第41話
二人が考えた作戦はこうだ。
まず、庭に大量の攻撃は魔法を仕掛けておく。
次に、姿を見せたら大量の魔法を発動し、レイブンを庭におびき寄せて庭の中央部に誘導する。
そして、誘導した地点で、攻撃と拘束を同時に行い、更に強力な攻撃で行動不能にする。
「なかなか、大変だったけど結構上手くいって良かったよ」
実はこの作戦の要は、魔法を使った浅葱ではなく、忠泰であった。
忠泰はどの辺りにどの魔法を仕掛けているかを暗記し、どの攻撃をどのタイミングで発動すればポイントに誘導出来るかを考えて誘導していた。
「作戦は、ほぼ忠泰が考えだもんね」
「まぁ、この魔法がないと作戦も成立しなかったけどね」
目の前の庭を焼く、強力な紅蓮の炎を見た。
「
「……でも、本当に大丈夫かな? あの人、ヤバイんじゃない?」
あまりの火の勢いに少し不安に襲われる。
「まぁ、もうちょっとしたら家に燃えうつる前に火を消すよ」
魔力で構成された炎は簡単な物理的に消すことは難しいが、魔力を断てば簡単に消える。
あと数分もあれば、あのレイブンを行動不能に出来るだろう。
「何、それには及ばんさ」
その一言で、あれだけ力を誇っていたはずの煉獄火炎は跡形もなく消え去った。
「な⁉︎」
その体には煤がついたり、多少の火傷があったりはしたが、ほぼ無傷であった。
「やるではないか」
その表情はどこか楽し気だった。
「最初に右手だけしか使っていなかったのは、両手同時に使うことが出来ない、と勘違いをさせるためであったか」
一歩、足を進める。
「そして、攻撃にいろいろな魔法を使っていたのは、様々な方向から攻撃することで、誘導されている事に気づかせないためであったか」
更に一歩、足を進める。
「面白い。考えたのはどっちだ?」
「……僕だ」
その答えを余り意外に感じていない様だった。
むしろ、当然であるかの様に見える。
「楽しませてくれる」
「どうして効かないの⁉︎」
あれだけの大出力。広範囲。避けることも防ぐことも出来ないはずだ。
「そうだな、それ位は伝えておこうか。私の魔法は『死』そのものをぶつけて生命活動を中断させる魔法」
それは、他者には漏らせない機密であるはず。だが、大したことないとでも思っているのか、渋る様子もなく堂々と話す。
「そのために様々な死を調べた。日本神話、仏教、キリスト教、イスラム教、ギリシャ神話、北欧神話、エジプト、中国、インド。果ては病魔なんて物も研究・解析して、死を再現した」
つまりは死神研究者。
「そして、閻魔、オシリス、プルートー。これらは死を司るだけでなく、死の世界の王でもあった」
死の世界……つまりは、
「分かるかい? "冥界の砂"なんて
「死神でも気取っているの?」
フッ、と笑う。決して彼は否定することはなかった。恐らくは、彼は本当に死神になったつもりなんだろう。
「さて、答え合わせはお終いだ」
そう言って、一歩前に踏み出す。
「策があるなら早く出した方が良い」
そんなものあるはずもない。とっくにネタは出し尽くしている。
二人の眼前に死が一歩ずつ迫って来る。
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