第十三章 オリオン通りの怪
1
消毒しなければ。止血しなければと。焦る。
オリオン通りの『マツキヨ』で包帯と消毒薬を買うことにした。
アーケード街なので車では入っていけない。
東武デパート前の信号機は赤が点滅しているだけだ。
信号を守るものなどいない。特に学生のマナーがわるい。例え、信号が赤にかわっても、無視する。歩行者はスクランブル交差点を歩くように入り乱れる。赤の信号に誘われて喜々として興奮する。信号など目に入らない学生があふれかえっている。それでこうなってしまった。赤信号が点滅を繰り返している。
いつでも赤信号の点滅。
デンジャラス・ゾーン。
テレビでも報道された。
……いつまでも続く赤の点滅。若者たちは、その赤の点滅信号すら見ていない。中空に濁った眼を向けている。いや彼らの両眼は赤く濁っているようだ。犬歯をむきだしにしている。ヨダレをたらしている。
彼らは公共の道路を横断しているのだと気づいていない。現実を無視し、受け入れることのできない、キレタ若者。
どうなっているのだ? なにが起きているのだ。
宇都宮がすっかり変わってしまった。道路いっぱいに広がる歩行者で車が進めないでいる。車は警笛を鳴らし続けている。道いっぱいのナイスガイやメチャマブ・ガールの群れはとぎれない。それどころか下校時とあって学生のグループは増加するばかりだ。
なにかに操られている。ストッキングを被ったようなノッペラボウな顔。日常がここでも歪みを生じている。
2
ルノーはデパートの駐車場に入れることが出来なかった。
満車、の赤い表示ランプに拒まれた。いままでこの時間帯だったら、満車になったことなどなかったのに。
おかしい。なにかがおかしい。なにかが変わってしまった。
なにか起きている。
なにか、なにか、なにか。不透明なことばかりだ。
どこにいっても、赤赤赤だ。吸血鬼のすきな赤だと隼人は気づいた。吸血鬼のすきな赤い色彩の洪水だ。
そして、隼人のながす赤い血。止まらない。デパート脇の有料駐車場にルノーは停めた。
北関東随一といわれるアーケード商店街。『オリオン通り』にも異変は満ちみちていた。特殊プラスチックの天井は丸みをもたせてある。通りは巨大な円管のようだ。想像を絶する生き物の腸のようにのたくっている。
その空間も妖気にみちている。理由は、街のはずれにある大谷の廃坑のようだ。吸血鬼の牙城である大谷の廃坑まで続く道路。
暗い洞窟のようにアーケードが思える。アーケードは大谷の妖気を吸いこんでいるのだ。
いかなる残虐な行為も――ここでなら、実行できそうだ。
3
この通りにあった宝石店が襲われた。ガソリンをまかれた。店内は全焼。女子店員が6名も無残にも焼殺された。ひとびとの記憶にある悲惨な事件だ。宝石店の在った周辺にはいまも妖気がもうもうと湧いている。殺された店員たちの怨念のすすり泣きが聞こえてくるようだ。
あのころから、このあたりは異界にとりこまれてしまったのだ。
アーケード街には邪悪な波動がどぶ川のようにながれている。いままでどうしてそれに気づかなかったのか。痛みを抱えているので感覚が敏感になっているのか。
いやちがう。夏子の感性がおれに憑いたからなのだろう。
セーラ服のメチャマブが、新書版ほどもある携帯用の鏡に顔を映している。
女子学生は、魂を抜き取られたように、ぼんやりとただよっている。
周囲のことなどてんで気にしていない。
周囲のことなどまったくおかまいなし。
そういう学生は多い。どうもこれは異常すぎる。後をつけた。
血をながしているのに、じぶんのことより、なぜか鏡の女の子が心配だった。
「うすくなっていくのよ。顔が映らなくなったらどうしょう。どうなっているの」
左手に鏡。右手に携帯。友だちに話しかけている。
「ね、どうなってるの」
しげしげと顔を映して見ている。
鏡が青白い反射光を放つ。おれの顔にもあたる。
めまいがした。麻酔でも注射さたような、不思議な脱力感。よろける。目の前を女子学生が歩いている。アヒル歩きだ。パタパタ足裏を舗道にたたきつけるようだ。お尻が左右に揺れている。脚がOになっている。昼間なのに、街灯が灯っている。
レストラン『宇都宮』などシェイドを下ろしている。
路上にボッカリと空いた地下への階段。
巨大な軟体動物のようにうごめいている。
イラッシャイ。
いらっしゃい。
イラッシャイ。
ひとを内部に吸収しようとしている。内部にまるで吞みこもうとしているようにうごめいている。空気には腐臭が含まれている。
これだ。驚いて立ち止まった。
半地下にあるレストラン「羅・宮」の換気扇が発生源だ。
換気扇には油脂がこびりついていた。
油脂のためにどす黒い換気扇から吐きだされる空気まで汚れている。
厨房から排出された空気なのだろう。
アーケード街に吐きだされている汚れた空気。
それだけではない。空気が汚れている。そんな単純なことではなかった。空気が腐っている。妖気が混入している。レストランの厨房だけではなく、食材倉庫にでも妖気の凝集箇所があるのかもしれない。しかし、これは食材の腐敗した臭いなどではない。
そうだ、と思いついた。なぜ、この腐臭を嗅いで驚いたのか。
大谷の廃坑のじめじめした地下の臭いだ。吸血鬼の住む場所の臭いだ。
夏子と廃坑に潜入した場所で嗅いだ。
小動物の死骸がごろごろしていたあの洞窟の腐臭だ。
4
巨大なかまぼこ型のアーケード街の上のほうまで妖気がただよっている。
渦をまいている。おれはこころの回路を夏子にむけて全開した。この距離からなら、念波はとどく。夏子にアクセスできるはずだ。意識を夏子に集中する。
「夏子。夏子。夏子」
夏子を感じることはできる。でもかすかにだ。まだおれの力ではだめなのか。危機は知らせることができたと思う。
でも、思うように意識は伝わらない。
「隼人。わたしを呼んだのは隼人でしょう」
携帯が着メロを奏でた。夏子とたがいに携帯を持ち歩くようにして、よかった。祖父がメカぎらいなので、遠慮していた。今朝、別れてきたばかりだ。それでも、しばらく会っていないようななつかしさがある。
爽やかな声が携帯から流れてきた。
「夏子。街が変だ。宇都宮の街に妖気がただよっている」
ウツノミヤとゆっくりと発音した。意識が遥かな過去にとんだ。夏子のこころとシンクロしているからだろう。これは夏子の記憶だ。ぼくは夏子の意識の中にいる。
夏子の記憶の集積回路とシンクロしている。
宇宙の都。宮殿。宇 都 宮。
「そうよ、隼人。鹿人兄さんは、首都機能が那須に移転されるから、この地方を制覇するものが、日本を征服する。日本を制するものが世界の覇者となる。なんでカッコつけていた。ちがうの、宇都宮はね、わたしたち吸血鬼族が大古、日本に降り立った初めての場所なの。それで宇宙の彼方の故郷を想ってつけた地名なのよ。だからこの地の吸血鬼の長にはほかのセクトの一族を支配する権限がもともとあるのよ」
「妖気が濃くなっていく。めまいがする。太股から血が流れて止まらない」
「どうして、それを先にいわないの」
「鬼島に刺された」
「吸血鬼の唾液がぬりつけてあったのね」
血が止まらないと聞いて、夏子がウッと息をのむのが伝わってきた。
「話つづけて。気力が萎えると吸血鬼に意識を乗っ取られるわ。コントロールされるわ……いまそちらに向かっているから……吸血鬼に気づかれないように――悪の波動に捕らわれないように、どこか路地裏に身を隠して。動かないで」
5
「夏子まさか……」
「そうよ。いますぐいく」
「夏子――。むりするな」
「そうよ。昼間からコウモリになったの。こうでもしないと愛する隼人を早く救えないの。できるだけ、繁華街から離れた薄暗い人目につかないところに移動して。イマスグニイク」
夏子の声に励まされた。至福のよろこびが体のすみずみまでしみわたった。
よろよろと歩いた。夏子がおれを助けるためにコウモリとなってこちらへ向かっている。彼女は必死でおれに向かって飛んでいる。うれしい。オリオン通りから、路地に退避した。建物の外壁に背をもたせて、へたりこんだ。
ひんやりとした大気と地面に、小刻みに震える体をゆだねた。いや、震えを止めようとしているのだが、顔まで冷たくなっていく。とめどもない震えは、おれの全身に及び、鳥肌にすらなってしまった。顔がざらついているのがわかる。ぶつぶつしている。路地にごろりと倒れそうだ。そんな惨めな姿を夏子には見せられない。見せたくない。倒れ込みそうなのを堪えていると――
「はい、オマタセ」
バサッと羽音がした。目には見えない大きな翼の音。
空気を振動させる音がした。
夏子がそこに降り立っていた。夏子はニチバンの絆創膏に彼女の念をそぎこむ。傷口に唇を寄せる。なめる。ゾクッとする快感。隼人の太股に絆創膏を張る。痛みがうすらぐ。
「これで出血も止まるはずよ」
吸血鬼の唾液まみれの銀のブレードで刺されたのだ。鬼島は癖でナイフをなめていたわけではない。なめることで、吸血鬼のドクをナイフに塗っていた。
なんてヤツだ。なんて邪悪な。
なんて、恐怖をもたらすヤツだ。
それにしても、銀に弱くなっているとは。
夏子に軽く噛まれた。血を吸われたわけではない。
疑似吸血鬼症候群に侵されている。
「だから血がとまらなかったのよ。隼人ごめんね。アンビバレンスなのよ。感覚がするどくなったり、跳躍力が飛翔能力といっていいほど力がついた。視覚や聴覚、嗅覚がするどくなった。夜目が利く。でもこういうことになるとは、わたしも知らなかった。ごめんね。隼人」
「いやうれしいよ。これで夏子と同じように感じ、同じように生きていける」
「……だから血が止まらないと聞いたとき、すごく驚いた。ごめんね隼人。こんなことになるって知ってたら……」
「夏子の生きてきた時間に比べれば、ぼくら人間の生なんか一瞬のことだろう。うれしいよ、これで夏子といられる時間がすこしは永くなった」
「若いのにそんなこと考えていたの。まだまだ人生これからだわ」
夏子が泣き笑い。止まらない血は、もういちど吸血鬼の唾液をぬらないかぎり、噛まれたものは出血死をまぬがれない。
それを知っている夏子の敏捷な行動に救われた。ふたりはしっかりとだきあった。
「だからこんどはなにかあったらじぶんの唾液を塗ることを忘れないで」
それを知ってのよろこびだった。夏子といっしょにいられるなら吸血鬼になってもいい。
オリオン通りにもどった。
「ひとには見えない妖霧がたしかに漂っているわ。妖霧に吸血鬼の血、その成分が混じっている。これを吸い込むと疑似RF体質になるの。ひとりひとり噛んでいたのでは、従者をふやすのに苦労する。RFを増殖させるのに、こんなセコイ方法を思いついたのね。どこかに霧の噴出穴があるはずよ。歩ける? むりならオンブシテあげようか」
レストラン「羅(ら)・宮(みや)」の換気扇からはたしかに妖霧はでている。
でも弱すぎる。薄すぎる、と夏子。
「たぶんマンホールだ。マンホールは大谷までつながっているはずだ」
「ピンポン、それだわ。アッタマいい、隼人」
きらびやかに飾り立てたショウインドウーが両側につづく。
ブティック。
宝石店。
香水専門店。
宇都宮餃子屋。
閉館になった映画館。
カレー専門店。
乾物屋。
書店。
妖霧は低く這っている。
「たしかに邪気はあの換気扇からも吹きだしているわね」
夏子が隼人のことばを受けていう。
「でも、この臭いにはたしかに、下水からよ。下水の臭いがする」
換気扇から吹きだした邪気が妖霧とまざりあってさらに濃くなる。空気中ににじみでている。
「やはりマンホールだ」
「そのようね」
6
夏子が悲しそうな顔になる。
路地への曲り角にあるマンホールの蓋から濃霧が吹きあがっていた。むろん、妖霧だ。
暗黒の地下を大谷から? ながれてきた妖霧なのだろう。
あの地下採掘場。廃坑からだ。
吸血鬼の巣窟からだ。妖霧は若い女の子がとおりかかると生き物のようにからみつく。体をなめま わすようにからみつく。襟首のあたりにまとわりつく。ぴちやぴちやと血をすっている。錯覚だろう。女の子の体が揺れた。妖霧が離れていく。
妖艶な姿態にかわっていた。まだあどけない笑みをうかべてはいるが、男をからめとる顔だ。妖霧にとり憑かれ脳を娼婦として操られている。彼女たちの熱い流し目から逃れるのはむずかしそうだ。この女の子の変身――怪異な現象にだれも気づいていない。
「どうしてなんだ」
「見えているのはわたしと隼人だけ。だから怖いのよ。普通の人にはなにも見えていない。この妖霧さえ見えない。感じられないの。だから怖いのよ」
本人も操られていることなどわからない。なにをしているのかさえわからないのだろう。だからこわいのだと夏子はいっているのだ。手鏡に携帯の女子学生が漂っている。がんがん携帯をかけまくって男をさそっている。BF募集キャンペーン実施中。そんな感じだ。
「キライ。こんな、顔。オヤからもらった顔なんかきらいだもん。ほらだんだん薄くなっていく。こうなったらガン黒化粧するきゃないわ。……そのほうが好きよ。ね、アンチヤンにもわかっぺ。わたし玲菜。ね、わたしとツキあってよ」
妖霧にとりつかれると鏡に顔が映らなくなってしまうらしい。
さすがにそのことには気づく。それで厚化粧のガンクロ娘が増殖していたのだ。
「きみらのたまりばどこ」
「うれしい。それって玲菜のことナンパしてるんだ。そうだっぺ」
まざりっけなしの宇都宮弁でよろこんでいる。かわいいあどけない顔をしている。玲菜は妖霧を吸いこんだだけではなかった。
噛まれていた。この娘は直接噛まれた。噛まれてRFにされたのだ。首にネッカチーフをまいていた。血がにじんでいた。ポッチャリして色白。
血がおいしそうだ。いけない、こちらも、おかしくなってくる。
隼人はあわてて反省する。玲菜は吸血鬼好みの顔をしている。
直接噛まれる栄光によくしわけだ。妖霧がスープのように濃くなった。
かつての繁華街、松が峰に残って営業している「宮の夜」。
地下にあるクラブに誘われた。夏子が同伴しているのは見えていないようだ。
夏子が穏形しているからだ。地下への階段を下りる。
妖霧はさらに濃くなる。分厚い黒の扉をあける。
むあっとタバコのけむりがおれを向かえた。
むろんタバコの煙には妖気が混入している。
「夏子、タバコの煙は……? がまんできるかな」
「それほどきらいではないから」
夏子を気づかったおれのほうが咳きこむ。
「みなさん憑かれているようね」
「この霧が街全体をおおったらたいへんなことになる」
「そういうこと。この霧の中では、RFでも真正の吸血鬼のように強くなる」
「ねえっ。なに独り言いってるの。おどっぺよ」
玲菜の口元で犬歯がニョロっと伸びてきた。
「吸わせて。吸わせて」
犬歯が下唇の下まで伸びた。鋼のように光っている。
「またね。こんどにしましょう」
夏子の指が玲菜の歯をパンとはじいた。長く鋭い二本の犬歯が夏子の手のひらにのっていた。
7
「いまの悲鳴聞かれた。ひとまずここはひこう」
「そうね。まだ人間にもどれるひとたち相手に戦えないもの」
遅かった。取り囲まれている。シユツと威嚇音を発している。いままで踊っていたものたちだ。包囲網をちぢめてくる。夏子がおれを抱え込む。
「ぼくも自力で跳躍できる」
ふたりは階段の登り口をにらんだ。背中で羽ばたきが聞こえたような気がした。
夏子と手をつなぐと地上の階段めがけて飛んだ。
「いつも、いつしょだ」
「そうよ。いつもいつもいっしょよ」
しっかりとにぎりあわされた手から夏子の鼓動を感じていた。
彼女のこころがしみこんでくる。
「そこまでですよ。ラミヤ姫」
からかわれている。鬼島が待ち伏せしていた。こんどは田村もいる。
「どうして、わたしたちをほうっておいてくれないの? わたしは、隼人といっしょにいられればいいの」
「それがもんだいなのです。ふたりで生活すれば妊娠するでしょうが」
夏子がほほを赤らめた。からかわれている。
「わたしが幾つだと思っているの」
「高年齢出産、てこともありますから」
からかっている訳ではないらしい。
「鹿人さまは、ホワイティ――血の吸えないバンパイァがひとりでも増えるのが耐えられないのです」
夏子の顔に紅がさす。
「バカいわないで。わたしが何歳だか知っているの。あんたらが、RFになる幾世代も前からずっと生きているのよ」
「それでも、人と吸血鬼の間に生まれたラミヤ姫――夏子さまには人を愛するDNAが流れているそうです。人を愛することができれば、それが結晶する。妊娠するはずだと、鹿人さまはお考えです」
「そういうことね。だから……丁重に出迎えしてくれたわけね」
夏子が鬼島と互いにけん制し合っている。
「隼人すきみて逃げましょう」
夏子はおれ太股の傷を心配している。
「隼人だけでも、先に逃げて。ここでは戦えない。人目がありすぎる。ここのRFが敵では戦えない。まだ彼らは、人にもどれる可能性かある。噛まれたわけではない。ガスをすっただけだから」
夏子とおれにだけできるこころの会話だ。
階段からはRFがうじゃうじゃわきでてくる。なにかおかしい。なにかしっくりとしない。おれと夏子が愛し合うようになる。これほど深く愛し合うとは……。あの段階では……。鹿人にはわからなかったはずだ。かんがえ過ぎて……。逃げるチャンスを逃してしまった。鹿人の夏子への憎しみははんぱではない。夏子が心のキレイなバンパイアを生むことを恐れている。ホワイトバンパイアがふえることを恐れている。ただそれだけの理由で、夏子を、襲うのか。
それで夏子の抹殺を……くわだてているのか。鬼島が間合いをつめてくる。
夏子とおれはビルの壁際に追いつめられた。
それでも、じりじりと右に移動する。
右側、すぐそこに教会の尖塔に十字架が見えてる。
茜色の空に白い十字架が光っている。鬼島がさらに間合いをつめる。鬼島の手にナイフがきらめく。田村もナイフを光らせている。
もうこれまでだ。おれは太股を刺されたナイフを素早く取りだす。
田村に向って投げつける。手ごたえはあった。それを確かめている余裕はない。さらに腕をふるった。こつぜんと、剣が現れた。大学の駐車場では遠山や信孝がいた。それで抜けなかった破邪の剣だ。魔倒丸だ。魔倒丸を正眼にかまえた。
その剣気は、鬼島を圧倒する。
「どこに隠し持っていた……のだ?」
魔倒丸の一閃は……。ナイフごと鬼島の腕が中空にまった。
なまなましい切り口からは……。吹きだすはずの血はみられない。
「むだなことだ。いくらでも再生する」
「そうかな」
「そ、その……剣は」
「こぞんじ、魔倒丸だ」
「ちくしょう」
鬼島が無念の形相。
「イマゴロキズイテモ、遅すぎます」
おれは余裕を見せる。鬼島の絶叫が薄闇にこだまする。
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