第31話 トクさん大激怒なのじゃ!
紫電の眼光が怪しすぎる不審人物を連れてきたことは問題となり、ギルドのおやっさんことトクに絞られることとなった。
「それでお前らはそんな怪しい奴を連れてきたと」
「いやでもおやっさん≪眉唾≫には何も反応なかったんですよ」
「馬鹿野郎が!人間だろうがそんなところにいるなんて怪しすぎるだろうが!」
「それで私はいつになったら解放されるのだ」
「お前は黙ってろ!」
「口の利き方を知らん猿だな」
「話がこじれるからちょっと待ってろって」
ダオナン達は要救護者として保護したと説明したが、だからといってほいほい怪しいものを村の中に入れていいと言うものでもない、トクが怒鳴るのも当然のことであった。
それでも一通り怒鳴った後、落ち着きを取り戻したトクは美丈夫に水を向ける。
「で?聞けばこの村に向かっていたって話じゃねえか。いったい何のようなんだ?その格好はここら辺の奴じゃねえだろ」
「うむ、この村で冒険者登録をしているルルの様子を聞きに来たのだ」
「……はぁ?」
「聞こえなかったのか?ここで冒険者登録を……」
「そうじゃねぇよ!ルルってお前、これくらいのガキのことか?」
トクが自分の腰のあたりに手をかざしルルが自分の考えている人間か確認をする。それを見てルルがここにいるとわかった美丈夫は機嫌を良くしさらに質問をする。
「うむ、そうだ。ルルは冒険者として立派にやっているか?」
「馬鹿かてめえは!」
だが落ち着いたはずのトクが美丈夫の質問に再点火する。
「馬鹿だと?」
「あんなガキに冒険者をやらせるような糞はここにいねえってんだよ!」
「なんだと?!」
この開拓村の住人の大半が冒険者なだけあり、冒険者の現実をどこよりも熟知している村なのだ。命がけの仕事を年端もいかない子供にやらせる大人はここにはいない。
それはこの村の誇りでもあり自慢でもあった。ゆえにトクは怒る。
「あの嬢ちゃんがやたら冒険者にこだわってたのはてめえのせいか?」
「ほう、そうか。ルルはちゃんと冒険者をやる気なのだな」
「やらせねぇよ!」
「貴様!ルルの才能を潰す気か!」
「才能何か知るかよ!ガキに何やらせようとしてんだてめえは!」
子供に何をやらせようとしているのだとトクの怒りがこだまする。だがその怒りを全く理解しようともせずに柳に風と受け流し美丈夫は会話を打ち切る。
「話にならんな。ルルはどこだ」
「……今は教会でシスター見習いをしてる。」
「そうか、邪魔したな」
もはや話をする気は微塵もないと躊躇なく出ていく美丈夫にトクが声をかける。それは美丈夫に対する怒りだけではない、少しばかりの縁だが、あの可愛らしい子供に対する愛情からの言葉だった。
「いいか、お前があのガキに何を吹きこもうが俺は冒険者登録を受理しねえ、たとえお前の言う才能があったとしてもだ!それだけは覚えとけ!」
「ふん、猿の手続きなど最初からいるものか」
だが美丈夫はそれを無視して教会に向かう。誰が何と言おうとルルは冒険者になるべきだとかたく信じて。
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