第17話 純喫茶アラン その6

 事実なので何も言えないけれども。

「いやー、でもジョーダイさんが店に入って来た時はびっくりしたよ」

「え、わたしってこういう店に来なそうな感じ?」

「いや、そうじゃなくて、制服着た女子高生なんて絶対来る訳ないって思ってたから。多分この店開店以来初じゃないかな?」

「まあ、確かに・・・・」

 つまり市松くんはわたしがこの店の客層とズレてるっていうことじゃなく、わたしが普通の女子高生の感性と大きくズレてるってことを言いたいんだ。ちょっとだけ落ち込む。

「ジョーダイさん、今日お寺の仕事は?」

「えーっと、先週から今日この店に入るのを楽しみにしてて前倒しでやりくりつけたから・・・・って、いうか、家がお寺ってことまで知ってるんだ」

「だからジョーダイさんは本当に有名人だから。4組でもジョーダイさんを狙ってるヤツ結構いるよ」

「狙ってるって・・・・」

「ジョーダイさん、背も高いし、ルックスいいし、性格も滝の水を流したような感じで人気あるよ。こんな大人しそうな奴が?って男子まで本気で告白しようか、とか言ってるし」

「・・・よく分かんないけど、そういう対象がわたしである必要はないと思うけど・・・って、こんな話し込んでて大丈夫?」

 わたしが座ってて市松くんが立ってるのもちょっと申し訳ない。

「うん。お客さんの切れ間だし、同じ高校だって言ったら話してきてもいいよって若マスターが言ってくれた」

 若マスターなんだ。じゃあ、老マスターがいるってことかな。

「ジョーダイさんはファストフードの店とかカフェとか行かないの?」

「わたしは喫茶店が好きなんだ」

「へえ、そうなんだ」

 あれ、そう言えば。一応訊いてみようかな。

「市松くん。たしかうちの高校ってアルバイト禁止じゃなかった?」









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