第35話 わたしを見て その7

 けれども、なんかおかしいと思ってはいたのだ。佐古田くんに引っ張られる力だけじゃないって。

 わたしの背後から風速20mぐらいのぐいぐい押すような圧力が加わっているのに途中で気付いた。

 目に見えない誰かの助け。

 ああ、また例のごとく、誰かに守られてる。

 とすると、これはフェアな競走と言えるの?

 うーん、と考え込んで0.5秒、ま、いっか。わたしが後押しされてるお蔭で佐古田くんもハイペースを保てる訳だし。そんなことより楽しいし!

 あ!また4人が見えて来た。ラスト1周に入る直前、バテバテの4人を佐古田君とわたしで淡々と抜いて行く。

 ギャラリーは大騒ぎだ。

「佐古田ぁ、ゴーゴー!」

「もよりー、負けんなー!」

 男女に分かれて応援してる。

 ちづちゃんは大ぴらに声出してわたしを応援。ジローくん、空くん、学人くんは中間地点に立って中立を保ってるけど、視線はわたしを見てる。

 おや、その横に中間地点寄りの男子数人が立ってる。

 薄々感じてた、わたしに好意らしきものを発散していたメンバーだ。

 やっぱりわたしは勘がいい。

 ほぼ当たってた。

 とかなんとか考えてた刹那、佐古田くんが初めて声を出した。

「はっ!」

 どうやらこれが彼のラストスパートの気合いのようだ。

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