第148話 2年目の春 その3
翌日、入学式
「おー、いいねー。ぱりっとした制服が」
入学式は午後からなので、世話係と校歌を歌う合唱部以外は午前中で終了。午後の部活も禁止で一斉退去だ。
5人組の中ではちづちゃんとわたしが会場設営と新入生の引率係となり、学校に残った。
「あの、ジョーダイ先輩ですよね」
ちづちゃんと2人で体育館に向かう途中で声を掛けられた。見ると3人の女子生徒が立っている。新入生クラス編成掲示板の前。
「うん、そうだよ。あなたたち新入生?」
「はい。2組です」
「そっかー、入学おめでとう。でも何でわたしのこと知ってるの?」
両脇の2人に促されて真ん中の子が答える。
「あの、わたし達去年の運動会観に来たんです」
「おー、五十嵐先輩のファンかー」
「え、と。最初は五十嵐先輩を観るつもりで来たんですけど、ジョーダイ先輩が陸上軌道競走で女子1人だけ走ってるのを見てかっこいいな、って。3人で絶対北星に受かろうって頑張って来たんです」
「ありがとう」
わたしは変に照れずにお礼を言う。
「じゃあちょっと訊くけど、伊藤さんって子が何組になったか知ってる?」
「伊藤さん?」
3人が顔を見合わせていると、
「千鶴さん! もよりさん!」
元気な声がした。
「歌奈ちゃん、おめでとう」
「おめでとう」
クリスマス・フィードバック・ブディズムに来てくれ、元旦のお参りに咲蓮寺にも来てくれた、歌奈ちゃん。
その後、ちづちゃんとわたしは何度か受験勉強に付き合った。メールで北星に合格したと言う報告は受けていたけれども、会って直接おめでとうと言うのは今日が初めてだ。
「お陰様でお2人の後輩になれました。本当にありがとうございます」
「ううん。わたしたちの方こそすごい嬉しいよ。どころで、何組?」
「2組です」
「え、ほんと?この3人と同じだね」
歌奈ちゃんはちょっと恥ずかしそうに3人の顔を見る。
「伊藤さんて言うの?わたしたちも2組だよ」
「伊藤さんはジョーダイ先輩と知り合いなの?」
「”もよりさん”、てジョーダイ先輩のこと?」
3人が矢継ぎ早に歌奈ちゃんに質問する。さて、歌奈ちゃんの反応は?と思ってたら心配することなかった。
「もよりさんだけじゃなくって、千鶴さんも素敵な先輩だよ」
さすが。歌奈ちゃんならではの返しだ。ちづちゃんの良さをよく分かってる。わたしも更に付け加える。
「あなたたち、この脇坂千鶴先輩はね、優しさは努力だってことを教えてくれる素晴らしい先輩だよ」
「もよちゃん、そんな、わたしなんて・・・」
ちづちゃんはぶんぶん手を振って否定する。でも、この新入生たちはとても素直に受け止めてくれた。
「失礼しました。脇坂先輩、よろしくお願いします」
うーん、先輩って、いい響きだなー。
わたしは新入生4人に語り掛けた。
「みんな、2組ってことは運動会味方同士だね。一緒に頑張ろう!」
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