僕はNPCに恋をする
蒼猫
第1話
「急な呼び出しなんて珍しいね。」
「まぁね」
「突然なんだけどさ、好きな人できたから別れてくんない。」
え?どういうこと?いきなり別れろって、意味がわからないんだけど。
「どうして?僕になにか不満でもあった?」
「不満って言うか、率直に言うと"飽きた"かな。」
"飽きた"ってこいつから告白してきたのに何でだよ。本当に意味がわからないんだけどと言うか好きな人って誰だよ……
取り敢えず聞いてみないことには何とも言えないか。
「好きな人って誰かな?」
「好きな人って言うかもう付き合ってるんだよね。」
こいつ、よく飄々とそんなこと口にできるな。
「今の彼氏は楓もよく知ってるこの人だよ。」
は?まじで言ってんの?なんでお前なんだよ!
「おい。なんで祐太なんだよ!友達なのに人の彼女奪うってなに考えてんだよ!」
「言いがかりはやめろよ、千夏が俺に迫ってきたんだぜ。」
「祐太だってその誘いに乗ってるからお相子でしょ!」
「そりゃそうだな。ククク、お前さ俺が友達だとかおもってんのか?」
「そうだけど……お前は違うって言うのかよ!」
「おう、全然思ってねぇけど。」
「なんで……なんでだよ!あんなに会話したし遊びにだって!」
「会話?遊び?そんなで俺の友達気取ってたの?バッカじゃねぇーの!」
「お前、クソみたいに面白いな!ぜってえーこれまで友達居なかっただろう。」
お前になにがわかるんだよ、ずっと一人でいた俺が唯一話しかけてくれたお前のこと友達だって、親友だって、思うのは当然だろうが……
「なんなんだよ…」
「じゃあな、残念で馬鹿なぼっち君。これっきり話すことも無さそうだが元気でやっとけよ。アハハハ」
すべてが過ぎ去ってから数分がたち、すべてが崩れ去るのを感じた。心が割れる音が聞こえた。
そうか、俺は友達だと思っていた奴に裏切られ、あろうことか彼女まで取られたんだ。
その日俺は、どうやって帰ったかも分からないが、いつの間にか家についていた。
この日を境に俺は人が怖く感じるようになった。
次の日、学校に行くとクラスのそこらからそれまで一切なかった罵声が浴びせられた
「なんで来てるの、ぼっちの雲野。」
「このクラスにお前の居場所なんてねーよ。」
「前から祐太の後ろでコソコソしてたからいい加減頭にきてたんだよな!」
「さっさと消えろよ!ゴミが!」
昨日あんなことがあった俺の気持ちが折れるのは早かった。その日は体調が悪いと早退した。次の日学校を休むと次第に学校に行くのが辛くなっていき、ついには引きこもる様にまでなってしまった。
俺は、そんな生産性のない日々のなかで唯一楽しめるものを見つけた。
それは、ネットゲームだ。1人ででき尚且つ自分を裏切ることないNPCのいるセカイへと段々惹かれていった。
はじめは、1日1、2時間が限度だったが1ヶ月も経つと1日中やり続けることも可能になっていった。幸い親の残した遺産であと10年くらいは持ちそうなのでこの生活が続けているが、大学にも行かないといけないからそろそろ学校に行かなくちゃいけないな、と思いながらずるずると1年がたち、俺は高校生活3年目を迎えた。
僕はNPCに恋をする 蒼猫 @kagu0730
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