6 学校では話さない
翌朝。
いつもと同じ始業の五分前、駐輪場に愛車を停めた恭平はイヤフォンを付けながら廊下の端の一年三組の扉をくぐる。自分の席は入口から四列目の後ろから二番目。小学校の時はバスに見立てて二号車と呼び、中学では何故か『
理由は勿論。
「あ、長江君。おはよー」
などと今朝も微笑んでくれる二列目真ん中にいる同中の美少女・
「あ、うん、お、おひふょぅ」
と爽やかに返すためだ。
「うん、おはよ」
少年のぼそぼそ声にも再びにこりと返事をくれた御園さんの鈴声で、恭平が爽快な朝を迎えていると。
(……きも)
と、とても悪意のこもった思念波を受信した気がして振り返る。
見れば、
「でさー、その店長がさーぁ……」
とまるでその声が幻聴だったかのように話を続けている二つ結びの元気な女子と、それにこくこくと頷いて聞いているショートボブ――と言うよりは洒落こけしと言った方がしっくりくる頭のおチビさん。
それからそんなのぺっとしたこけし頭の平らな横顔と自席につこうとする恭平の方を、頭の上に可愛らしいフォントで『?』を浮かべてあれれと見比べている黒髪ロングの御園さん。
ああもう、今日も可愛いな。何て言うか、仕草が可愛い。存在も可愛い。小動物っぽくてほにゃっとしてて丸顔で愛らしいのだ。
そう思いながら席に座ると、額に冷たい視線の気配。
『調子に乗るなよ』
まるでテレパスみたいに尾張ユリカの雄弁な猫瞳が語り掛けていた。
『雑ヶ谷PR委員会』を名乗る組織から面接場所を知らせるメールが届いたのは、その週の木曜日。ホームページにあった《応募フォーム》の送信ボタンを押してから、三日も経たないウチのことだった。
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