがとうね!」


 ルルが屈託のない笑みを浮かべてお礼を言うと、ナンとブロートも破顔してお礼を言う。それを見ている保護者組を頬を緩ませ、ほっこりとした空間が出来上がる。


「おっし!それじゃあ始めようか!」


 柔らかい空気が漂う空間で、ブロートの掛け声からついにパン作りが始まる。

 まずは背の低いルルのために、パン作り用の大きい調理台の前に踏み台を用意する。


「神父さんに持ってきてもらった小麦粉とイースト菌!後は砂糖と塩を入れて混ぜる!」


「まぜるのじゃ!」


 あらかじめ用意されていた材料を混ぜるナンとブロート、そしてルル。ナンとブロートは初めてで右も左もわからないルルに説明しながら調理を続ける。


「さらにお湯を入れて混ぜる!こんな感じだ」


「まぜまぜなのじゃ!」


 ブロートが木べらを使って混ぜているのを見習い、ルルも同様に木べらを使い上手にごしごしと混ぜる。


「いい具合に混ざったね!それじゃあ次はこねるよ!」


「こねるのじゃ!」


 うねバキューンとうごめくナンの指使いを参考に、ルルも見様見真似でうねバキューンさせながらこねる。


「お、おお……すごいな!」


「これはパン界に期待の新星が現れたわね」


 初めてなのになんて指使いなのとナンとブロートが褒め称える。

 2分ほどこねると最初はべちゃついていた生地が引き締まり、手につかないようになってくる。


「いい感じに生地がしまったね!それじゃあバターを足して……混ぜる!そしてこねる!」


「混ぜてーこねこねするのじゃ!」


 いい頃合いだとバターを混ぜてこねるのを横目にルルも小さい手を駆使して一生懸命バターを混ぜてこねる。その様子になごみながらナンとブロートが手本を見せながら説明をする。


「いいよいいよーもうあまり伸ばさないで二つ折りにたたむようにしてこねよう!」


「おりおりするのじゃ!」


「あとは手のひらを押し付けて、そうそう、左右交互にこう」


「こうじゃな!」


 ルルは言われた通りにパン生地をたたむようにこね、それから左右の手の平をを交互に押し付けるために体を使い、お尻を振り振りしながら丁寧にこねる。


「あ、ちょっとだけちぎって食べてごらん」


「もう食べていいのかや?」


「まだだからちょっとだけ!ちょっとね!」


「まだかー……ちょっとだけじゃな……もぐもぐ……あまい!おいしい!」


 作りかけでまだ焼いてもいないのにちょっと食べてみてと言われて困惑したルルだったが、咀嚼すると顔を輝かせて美味しいと喜ぶ。


「もうちょっと!」


「もう駄目ー!さあこねてこねて!」


「もうだめかあ、残念じゃのう……こねこね……ちょっとだけ」


「駄目だよ♪」


 ルルは予想外の美味しさにちょっとだけちょっとだけだからとお願するも、ナンににっこりと断られる。がっかりしながらもそれから5分ほどこね続けると、なめらかで艶と弾力のある生地の塊が出来上がる。


「よし!しばらく置いておく必要があるからこの容器に入れて蓋をしてしまっちゃおうね」


「しまうのじゃ!」


「待ってる間ちょっと面白いものを見せてあげよう!」


 しばらく置く必要があると言われ、容器に入れて待つことになったルル。そこに手持無沙汰で暇になってしまうだろうと配慮したブロートが、あらかじめ用意していたものをルルの前に差し出した。

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