第98話 クリスマス・フィードバック・ブディズム その9

「今、学校や職場や家庭で、いじめに遭っている方、手を挙げてください」

「・・・・・・・」

「ありがとうございます。では、次の質問です」

 きゅっ、と瞼に力を入れ直す小学生男子がいる。

「学校の勉強や、仕事そのもので悩んでいる方、それから、そういった場所での人間関係で悩んでいる方、手を挙げてください」

「・・・・・・」

「ありがとうございます。では、健康のことで悩んでおられる方」

「・・・・・・」

「ありがとうございます。では、最後の質問です」

 ごほん、とお年寄りが1つ咳ばらいをする。

「死にたい、と思っている方」

「・・・・!」

 表情が、ぴくっ、と反応する人が何人もいる。

 でも、皆、決して目を開かず、言いつけを守ってくれている。

 わたしは何も言わず、4つの質問の結果を、正確に、暗記した。

 できる限り温かく、優しく、こう言った。

「では、眼を開けてください」

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