第75話 メイド服の調達法 その6

「もより、わたしバイト上がりの時間なんだ。晩御飯、一緒に食べない?」

 一応ちょっと遅くなるかもとお師匠には言ってあるので構わないんだけれども。何より奈月さんの申し出はなんとなく断りづらい雰囲気が滲み出てる。

 着替えた後、2人で並んで自転車を走らせ、ファミレスに入った。

 メイド服を脱いだ奈月さんは理知的な”できる女性”というオーラを周囲に放っている。

 わたしの方から訊いてみた。

「どうしてメイド喫茶でバイトしようって思ったんですか?」

「ん?家から近いのと、時間帯が合ってたのと、あと時給が良かったからだけど」

「横山はバイトが許可制って聞きましたけど、よくOKが出ましたね」

「もより、それは根本的に歪んだ考え方だよ」

「え?」

「仮にわたしが高卒で社会に出るために就職活動してたとするよね?それでメイド喫茶に就職したいから推薦状と成績証明出してくださいって学校に頼んだら、それを断ることって普通できないと思うけど。だって、メイド喫茶の仕事は法に触れる訳でも何でもない、まっとうな仕事なんだから」

「確かに・・・ちゃんとした就職先ですね」

「でしょう?バイトだって同じことだよ。ハンバーガー屋のスタッフはよくて、メイド喫茶は駄目なんていう理屈は立たないから」

「納得です」

「まあ、そう言って生活指導の先生を脅して認めさせたんだけどね」

 ああ、またかっこいい人を見つけてしまった。奈月さん、なんかいいな。


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