自殺探偵
ぽこぺん
第1話
あまりの寒さに目が覚める。布団の中だというのに冷気が身に染みる。
寝ぼけ
暦では三月なのに朝はまだ氷点下だ。東北の春はまだまだ先のようだ。
布団を出て、寝間着のスエットから私服に着替える。紺のジーンズを穿き、赤色のロングTシャツを着て、その上から灰色のパーカーを羽織る。着ぶくれするが暖かさのため仕方なし。
姿見で全体をチェックしたら顔を洗いに洗面所に向かう。
「おや。おはようございます、
廊下を出ると同居人の
昌義さんは同居人だが彼氏とかそういうのではなく、私の叔父にあたる人である。年齢は確か三十二歳だっけ? それよりは老けて見えるのは立ち振る舞いや恰好からくる印象だろうか。
何着ストックがあるか分からないが常に黒のストライブが入ってスーツを着て、誰に対しても敬語を用いる。まるで紳士の様。髪が少し白髪交じりでロマンスグレーなのも要因なのだろう。それ以外は普通の三十代のおじさんなのだが。
「おはようございます。あっ、洗濯物ですか? 私が干しますよ」
「大丈夫です。それより顔を洗ってきてください。朝食にしましょう」
「分かりました」
私は言われた通り、洗面所に行き歯を磨き顔を洗う。最後に少し跳ねた寝癖を真っ直ぐにして髪型を整える。
「髪、大分伸びてきたなー」
ショートヘアーだが耳元まで隠れる様になってきた。冬場だからまだ良いかなと思ったが、前髪も伸びてきてウザいなー。近々、美容院へ行かないと。
そんな事を考えながらリビングに向かう。
部屋に入った瞬間にコーヒーの香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。テーブルの上には半熟に焼き上げられたハムエックと新鮮でみずみずしいレタスとトマトが盛り付けられたサラダに、湯気がたったクリームスープにバターが香るクロワッサンが置かれている。
「さあさあ、冷めないうちに召し上がってください。飲み物は何が良いですか。今日のコーヒーはコロンビアの良い豆が手に入りましたよ」
「あっ、いえ。牛乳で良いです」
私はコーヒー豆のことを言われてもわかりませんって。
「そうですか。温めますか?」
「冷たいので大丈夫です」
「分かりました。はい、どうぞ」
グラスに注がれた真っ白な牛乳。
「では、いただきましょうか」
「はい。いただきます」
まずはスープに口を付ける。カボチャクリームスープで優しい甘さとこの暖かさは冬に嬉しい。
「どうですか? 味の方は」
「とてもおいしいです」
「それは良かった」
いや、全然良くないですよ。ここに住んで一年になるが、有壁さんの作る料理は美味しすぎる。お陰で私の舌がどれだけ肥えたことか。最近では実家や学食でとる食事が味気ないく感じる。
「ところで愛佳さん。冬休みの課題の方は終わったのですか?」
「ええ、一通りは」
急に私の話題に触れてくる。
「では、この後は予定は特にないのですね」
「はい」
あっ、この流れは。もしや―――
「じゃあ、少しお手伝い願いますかね」
ですよねー。そういう流れですよねー。髪を切りに行こうと思ったがあえなく断念。
「.....はい。それで今回はなんですか」
「吉田おばあちゃんの猫が三日前から帰って来ないそうで、探してほしいと言う依頼です。人手が多い方が良かったので助かります」
「いいえ。お世話になっているので構いませんよ」
そしてまさかの極寒の中で猫探し。これはもう一枚着こんでダウンジャケット羽織らないと。
有壁昌義は探偵である。初めて聞いた時は目を丸くしたものだ。
まさか、探偵なんて職業している人が本当に居るなんて思いもしなかったし、それが母親のお兄さん。つまり私の叔父にあたる人が探偵なんて更に予想もしなかった。
そもそも、有壁さんと暮らすことになった原因は私の大学進学にある。昨年、第一志望である仙台の大学に合格をしたので、これを機に実家の栗原から飛び出し、念願の杜の都で一人暮らしを始めようとしたら父親が猛反対。
「娘を都会で一人暮らしさせるなんて危険過ぎる」と、今時珍しいことを言う過保護っぷり。幾ら説明しても折れなかったので、呆れた母が提案してくれた。
それが有壁さんのところで住まわしてもらうである。
有壁さんは青葉区の端で探偵業を営んでいるの、そこでお世話になるという話だった。もちろん、最初は父も難色を示し、私も初めて存在を知った叔父と一緒に住むのは抵抗があった。
しかし、大学の学費に生活費に家賃は誰が出すと言うお金の問題を出されてしまい、私は致し方なく了承。父も渋々ながら承諾してくれた。
その後、母が有壁さんと相談。二つ返事で承諾してくれたらしい。
こうして私は去年の春から家賃三万五千円で光熱費込みの朝夕食事付きと言う破格の条件も付けてもらい、六畳間の一室を借りて有壁さんと暮らしているのである。
ただし、そこには一つの条件がある。それが有壁さんの仕事の手伝いである。人手が居る時は手伝ってほしいとのこと。
それくらいならお安い御用と安請け合いしたが、この仕事は思った以上に地味で辛い。
特に猫探しの依頼ときたら、日がな一日街中を駆け回り、人に聞きまわり、裏道を這いずり回る。辛い、進歩も成果が見えないのでとにかく辛い。
「そして、今は真冬だっての」
雪が散り、寒風吹き荒むこの季節に野外の捜索活動は堪える。幾ら着込んでも身体の芯から冷えてしまう。早く暖房の効いた部屋でくつろぎたい。
そもそも広い街で猫一匹探すのがどれだけ無謀なことか。ただでさえこの気温で猫なんて歩いてないのに。
そんなことを思っているとケータイがなる。着信の相手は有壁さんだ。
「もしもし」
『どうですか、首尾は』
「全然です。猫一匹見つかりません」
『そうですか。この季節は寒さを凌ぐ為に車の下やボネンットの中や縁の下に隠れていることが多いのでその辺りを探すと見つかりやすいですよ』
そういう大事な情報は始める前に言ってほしいんですけど。
「ワカリマシタ。デハ、ソノ辺リヲ調ベテミマス」
『おや、何か喋り方がおかしいですけど大丈夫ですか?』
「ダイジョウブデスヨ」
『そうですか。ところで今夜は冷えるので鍋をしようと思うのですが何鍋がよろしいですか?』
「せり鍋が良いです」
即答だった。鍋と聞こえた時から、もう答えは決まっていた。
今冬はまだ食べてはいないし、実家でも鍋と言ったらこの時期はせり鍋である。あのシャキシャキの歯ごたえと水菜には無い独特の風味が堪らなく好き。
『分かりました、今夜は鴨肉のせり鍋にしましょう。帰りにせりを買いに行かないといけませんね。では、暗くなるまで捜索の方をお願いしますね』
そして、夕方まで捜索続行が決定してしまった。悔しい、夕食を引き合いに出され食欲に負けた自分が凄く悔しい。
『それでは引き続き吉田おばあちゃんの猫、タマちゃんの捜索を頑張ってください』
励ましの言葉の後に電話が切れた。
日没までまだ四時間はある。よし、ひとまず暖を取ろう。コンビニ行って暖かいものでも買おう。
その後、言われた場所を重点に探してみる。
パーキングに止まっている車の下を覗くと確かに何匹かの猫と遭遇。だが、探している猫の特徴と一致するのは見当たらない。
「黒猫で鈴の付いた青い首輪をしているか。それにしても太り過ぎないか、タマ」
吉田のおばあちゃんに抱かれている姿は、今まで見てきた猫に比べてとても太ましい。もうお腹の肉がぎっしりだな。おばあちゃん、甘やかし過ぎじゃないか。
にしても、そんな甘やかされた猫が遠くまで行かないんじゃないか? それにこんだけ太ってると言うことは案外飲食店の裏で残飯とか漁っていたりして。
そうそう、こういう中華飯店の裏とかさ。
何気なく覗いた路地で目が合う。口に魚の骨を咥えた、鈴の付いた青い首輪の太った黒猫と。なんとベタな光景なんだ。
これはどうすべきだ。いや、捕まえるべきなのだろうけど。私、猫とかの扱い解らないんだけど。
「よ、よーし。タマちゃん、おとなしくしましょうねー」
恐る恐る近づいていく。以前タマは私を凝視している。
「もう、すこ、し」
あと数歩で手が届こうという時である。
「シャーッ!」
めっちゃ毛を逆立て威嚇された。そして、そのまま猛ダッシュで逃げていく。
「あっ、コラ! 待て!」
逃げる猫を追いかける。
「あのデブ猫、太っているのに走るの早い!」
徐々に離されていく。このままだと見失いそう。
とかなんとか思っていたら、タマが塀をくぐって民家の中に逃げ込んだ。
どうしよ、ここで逃すと後々面倒だしな。とりあえず、事情を説明して中に入れてもらう。
玄関に向かう。車が置いてあるところを見ると誰かは居るみたいだけど。
呼び鈴を押す。だが、反応がない。もう一度押すもやはり人が出てくる様子もない。
「おかしいな。車置いて出掛けているのかな?」
仕方ないので勝手に敷地に入らしてもらおう。確かタマは裏の塀から入ってたな。
たぶんだけどこの辺りに居ると思うんだけど。
「おっ、居た居た」
縁の下で骨を夢中で食べていた。食べるのに夢中でまだ気づいてないようだ。
ゆっくりと背後に周って近づく。そして射程圏内に入った瞬間。
「おらっ!」
「!!?」
間髪入れずに両脇に腕を滑り込ませ、そのまま前足を引っ掛けるように抱きかかえる。
「おわっ! 重っ!」
想像以上の重さに驚く。こんだけ体重あるのにあの身のこなしか。猫侮れ難し。
「フギャー! フギャー!」
「こら暴れるなっての。おとなしくしてなさい」
と言っても伝わるはずもなく、私の腕の中で動き悶えるタマくん。なにもそんなに嫌がらなくてもいいじゃない。
「ん?」
と、猫と戯れていると妙な気配を感じた。
見れば窓のカーテンが開けられていて、薄暗い部屋の様子が窺える。
その部屋に人際目立つ明るく発光する画面。机に上のパソコンが起動していたままの様だ。
「留守なのにパソコンをつけたまま出掛けたのかな?」
だが、違和感はそこだけではなかった。
その机の下に椅子が倒れている。そして、椅子の隣に何かが横たわっている様に見える。もしかしなくてもこの家の人だよね。
「あー。パソコンして寝落ちしたのかな」
だから、呼び鈴にも気づかなかったのか納得。
でも、これだけ近くで猫が騒いだり、私が大声出しても起きないのっておかしい様な。余程、疲れてるのかな? てか、普通に椅子から倒れたら起きるとは思うんだけども...。
そんなことを考えると違和感が増すばかりだった。なにかがおかしいと感じる。
「暗くてよく見えないな」
まだ十五時過ぎだと言うのに空に厚い雪雲が覆っている所為で夜のように暗い。
そんな中でも薄らと見える床に広がる液体。なんだろう、飲み物でもこぼしたのかな?
目を細め、部屋の中をよく見てみる。
その時、雲の切れ目から光が差し、部屋全体を数秒間照らし出した。
「あ...あっ...」
たった数秒だが、はっきり見えてしまった光景。
床に広がっていたのは赤黒く色づいた液体。それは紛れもなく血で、横たわる人から流れていた。
「いやぁぁぁっ!」
そして、目が合ってしまった。
腹部に刃物を刺して、苦悶の表情を浮かべた死体と。
「被害者は
若い刑事さんが状況の報告をする。
「おう。後、その言葉使いなんとかならんのか、
「ウッス、学生時代からの癖なんですいませんっス」
「はぁー。まあ良い。で、君が第一発見者?」
私の目の前に巨漢で角刈りの強面刑事さんが立ちはだかる。
「は、はい」
その後、私の悲鳴を聞いて近所の人が集まり、直ぐに警察に連絡が行った。
私は現場の第一発見者として現在絶賛取り調べ中。
「で、何で君はここに居たのかな?」
鋭い目つきで見下されながら低い声で問いかけられる。滅茶苦茶怖い。
「いや、その、猫探しをしていまして。その猫がここに逃げ込んだのでお邪魔を...」
「猫? そんな居ないけど」
「びっくりした時に離してしまい逃げられまして...」
あの猫め。どさくさに紛れて逃げやがって。
「ふーん。まあ、それでも勝手に入ったことは住居不法侵入になる訳だけども」
「私はただ猫を追いかけていただけど...」
「詳しいことは署で聞くから。事件と不法侵入について」
「そんな!」
そんなことになれば大学とか実家に連絡が行って色々面倒なことになる。
「さっ、車に乗って」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいまし!」
パニックになって少しおかしな言葉使いになる。
「何だね。こっちも暇じゃないんだ。おとなしく指示に従ってくれると助かるんだが」
「も、もう少し待ってください。私の...えーっと...なんだ? 保護者? が来るんで!」
「保護者ァ?」
明らかに怪訝そうな表情で私をみる刑事さん。もうこの人、いちいち顔が怖い。
「おやおや。随分と物騒なことに巻き込まれているみたいですね」
「有壁さん!」
野次馬を掻き分けて現れた有壁さん。
「愛佳さん。まさか殺人でも犯したんですか?」
「誤解を招くような言い方止めてください! 私は巻き込まれただけです」
とりあえず、一通りの事情を説明する。
「なるほど。で、そのタマは何処です?」
「タマの事は今は置いててよくないですか?! 私、事件に巻きこまれたんですよ!」
「いやいや。一応、大事なことなので」
「私は大事じゃないんですか?!」
「しかし、話を聞く限りでは住居侵入罪に適応はしますからね。私が来たところでどうにか出来る問題ではないです。せめて家主さんが居ればなんですが、お亡くなりになっている様では」
「そんなー!」
「これも社会勉強の一環だと思って、連行されるのも悪くないですよ」
「悪いですよ!」
この人は本当に無責任と言うか、他人事だと思ってからかって。こっちは必死だってのに!
「そんなに怒鳴らなくても。で、事件はどんな感じなんですか、五橋くん?」
と、私ではなく強面刑事さんの方を向いて話しかけている。
「まさかと思いましたが、この子は有壁さんのお知り合いでしたか?」
「ええ。私の姪です。姉から頼まれて預かっているのですよ」
「そうでしたか。なら、早く言ってくれたら良かったのに」
なになに? どういうこと? 二人共知り合いなの?
「ああ、言い忘れました。彼は
「そうなんですか...って、警察学校?!」
何それ初めて聞くんだけど。
「有壁さんは俺の先輩でな。当時を首席で卒業したんだが、何故か警官にならず探偵を始められたんだ。まったく、変わったお人だ」
「主席?! 頭良かったんですか有壁さん」
「随分と失礼な物言いですね。愛佳さんは私のことをどういう風に思っていたのか気になるところですが」
いや、だって有壁さんは自分のことを話たがらないから、素性が全く分からないですよね。
「と、とりあえず、これで私の身の上も分かったことですし、解放してくれると助かるんですが...」
「いやいや。それとこれとは話は別だから。有壁さんの姪だからっと言って特別扱いはしない。ほら、パトカーに乗った」
「そんなー!」
こうして、私は人生で初めて警察のお世話になることになった。
怒られた。こっぴどく怒られた。たぶん、人生で一番怒られた。
とりあえず、不法侵入のことについてはお咎めなしとなった。あの家には自殺した人の母親も一緒に住んでいたらしく、その方が許してくださった。
しかし、それでも警察の方は許してくれる訳ではなく、厳重注意とお説教を受けた。そして、そこからは事件の第一発見者として調書を受ける。
気が付けば20時を周り、今日のところは解放をされた。
「つーかーれーたー」
疲労が一気に押し寄せ、近くにあったベンチに座り込む。
「おやおや。大分、絞られたみたいで」
すごい笑顔で私に話しかける有壁さん。絶対面白がっているよ、この人。
「どうぞ。喉が渇いたでしょう」
「ありがとうございます」
差し出された缶ジュースをもらう。
「てか、有壁さんは何で警察署に?」
「勿論、愛佳さんを引き取りに。それともう一つ。今日、起きた事件について色々と」
「色々?」
「全く参りますよ、有壁さん。事件について詳しく教えろなんて。機密情報ですよ」
こちらも疲れた様子の五橋さんが現れる。
「もしかしたら、捜査に協力出来るかも知れないと思いましたので」
「捜査も何もないですよ。この件は自殺です、自殺」
「自殺...ですか」
「そうですよ。争った形跡は無し。部屋には鍵が掛けられてたし、窓も施錠してあった。そして、何よりも本人が書いた遺書が発見されました」
「遺書ですか? でも、私がそんなもの見当たらなかったような」
暗くて見落としていたかも知れないけど、紙らしきものは見てないな。
「パソコンに書いてありました。起動していた画面に」
「しかし、それでは誰が書いても同じではなのですか?」
「それの可能性はなさそうです。本人の指紋と断定ができています。何しろ、キーボードに本人の血液で跡が付いた指紋が付いていましたから。しかも、キチンと両指でタイピングしてありました。まずもって直筆でしょうね」
「なるほど、そうですか」
それを聞いた有壁さんが何時にもなく真剣な表情をして何か考え込む。
「あの、連行してきてなんですけども、そろそろ良いですか? 今から報告書を書かないといけないのですけど」
「ああ、これは気が付かず申し訳ない。では、私達はこれで失礼しますね。お仕事頑張ってくださいね、五橋くん」
「はい。後、瀬峰だっけか? これからは変な事で警察の厄介になるなよ」
「はい。よく肝に銘じます」
時刻20時48分。これをもってようやく警察から解放された。
「明日、黒田さん宅へ謝りに行きますよ」
「へぇ?」
せり鍋をつついていると有壁さんが唐突なことを言う。
「いや。急にどうしたんですか? 向こうの方は大丈夫だって言ってたじゃないですか」
「だからです。そのことで改めてお礼と、勝手に立ち入ったことの謝罪もしなければ。それが社会人と言うものですよ」
「しかしですよ。事件があって直ぐにお伺いするのはお邪魔じゃないですか?、ほら、お葬式とかの準備とかしているかも」
「こういう事は早い方が良いのです。菓子詰めを持って、お線香の一つも上げて、お悔やみ申し上げれば良いだけの話ですよ」
「そうですか?」
何か逆に迷惑のような気もするけど。
「私も付いていきますんで心配しなくても大丈夫ですよ」
「はあ」
別に一人だけでも良い気がするんだけども。
しかし、せり鍋美味しい。実家では鶏肉だけど鴨にするだけでこんなに違うとは。
やっぱり、有壁さんが作ると何でも美味し過ぎる。これはちょっと体重の危機を感じる。
だが、そんな思考とは裏腹に箸は止まる気はなかった。
翌日、有壁さんの言うとおりに事件を目撃したお宅へとやって来る。
「うーん。大丈夫かな」
普段、着慣れないスーツにヒールと言う組み合わせに違和感を禁じ得ない。
て言うか何で有壁さんがレディーススーツなんて持ってるだろうか?
忌中だから一応、喪服や黒いスーツを着てくださいと言われたが、私は喪服どころかスーツも持っていない。その旨を伝えるとこのスーツを出してくれた。
どうして、男性である有壁さんが持っているのか聞こうと思ったが、どうにも聞き辛い話題で聞けず仕舞いである。
「大丈夫です。人は案外細かいところは見ないんで。大まかなら問題ありません」
いや、そういう問題ではなくて。私の心構えの話なんだけども。
「さてと。では、行きますよ」
有壁さんが呼び鈴を押す。
『はーい』
前回とは違い、家の中から返事をする女性の声が聞こえる。
「はい。どちらさまで」
玄関から姿を現したのは五十代前半くらいの女性。この人が私の不法侵入の件を許してくれた、自殺した人の母親らしい。
「先日、こちらのお宅に無断で侵入してしまった者とその保護者です。この度のことで改めて謝罪にまいりました」
そういうと深く頭を下げる有壁さん。私も急いで同じように頭を下げる。
「ああ、昨日の。その件は特に気にしてないと警察の方にお伝えしたはずですが?」
怪訝そうな表情で私たちを見る。やはり、そういう風な顔なる。
「それではこちらの気がすみませんでしたので、お伺いさせていただきました。こちらを仏壇にお納めください」
そう言って、道中買ってきた三色最中の入った包みを手渡す。
「どうもありがとうございます」
「それでつかぬことをお聞きますけども、息子さんは自殺だったとか?」
そして、急に不謹慎な質問を投げかける。
「...それが如何しましたか?」
明らかに不機嫌な顔をする。それはそうだ。死んだばかりで心を痛めているところに急に死因を聞くのだから。私だって嫌な顔をする。
と言うか、それは昨日五橋警部から聞いてるはずなのに。
「いや、どうにも細かいことが気にな性分でして。あっ、私はこういうものをしていまして」
と、懐か一枚の名刺を差し出す。自分の氏名と探偵事務所の名前と住所が書かれたものだ。私も初めて会った時にもらったけど、どこにやったかな?
「有壁...探偵事務所?」
「はい。私、探偵などやっておりまして、猫探しは勿論、個人や企業の各種調査を行っております。今回も偶々、猫の方を探しておりまして。その際、助手がこの家に入っていく猫を捕まえようとして無断で侵入してしまったのです」
あれ? いつの間に私、助手にされてる。
「その時に偶然にも今回の現場を目撃してしまったのですが、息子さんは腹部を刺しての自殺でしたとか? 何か心当たりでもございますか?」
「いいえ、何もありませんでしたが」
「そうなのですか? かなり思い詰めてからの突発的な自殺だと思ったのですが」
「私には息子が何を考えているかなんて分かりません。急に仕事を辞めて、一日中自室に籠りっきり。食事も部屋で取るから、この数か月は会話なんてまともしていませんでしたから」
「そうでしたか。ちなみに先日はお留守でしたが、どちらへお出かけに?」
「その質問に何か意味はあるのですか」
「いえ。職業柄の形式的な質問です」
「美容室に行っていました。直樹が亡くなったのは私が出て行った後のことだったみたいなので、留守を狙ったかもしれないと警察の方は言っておられました」
「そうですか」
「あの、もうよろしいでしょうか。こちらも色々と忙しいので」
「これは、お忙しい中を時間を取らせてしまってすみませんでした。もし、探偵の御入用がございしましたら何時でもご連絡をください」
こうして、謝罪訪問は終えた訳だが。殆ど有壁さんが話して終わっていたな。
「さて、じゃあ次へ行きますよ」
「次って、何ですか?」
もうお詫びもしたし、行くとこもないのに何処へ行こうとしてるんだ?
「これから黒田直樹さんが勤めていた仕事場に向かおうと思います」
「えっ? 何でですか?」
「だから言ったでしょう。気になる性分だって」
「気になるって何がですか?」
「自殺ですよ。彼が自ら命を落とさなければならなかったのか。私はそれが知りたいのです」
そう言って足早に歩いていく有壁さん。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」
私は訳も分からず、その後を着いていくしかなかった。
黒田直樹さんの勤めていた会社は五橋警部から聞き出して直ぐに割り出せた。こんな簡単に個人情報を教えていいものなのかと警察を疑うけども。
勤め先は県内でも割と有名な食品加工会社。そこで営業を行っていたらしい。
「で、ここまで来たのは良いですけど。どうするんですか?」
五階建てのビルを眺めながら有壁さんに尋ねる。
「勿論、お話を伺いに行きますよ」
「話って、部外者の私たちがどうやって」
「とりあえず付いて来てください。そして、私の話に合わせる様に」
「はあ」
そう言うとビルの中に入っていく。
一階に勿論受付が待ち受ける。制服に身を包んだカワイイ受付嬢がお出迎えである。
「失礼します。営業部の方々にお伺いしたいことがあるのですが」
「はい。どなたかとはアポイントはお取りでしょうか?」
「いえ。実はこう言う者で」
と、懐から黒い手帳みたいな者を取り出し、開いて受付嬢に見せる。
中に刑事と書かれ、自分の顔写真が張ってある。俗にいう刑事手帳である。
無論、有壁さんは刑事なんかではない。一介の探偵である。あれは偽物の手帳だ。まさか、そこまでするとは。
「少々、お待ちください」
それを見て察した受付嬢が内線をかける。
「お待たせいたしました。担当の者が対応させていただくとの事です。お手数ですが、右手にありますエレベーターで三階にお進みください」
「ありがとうございます」
まさかこんなベタなハッタリが通用するなんて。
「ちょっと有壁さん。流石にマズくないですか? これ、完全に法に触れてますよね?」
「大丈夫です。明るみに出なければ犯罪ではないのですよ」
うん、全然大丈夫ではなかった。ついに私も犯罪の片棒を担がされてしまった。昨日に続き今日までも。
「とりあえず、余計なことを言って素性が怪しまれるといけないので、愛佳さんはなるべく黙っていてくださいね」
「言われなくてもバレる様なことは喋りません」
後でバレて警察沙汰になって、またしこたま怒られるのは勘弁願いたいし。
と、エレベーターが指定された階に着く。扉が開くと外にはスーツを着た男性が一人立っていた。
「どうも。お二人が警察の方ですか」
「はい。こういう者です」
と、先程見せた偽物の刑事手帳をまた見せる。
「では、立ち話も難ですのでこちらに。会議室を開けておりますので」
「これはどうも」
通されたのは端にある薄暗い部屋。長机とイスが等間隔に並べてある。
「申し遅れました。私、営業部部長の田所と申します」
そう言って一枚の名刺を有壁さんに渡す。
「これはご丁寧にどうも」
「...それで辞めた直樹くんについてと聞きたいという事ですが、彼に何かありましたか」
「はい。昨日、亡くなりました」
「そう、でしたか。しかし、彼はもう会社を辞めた身。我々とは無関係ですが」
「そう言う訳にもいかなくて。彼は自殺で亡くなったので」
「自殺ですか?」
「ええ。それで何か心当たりがないかと思いまして」
「心当たりと言いましても、彼が辞めたのはもう半年も前のことですから」
「何でも良いのです。何かに悩んでいたりとか、不可解な言動とか思い当たりませんか?」
「いいえ、特には。辞める寸前まで至って普通に勤めておりました」
「そうですか。では、辞めた理由は覚えていますか」
「一身上の都合です。何でもやりたいことが出来たとかで」
「やりたいことですか。どの様なことかはお聞きですか?」
「いいえ。彼は話したからず、私も詳しくは聞きませんでしたから」
「なるほど、そうですか」
その後は黒田さんの会社での人となりを聞いたり、勤務態度を質問を聞いて一時間ほどの聴取をして終了。
何となくではあるが、黒田直樹という人物が見えてきた。
高卒で就職後、すぐに営業部に配属される。黙々と仕事をこなす真面目な性格で業績は良かったらしい。辞めるまでの10年間は真面目に勤務し、休むことも殆ど無かったらしい。
ただし、それ以外の情報は得られず、これといった手がかりは何も分からなかった。
「結局、自殺する動機になるような情報は得られなかったですけど。どうするんですか」
先程から何かを考えている有壁さんに話かける。
「そうですね。黒田さんがやりたかった事が分かれば、何か糸口が掴めるのですがね」
「やりたいことですか。三十路前に仕事辞めて、一日部屋に籠って何をやるというんですかね?」
「.....成るほど。では、一度警察署の方にお邪魔しますか」
「えっ?」
そう言うと、また早足で歩き始める。
「警察って、何をしにいくんですか?」
「借りるのですよ。そこに何かあると思います」
「借りるって、何をですか」
聞いても返さず、スタスタと進んでいく有壁さんに、結局もまた着いて行くしかなかった。
「無理ですって有壁さん。幾ら何でもその頼みごとは無理です」
五橋警部が心底困った表情で話す。
有壁さんは警察に着くや、五橋警部を呼び出して交渉を始める。
遺留品のパソコンを貸してくれと。
「五分で良いんです。少し気になることがあるので貸してくれませんか」
「幾ら有壁さんの頼みでも、それだけは勘弁してください。遺留品を勝手に持ち出しなんてバレたら流石にヤバいですよ」
「大丈夫ですよ。バレなれば」
「そんな無責任なことを言わないでください! 処罰は俺が受けるんですよ」
「ですが、この事件を自殺で片付けたら、もっと不味いのでは?」
「えっ? ちょっとそれはどういう事ですか?」
「さあ? まだ確証のないのない事なので教えるのは捜査のかく乱になりますので控えておきます」
「十分にかく乱されてますよ。どういう事なんですか? 何か分かったんだですか?」
「分からないから調べたいのです。黒田さんの使っていたパソコンを」
「ですが、それは...」
と、ここで腕を組んで考え込む五橋警部。相当悩んでいる表情をしている。
「まあ警察がこのまま自殺で済ませても何ら問題はないことですからね」
「ちょっと待ってくださいよ。いきなり、そんな事を言われたら」
「そうですよね。困りますよね。ですから、これは私の心の中に留めておきましょう。お時間を取らせてしまい申し訳ないです。これで失礼させていただきます」
「わ、分かりました! 何とかお貸ししますから、教えてください」
「流石は五橋くん。話が分かる人で助かります」
傍から見れば脅迫染みた駆け引きだ。あんな事を言われたら誰だって首を縦に振るしかない。
怖い。笑顔で話す有壁さんが怖く感じる。
その後、会議室に通されて待つこと二十分程。
「お待たせしました。何とか拝借してきました」
手に抱えられてきたノートPCを有壁さんの前に置く。
「十分以内でお願いしますよ。後、これも使ってください」
そう言って白い手袋を渡す。
「これはどうも」
手袋をはめると早速PCを開く。
警部の言っていた通りにキーボードには大量の指紋の付いた血痕が残っている。
「それでこの事件に何があると言うんですか有壁さん。いい加減、教えて貰えないと必死になって持ってきた甲斐がないです」
「その事についてですが、違和感を覚えたのはまず自殺の仕方です」
「自殺の仕方?」
「そうです。そもそも自殺に関しては大きく分けて二種類に分けられます。計画的な自殺と突発的な自殺に」
「はあ?」
首を傾げている警部。私もニュアンス的には理解できるが。
「前者は色々と準備を重ね、身の回りを整理したのちに行うもの。ですから、割と不審な行動が目につき、遺書も残して動機もしっかりとしている」
「まあ、確かにそうですね」
「対し後者は蓄積した鬱憤が決壊して、もう死ぬこと以外は考えられないような自殺です。飛び降りなんかは大概はこれに当てはまるのではないでしょうか」
「何となく分かる様な気がしますが、それが今回の自殺と何か関係があると?」
「不自然過ぎます。そもそも死のうと言うのに、何故、腹部を刺したのか? 切るにしても手首や頸動脈を切った方が楽に逝けると言うものです。それをわざわざ痛みも残る腹部を裂いての自殺。ここがどうにも腑に落ちません」
言われてみればそうかもしれない。切腹ってのもあり得るかもしれないけど、わざわざするようなことじゃない。
「そして次に残された遺書です。これが明らかにおかしい」
「おかしいですか? 自殺するのに遺書を残すのは普通なのでは?」
「順番がおかしいのです。書いてから刺すなら分かりまずが、刺してから書くのは不自然極まりない」
あっ、確かに。血が付いてるってことはお腹を切ってから遺書を書くのはおかしい。初めから書いておけばいい。
「ここから推測されるのは隠蔽しようとしたのではないでしょうか」
「隠蔽ですか? 一体、何を隠そうと...」
「腹部に刺された包丁。刺された後に書いた遺書。もしかすると黒田さんは誰かに刺されたのを隠そうとしたのではないのですか」
「刺された? これは自殺ではなく他殺だと言うのですか?!」
「あっ、パスワードを教えてくれますか」
PCを立ち上げて起動画面が映る。
警部が八桁の英数字を伝えて打つとデスクトップに切り替わる。
「あくまで可能性の話です。確信も証拠もない空論です。ただ無い可能性ではない」
「でも、何で刺された相手を庇うようなことをするんですか?」
「それが刺されても構わない、仕方がないような相手だったのではないですか。例えば恋人。もしくは親友。あるいは家族」
数個あるフォルダーを開けていく有壁さん。
「そして、残された遺書にはこう書かれています。『先に逝く親不孝者を許してほしい』と。つまりこれは家族に残した遺書であり、もしかすると意図的に親を容疑者から外しているのではないのですかね」
「しかし、そんなことがあり得るのでしょうか」
「さあ? 先程も言いましたがあくまで可能性の話。私の話を鵜呑みにするか戯言捉えるかは五橋くん次第です」
「そんなことを言われましても。こっちとしては証拠も物証もないので...」
「とりあえず、行動は早めにした方が良いかと。昨日の今日なのでまだ証拠が残っているかもしれませんよ」
「ですが...それは...」
頭を抱えて悩んでしまう五橋警部。確かに何も確証はないし、ただの有壁さんの考察でしかない。でも真実味はあると思う。
で、推理が終わってもまだPCを操作する有壁さん。まだ何かを探している様だが。
「どうしたんですか有壁さん。見たかったのは黒田さんが残した遺書じゃないんですか?」
「いいえ。それはついでです。私が本当に知りたかったのはこれですよ」
「えっ? なにこれ」
それはフォルダーに詰め込まれた大量のテキストファイルだった。
後日。
自殺の件は殺人事件と発展した。
あの後、悩みに悩んだ五橋警部はもう一度現場を捜索したらしい。そこで血痕が付いた衣類がゴミ箱の中から発見されたらしい。衣類の持ち主は黒田直樹さんの母親だったのこと。
警部から聞いた話ではあの日、直樹さんと母親が仕事のことで口論になった模様で、なかなか働きに出てくれない母親が包丁を持って脅して説得しようとしたが、揉み合いになり、その最中で謝って黒田さんの腹部に刺さったらしい。
母親は刺してしまった混乱する中、直樹さんは直ぐに身体を洗い、誰でも良いから人と会うようにと話したと言う。
結局、怖くなった母親は言われた通りに行動。そして帰ってきたらあの状態だったらしい。
「でも、遺書を書いたりする時間が有ったのなら救急車でも呼べば良かったんじゃないですかね?」
ここで私は疑問に思ったことを有壁さんに聞いてみた。もしかしたら、助かったのかもしれないのに、何で死ぬことを選んだのか不思議でならない。
「きっと、親孝行でもと思ったんじゃないですかね」
「親孝行?」
「例え助かっても母親は殺人未遂の犯罪者。そんな事になるのなら、いっそ自分が自殺したことにしてしまえば良い。と言う考え方はロマンチックではないですかね」
「あー、まあ、確かにそうかもしれないですね」
「人間死ぬ時は色々な事を考えて亡くなると思うのです。後悔や無念を思い、怒りや悲しみを抱えて逝く。でも、中には黒田さんの様に残される人のことを思って亡くなる方もいる。これはあくまで私の考えではしかないですか、そういう考えの方が僕は好きですね」
「そうですね。私もそう思います」
結局、その思いとは裏腹に母親は捕まってしまったけども。
「そう言えば、どうなんですか? 面白いんですか、黒田さんが書いていた小説?」
有壁さんがPCから見つけた大量のテキストファイルは黒田さんが書いていた小説だった。
黒田さんがやりたかったこと。それは小説を書く事だった。
その後の調べによると黒田さんは学生の頃から書いており、知っているのは一部の友人のみだったらしい。恥ずかしがり屋でなかなか趣味については話さなかったと言う。
そして、彼は近々、本を出すことが決まっていたらしい。メールを調べると何回か出版社と打ち合わせをする内容の物がみつかった。
「けど、死んでしまっては本を出す意味はないですよね」
「いえ。母親はぜひして欲しいと言っているそうですよ。最後に息子がしたかったことだからどうしても、と」
「へえー。で、本を出せる位ってことは面白いんですよね」
黒田さんが書いた小説を何作かプリントアウトして読んでいる有壁さん。どうしても見たいと無理言って五橋警部に印刷をしてもらったものだ。
「そうですね。まあ、普通かと」
「普通、ですか」
何とも気の抜けた答えが返ってくる。
「これなら、まだ今回の事件の方が面白いですね。まさに真実は小説より奇なり、です」
そう言って紙を机に置き、コートを着る有壁さん。
「あれ? お出かけですか」
「はい。まだ吉田おばちゃんのところのタマが見つかっていませんからね。今から探しに行きますよ。ほら、愛佳さんも準備して」
「ええっ、そんな!」
「仕事は最後までやらないといけませんよ。でないと、今回の件を姉さんに報告しないと...」
「わ、分かりました! ですから、それだけはご勘弁を」
そんな事件に巻きこまれたとか父親の耳に入ったら絶対に連れ戻される。それだけは何としても阻止しなければ。
「では、参りますか。何、前回の点を踏まえて探せば直ぐに見つかります」
「だと、良いんですが」
ダウンジャケットを羽織り、渋々、部屋の暖房を切る。
「ただ、今度は知らない敷地に入って、死体などは見つけないでくださいね」
「二度とやりません」
こうして、今日もまた私は猫探しへと駆り出した。
自殺探偵 ぽこぺん @pokopen_sa10
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