Philia

@penntomino121

第1話 欲

巨大なモニターがあちらこちらのビルに取り付けられていて、今日もジャンジャカ激しく音を出している。駅から出た途端にこれだ。去年の私はこんな所に自分が居るなんて考えてもみなかった事だろう。先生や学校が指定した教科書やノートや参考書やらを入れたカバンは今日も馬鹿みたいに重くて、カバン本来の大きさの2倍くらいには膨らんでいた。それを背中に背負い、今日も学生の本業である学業を終えた。

私、川西 明菜(カワニシ アキナ)は花の女子高生となったばかりだった。

ぶっちゃけ、小学+中学は「ど」が付く程の田舎で育ち、そこらの山や川や海を駆け回っていたが、このままでは「青春」という人生に一度しかないボーナスステージをドブに捨てる事になると中3の春に気付いた。

なぜ気付いたかというと、いとこの夢(ユメ)の唐突すぎる告白からだった。


その日は何の変哲もない普通の日。

桜は丁度今が一番の見ごろだとニュースで伝える程、満開で観光客もちらほらと目につく時期だった。

何もすることがなく、一昔前のゲーム機片手に親に叱られぬように

コソコソ部屋でゴロゴロ惰眠を貪っていた時だった。

もちろん、恰好はパジャマである。

親から誕生日プレゼントにと送られたガラケー(中古)が机の上で鳴ったのだ。

着信音は某国民的アニメの姉さんが弟を叱る声である。

確かに国民的なアニメで親しみはあるし、電話が掛かってきた事は一発で分かる。

いや、これで分かっちゃうという慣れが怖いけど。

というか、確かに携帯欲しがったよ?ねだったよ?

おそらく皆様一度は親に使ったであろう伝説のセリフも言いましたよ?

「みんな持っているんだよ!」

でもこれはないよ。田舎でもさすがにみんなスマホ持ってるよ。

滅多に鳴らない携帯が鳴った事実に驚きながら、そんな回想に耽っていた。

しかしこのままでは切れてしまうのでそのまま相手をよく見ずに電話を取った。


すると、馬鹿みたいに甲高い声が私の耳を攻撃してきた。


「あ、もしもし~?明菜~?だよね。笑

ちょっと聞いてよー。私リア充になったさ(ドヤぁ)ぎゃはははははは!!」


ブチッ…

みたいな感じで

ほんとに伝えたい事だけ伝えたみたいな。


私の友達でこんな声の持ち主は居なかったような気がする。

嵐のように過ぎ去った子は一体誰なのだろうと。

相手を恐る恐る確認すると、夢だった。


固まった。フリーズした。

思考が停止した。

何も考える事ができなくなった。(一瞬だが)

口はエサをねだる鯉のように(恋を掛けた訳ではない)パクパクさせ、

携帯(ガラケー)を握ったまま目を見開くことしかできなくなった。


…嘘だろおおおおおおおおおおおおお!!!!????(川西華 心の叫び)


夢は私と違って住んでいるのは都会「トウキョウ(発音よくしてみた)」だった。

それでも昔はよく遊んだもので、夢の性格は十分理解していた。

人見知りで率先して何かをする子ではなかった。

控えめで、きゃはきゃははしゃぐガキ(私の事だ)と比べたら上品で静かに(馬鹿やってる私を)微笑むような子だったのに。

…だったのに……。

あとスカート、フリフリのスカートがよく似合う。

今も似合うんだろうな。いいな。


それにしても。

都会恐るべし…

人口の違いか

環境の違いか

それとも彼女が変わったのか。

おそらく電話の口ぶりや私に対しての態度が180°変わっていたので最後だと思うが。


このとき私は一つの決心をした。

何か刺激が欲しかった。

一人が多分寂しかったんだと思う。

別に夢のマネをしたいわけではなかった。

したいわけでもなかった。

ほっぺたを両手で叩いて決心した。


「都会進出」


viva青春

いや、別に田舎でも相手作ろうと思えば作れるんだけれども!


ただ、田舎だと…

一に人口減少

二に出会いの場が無い

三に過疎化

四に高齢化

五に異性も兄妹と化し、恋愛感情が沸かなくなる

六に何もない

私の偏見だと思うところも(大)アリだが、

この事から言えることはただ一つ。



リア充になりたかった。


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