第18話 --1章 仲秋 Ⅲ--

会社に着くとすぐにお店の開店準備にとりかかった。


私はデータを管理する部署に所属していて、客先窓口のあるフロアの奥で事務や経理の人たちと一緒に働いている。


人前に出ることは滅多にない。


この会社独自の業務で、もしも転職しようにも潰しが利くような職種ではなかった。


ここで働いている約10年間、たとえば陶芸の職人でも弟子入りすればそれなりの技術がついただろうと思うとむなしく思う。


他で通用する技術がないならば、この会社に定年までしがみつくしかない。


想像したくはないが、三十路を前にした独り身に、定年までという言葉は嫌でも現実味を帯びてきている。


9時きっかりに開店すると、香山さんは窓口で朝一からやってくる客を相手に忙しなく動きまわる。


営業のマコちゃんとたーくんは階が違うので普段顔を合わせない。


彼らは外回りに出ていることも多く、基本は電話でのやりとりだ。


朝の業務が落ち着いた頃、マコちゃんからの内線を受けて私は待ってましたとばかりに尋ねた。


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