第23話 冒険禁止なのじゃ!
「しばらくは森への出入りは禁止とします」
「なんでじゃ!」
「危険だからです。昨日の件で森の情勢に乱れができていることが分かりまして、何が起こるかわからないんですよ。」
「残念じゃのう」
「そもそも森に行って良いと許可を出した覚えもありませんがね」
「そ、そうじゃったかな?」
確かに昨日は一日お休みで遊びに行って良いと言われはしたが、森に冒険に出掛けてよいと言われてはいなかったなと思いあたる。
でも駄目とも言われたわけではないしわし冒険者じゃし問題ないのでは?とも考える。
「んでもわし冒険者じゃし!森にぐらい入るであろう!?」
「残念ながらまだルルさんはまだ冒険者ではありません。立派なシスター見習いです」
考えたことをそのまま口に出したルルだが、ギルは首を振ってそれに答える。むしろ協会所属だと突っぱねる。ルルはそれに対し昨日グリンド達に仲間に迎えられたはずだと抗議する。
「馬鹿な!わしは緑の手の一員じゃぞ!」
「良く思いだしてください。正式に冒険者ギルドに登録しましたか?」
「ん~、んん~~?む~~~~!?……しとらんな!」
ギルに問いかけられ腕組をして考え込む、だんだん首が傾げていき直角になった頃にしていないと結論が出た。そういえばパーティーに入ったのも、冒険者ギルドに送ったお礼に昨日一日だけと言っていた気もする。
「もしかしてわし冒険者じゃないのか!?」
「もしかしなくてもその通りです」
「なんとー!ガーンじゃよー!あんなかっこよく名乗りまで上げたのに!」
イタチ相手に格好良く名乗りを上げたのにどうしよう、嘘でしたごめんなさいってしないとまずいかなと悩むが昨日の時点では一日限定でも緑の手の一員だし問題ないはず、と正当化して自分を落ち着かせることに成功する。
「あ、そういえば!せんせぇ!昨日こんなことがあったんじゃけどな!」
と、イタチの事を思い出したルルが昨日の話をする。
森に薬草を摘みに行ったらよくわからないうちに途中で引き返すことになった。その途中巨大熊と遭遇しグリンドがガシンと受け止めロクがザクザクやりカズが止めにズドンじゃよと楽しそうに大仰なしぐさで説明する。
「で、その後にイタチがな!ダオナンという無礼者に変化して近づいてきたんじゃがな!グリンドが簡単に見破ったのよ!あれはなんでじゃろな?」
「詳しく教えてもらえれば答えれるかもしれませんね、お話を聞いても?」
「うんとな!……」
ルルの偽ダオナンの話にひとしきり耳を傾けたギルは納得したように答える。
「とりあえず三つありますか」
「三つもか!」
まずは一つと人差し指を立て説明を始める。
「一つは熊を寄越せといって来たことですね、冒険者はどれだけ貢献したかで多少は変わりますが、皆で分け合うのが普通です。通常なら山分けの提案をするところですね」
「ほうほう!二つ目は!?」
次は中指を立て、熊の状態とダオナンの装備方面から説明をする。
「ダオナンさんの武器は弓なんですよ。彼は猟師の技術を持っている方なんですよ。例えパーティーで戦ったとしても矢傷がなく斬り傷だけというのはおかしいですね」
「最後の一つはなんじゃ?!」
薬指を立て、丁度三本の指を立て最後の説明をする。
「簡単です、ちょっとでも変だと思ったらとりあえず確認する。それが冒険者の常識なのです」
「なるほどのう!そういう理由があったのじゃな!冒険者の常識か!かっこいいのう!そう言えばせんせぇは元冒険者と聞いたぞ!せんせぇも以前似たようなことがあったりしたのか!?」
「私の時はしょっちゅうでしたね。あのギルドで受付してるトクさんとパーティーを組んでいたんですよ」
「ほー!いいのう!いいのう!」
目を輝かせ食いついてくるルルに満更でもない表情になるギルだが、これでは冒険者を勧めているだけになってしまうと気を引き締め話を打ち切る。
「とりあえずこの話はここまでです。最初に伝えたようにしばらくは森にだけは行かないようにしてくださいね、かわりに村の中であれば自由に散策してもかまいませんよ」
「残念じゃがわかったのじゃ!しばらくは村の中を探検するぞ!」
森への冒険を禁止されたのは残念だが、心配されているのはわかるので素直に諦め、かわりに村の探検が許されたことを喜ぶルルであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます