第156話 2年目の春 その11
こうして何とか3年の教室を回り、最も気が重いクラスの前にわたしは立っている。
3年5組、片貝さんの居るクラスだ。5人でホワイトボード前にずらっと並び、口を開こうとするけど、このクラスの空気感に押しつぶされそうになる。静寂、なのだ。わたしには分かる。この静寂は、”片貝さん”、という圧倒的な個性から発せられ、教室全体に染み渡っているのだ。何とか踏ん張ってこれまでのクラスと同じように、”公約”を一気にしゃべり終えると、結構な量の拍手が起こった。けれどもその拍手には感情が全くこもっていないことがわたしにははっきりと分かった。
「え・と・・・何かご質問やご意見は・・・」
学人くんが言うと、1人の生徒が、すっ、と真っ直ぐに右手を挙げた。
片貝さんだ。
「上代さん」
「はい」
「あなた、まだまだ子供ね」
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